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第174話 高飛び込み
プールがメーンのスポーツクラブがスタートした。柿落としのセレモニーはこれからだ。ひと足先にオープンしていた。
「ケンの飛び込みが見たい!」
という声がすごい。連日スポーツクラブの入会希望者が殺到している。
デモンストレーションで高飛び込みを見せる。
若い選手を育てるのも仕事の一つだ。
合田一太も飛び込みを続けていた。仮にも国体で準優勝したのだ。人知れず自主練している。
吹き抜けで一階から屋根まで飛び込み台が作られている。その他のスペースは筋トレのジムになっている。
見事な肉体美を見せる男たちが集まっている。同じように筋肉ファンの女子も大勢集まって来た。
「李、すごいね。綺麗なプールが出来てる。
筋トレも好きでしょ。」
肩を抱かれて一緒にビルを見学する。
「今夜は柿落としのレセフプションパーティだな。めんどくせぇ。」
李が頬にキスしてくれる。
「ケンの裸、誰にも見せたくないな。
みんな惚れちまう。」
「李の筋肉もだよ。浮気するなよ。」
肩をギュッと抱かれて頭にキスされた。
「みんな見てるよ。」
スポーツクラブが話題をさらって、あの麻薬の事はみんな忘れたのか、一見平和だった。
「こんにちは、私オーストラリアから来ました。
ジミー・フラックです。
ケンイチローお会いしたかった。」
「あっ、オリンピック選手のジミー・フラック!」
「今夜のパーティのゲストに呼ばれました。」
ケンたち飛び込み競技の選手の憧れ、ジミー・フラックだ。誰もが知ってる高飛び込みのカリスマ。ケンはいつも動画でジミーの飛び込みを研究した。
本人を前に,嬉しくて両手で握手した。
「俺もいつか、ジミーみたいに綺麗に飛び込めるように、って思ってました。
お会い出来て光栄です。日本語お上手ですね。」
「妻が日本人なんだ。」
可愛い奥さんがこちらを向いて会釈した。
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