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第160話 フェン○ニル
「蓮君はタバコ持ってたの?」
「はい、あの時、もう一箱あったのを頂いちゃいました。興味あったので。」
フェン○ニルを染み込ませたタバコだ。麻薬の禁断症状は、その麻薬を使えば治まる。
正気に戻って、
「次は絶対やめて見せる。」
と心に誓う。それでも切れてくるとどんな事をしてももう一度やりたい、と思うのだ。
龍一はそんな患者を散々診て来た。
苦しんでる者には何とか楽にしてやりたい、と思うだろう。ましてそれが友達なら。
「医療用フェン○ニルと、この頃出回っているこの薬では製造過程が全く違うから、危険度も違う。死に至る場合もある。作り方がいいかげんなんだ。致死量もキチンと計量出来てないだろう。
一体何が目的なんだ?」
貴也は仮説を立てた。
「中国人の侵略です。
何か、とてつもないことが企てられていると感じる。」
「国の名前を出すのは尚早だな。
シン君、入院して完全に薬を絶つか?
このままだと、切れるとまた探してしまうよ。
切れる時間が短くなって行く。」
蓮が心配そうに手を握っている。
「俺たち、ホストは誘惑が多いんです。
特に麻薬とか。仕事辞めるべきですね。」
「この薬は気持ち良くなるのが
最初は50分くらい。段々効き目が切れるのが早くなる。厄介な薬なんだ。
気持ちいいのははじめだけ。
後は、嫌な感じから苦しみになって行く。
気持ち良くはならないんだよ。焦燥感だけだ。
救いの無い苦しみの中で衰弱して死を迎える。
医療できちんと適量処方されるのとは全く違う。」
「タバコ吸っただけなのに。
先生、シンを助けて。
今まで生きて来てつらい事ばかりだったんだ。
こんな死に方は無いよ。」
噴水公園の周りに、ゾンビのようなジャンキーが目立ち始めた。みんなおかしな格好で立っている。中腰になってフラフラ揺れている。
元々強力な鎮痛剤だから、痛みを感じない。
焦れて自傷行為に走る者がいる。見るも無惨な様子に、警察に通報しても、何もしてくれない。
「病院に行け。」
「行っても追い返される。
治せないって言われる。」
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