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第163話 ここにも

「うん、わかった。 俺もクロードからF市で新しい麻薬が広がってるって聞いてたから。  李はあまり、ヤバいことしないで。」 コンテナの荷主の中国人を探ってみる、という李に、ケンは心配だった。  海浜病院に貴也と龍一が詰めていると聞いて会いに行った。胸の不安が消えないのだ。  病院はいっぱいだった。怪しい患者ばかりだ。 この頃、港でも見かける。 「ケン、元気かい?」 モデル仲間だった貴也が迎えてくれた。 「大変な事になってるよ。そっちは大丈夫?」  以前、李の離脱療法を指導してくれたのは、大介医師だった。あの時、女医さんもいたはずだ。  涼鈴を見てくれた美人の女医。今もこの病院にいるのだろうか。  李は涼鈴の最後を知るこの人から、詳しい検査の結果を知りたい、と言っていた。病理解剖もしたのだ。フェン○ニルが検出された、と言っていた。  龍一が忙しそうだ。 「何か,わかったかい?」  入って来た少ない情報を話した。 「港で働いてる者たちにフェン○ニルを流しているのは、やっぱりあのM会のようだ。」 「未確認情報だけど、赤ドラゴンは大丈夫かな?」  龍一の心配は当たってしまった。 「李、ここにもついにあの薬が入り込んできた。キメちゃって目がイッテル奴がいる。」  アジトにフラフラしているヤツを見つけた。 「おい!なんかやってんのか?」  首根っこを掴んで、顔を見た。 「ああ、こんなの初めてだ。神様がくれたんだ。 世界中の快楽を全部集めたみたいだ。  すごい幸せだ。夢なら覚めないで。」  手にあの注射器を持っている。ここまで持って来て打ったらしい。そばにいる奴に聞くと 「あっという間でした。ワンコイン、500円で売ってんです。カシラに見せようと買って来たんです。やめろっていうのに打ちやがった。」  他の仲間がぶん殴っても気にしない。そいつは 「痛くないんだ。誰か、もっと痛めつけて。」 「港の公園では、自分の腕にナイフを突き刺す奴も見ました。もう地獄絵図だった。」 「売人は、見たのか?」 「アレは、M会の若いもんです。 捕まえると組と戦争になる。」 「アルプはなんか知ってたのか? なんでコンテナの荷主が捕まらないんだ!」 「出航してしまったコンテナは追えない。 警察は何も取り締まらない。汚ねぇんだよ。」

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