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第136話 新鮮な朝
蕩けそうな快感で朝が始まった。
「ケンは素敵だ。」
緩めた眼差しが、李とは思えない優しさを見せている。
シャワーを使ってお互いを洗う。
「くすぐったいよ。李もやってあげる。」
泡だらけになって抱き合って遊んでしまう。
「ケンはくすぐったがり、だな。」
また、耳元で囁いて噛んでくる。
「ピアス入れようかな。李が噛まないように。」
「全部食べちゃうかもな。
高いやつを買ってやる。ダイヤモンドか。」
「飲み込んだら大変だよ。穴開けたく無いし。」
「おまえに穴を開けるのは俺だけ、って事か?」
「ばか。」
ドアにノックの音がした。
「お二人さん、邪魔して悪いね。
李星輝、仕事だ。梁大人から呼び出しだ。」
秘書の仕事をしている呉白日だった。
「夕食をどうか、と聞いて来た。
ケンも一緒に、だって。」
ブラックタイだ、と脅かされた。
(正装で来いって?何があった?)
アジトの周りは、だんだんヤードが増えている。ガルバリウムで塀を巡らせてはみ出さないように気をつけている。
中は一般の大型廃棄物。いわゆる粗大ゴミだ。
梁はこの港の華僑に厳しい。日本人に迷惑をかけないように。
今日は、町の高級ホテルで会食だと言う。
ケンも同伴で、との事だった。
スーツ姿のケンはやっぱりカッコいい。
抱き寄せてキス。
「李ってキス魔だね。」
「ははは、ケンだけだ。」
李のオンボロジャガーで出かけた。李が大事にしている古い車。それでもジャギュアEタイプだと言う。ジャガーじゃなくてジャギュア、だ。
「一昔前、東北自動車道が出来た頃、埼玉県警のパトカーはこれだったんだ。」
都市伝説のようなことを大真面目に言う。
「李が生まれる前でしょ。」
お互いに年を知らない。ケンは二十歳そこそこだろう。李はいくつだ?
赤ドラゴンを率いている。この辺りの半グレのボスだ。チャイマとは言われたくないらしい。
「俺はチャイニーズマフィアじゃないよ。
ヒモツキ、じゃない。
梁大人にもそれなりのシノギを入れてる。
何も言われる筋合いは、ない。」
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