175 / 179
第175話 ケンの私室
「初めまして、ナオミ・フラックです。」
「あ、あなたも飛び込みの選手だ。
パリオリンピックで見ました。素敵でした。」
ナオミにも両手で握手した。綺麗な夫婦だ。
「パリでは日本代表でしたよね。
じゃあ、まだ新婚だ!」
「はい、ずっとお付き合いはしてたんですけど、
先週、日本に来てすぐに結婚しました。」
「まだ、みんな知らないんですね。
やったー!俺が一番乗りで知ったのかな?」
その後,オリンピックの話で盛り上がった。
ケンも一時はオリンピックをめざしていた。
(ちょっと胸がチクンとする。)
李を見た。李のせいでもあるのだ。李との出会いは最悪だった。李にレイプされた過去がある。
李がこちらを見た。
「俺のせいで、オリンピックの夢を諦めたんだろ。」
「そんな事ないよ。俺の一目惚れだったし。」
「あんな事した俺を許してくれるのか?」
「もう、とっくに許してるよ。
当たり前じゃん。」
(ああ、ケンにキスしたい。みんなが見てるな。)
ケンが小さな声で
(俺もキスしたい。)
と言った。手を繋ぐので精一杯だった。
(李、俺の部屋に行こう。)
このスポーツクラブの代表を務めるケンには、執務室と私室が与えられている。
ケンに手を引かれて階段を駆け上った。
吹き抜けの横に、プールが見渡せる明るい部屋があった。ドアを入って李に抱きついた。
「スイッチ入っちゃったね。」
ドアに鍵をかけてソファに倒れ込む。
「いつ入ったんだ?」
「李は意地悪だな。この所、あまりにもいろんな事があり過ぎて、俺、李が不足してんだよ。」
「よしよし。」
優しく抱きとられて腕の太さに安心する。
「すごい筋肉。いつも触っていたい。
ここで一緒に筋トレ出来るよ。」
腕に頬を擦り付ける。シャツのボタンをゆっくり外して胸を触る。
「李の匂いがする。」
「あ,汗臭いか?」
「違うよ。いい匂い。大好きだよ。」
李の大きな手で頭を抱えられる。キツいくちづけが止まらない。
ともだちにシェアしよう!

