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第177話 タキシード

 パーティが始まった。面倒な来賓が順番に挨拶している。出席者の紹介が後回しにされた。   ケンの姿が見えない、と少し騒がしくなって来た。遅れて入って来たのは、李にエスコートされたカッコいいタキシード姿のケンだった。 「あ、原田健一郎氏が来場されました。」  司会の言葉に盛大な拍手が起こった。 ケンは気まずい。まだ中に李がいるような、違和感を感じている。あの快感を思い出すと腰のあたりがキュッとなる。 「はあ、あ、」 (ため息はまずいぞ。しっかりしろ。)  囁くように李の声がする。 (だって。李が激しすぎるんだ。)  李にもたれかかってやっと立っている。 (可哀想なことをしたね。激しく抱き過ぎた。 いつも、俺はおまえが欲しいんだ。) (そんな事今言わないで。腰に力が入らない。)  抱き抱えるように席に座らせた。心配でずっと耳元で囁いている。 「大丈夫だよ。鍛えてるから。 少し休めば回復するよ。」  ケンの挨拶は後にして、シャンパンのグラスを手に取った。  合田一太の乾杯の音頭で一斉にグラスを持ち上げる。    来賓席のジミー・フラックが近づいて来て 「ケンの恋人だよね。」  李の方を見て聞いた。 「そう、俺の最愛の人。李星輝だよ。」  ジミーはニコッと笑って 「愛し合うのは、ほどほどに、ね。」  ウィンクして、可愛い奥さんの所へ戻って行った。 「李、バレてる⁈」 「ああ、彼には、わかってしまったんだね。」  ケンが顔を赤くしている。李のタキシードがすごく似合っている。胸の筋肉でボタンが飛びそうだ。 「李は大丈夫?疲れてない?」  赤い顔の李が新鮮だ。 「帰ったら続きをやろう。」 「! 絶倫か!」  口の端を上げて、ふっと笑う李がたまらなくセクシーだ。 (この男に抱き潰されてる。)  死ぬほど好きだ、とケンは思った。

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