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第173話 仕事再開
李たち赤ドラゴンもやっと仕事が再開できる見通しだ。ケンが李にくっついている。片時も離れず、李も必ず手を繋いでくれる。
「真っ黒になって働いてる時は,くっつかないでくれよ。」
ケンは思う。片時も離れたくない。
(俺も自分の事、こういうキャラだと思わなかったよ。我ながら恥ずいな。)
李を無くすのが怖い。かけがえの無い存在になった。
港には数百のコンテナが出入りしていく。ただ通過していくだけ。
梁大人が仕切っている中国製の100円均一の品物とかは、検閲ののち上陸が許される。
時々、コンテナが奪われる。その度に繁華街で麻薬が蔓延するようだ。新宿や六本木でも爆発的に広がったりはしない。誰かが裏で制御しているのか?警察も一貫して、見ぬふりだ。
「平和になった訳ではないよ。
まだ、危険と背中合わせだ。」
「李、俺心配な事がある。李がまたどこかに拐われるんじゃないかって。」
「ケンも筋トレばかりじゃなくて、高飛び込み 再開したらどうだ?」
港の廃ビルを佐波一家が押し付けられてから、あの合田という議員が綺麗に修復したそうだ。
そんな金はどこから出ているのか?
それでも佐波一家の持ち物だから、勝手な事はさせない。
合田は、飛び込み台のあるプールを軸に、一大スポーツビルに改造した。あのバカ息子の合田一太にこのスポーツビルを運営させたいという。
そこでケンをスカウトに来た。佐波大門か厳しい条件を出したらしい。
「ケンは国体優勝者だから、客寄せパンダにされるんだろう。」
李は嫌な顔をした。しかし、ケンの才能を活かしてやりたい、とも思う。
「大門組長の持ちビルですから、権利は佐波一家にある。」
ビルの責任者に合田一太を据えてくれ、と臆面もなく言うのだった。
「大丈夫か?あのドラ息子。遊び人で有名だぞ。
一抹の不安がある。」
若頭の柳生さんも、若松も、疑心暗鬼だ。
「このスポーツクラブの代表は、原田健一郎って事で。どうでしょうか。悪い話じゃ無いと思いますが。」
合田も大金を注ぎ込んでいる。経営には手を抜かないだろう。
梁宋や華僑の業幇の会長立ち合いの元、契約は締結された。李に肩を抱かれたケンがいる。
虎ニと龍一、貴也が立会人に並んでいる。後ろに佐波一家の強面の面々。呉白日と赤ドラゴンの面々。みんなそれなりに修羅場を潜って来た者たちだ。敵に回したくは無いだろう。
なぜか、コンテナに付いている党員も立ち会っている。なんの権利があるんだ?
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