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第178話 海浜病院
港にスポーツクラブが出来た、と話題になっている。
「龍一、面白そうだよ。プールだって?
ケンが代表だって。」
海浜病院もこの所、落ち着いて来ている。
ナロキソンの効果が出て、一時期の危険度が減った、という事か。
厳密に医学的な設備で製造されたわけではない麻薬が出回っている。量増しに何が入っているかわからない。コカインを混ぜたものがあるらしい。最悪だ。
フェン○ニルの蔓延は依然として危険な物ではあるのだが、全く救いようの無い状態からは抜け出せた。
目の回る忙しさだった龍一と貴也も、一息つけた、という所だ。
あのパーティにも招待されていたが、おこがましい、と辞退した。
「ケンにお祝いしたかったけど、晴れがましいのはちょっとね。ま、いつでも会えるし、ね。」
貴也はカフェの仕事に戻りたい。クロードからも新作のショーの手伝いを打診されていた。
「港は中国人が増えて,相変わらずキナ臭いようだけど、いつまでも関わっているのは気が引けるな。」
大介医師に話をした。
「まだ、不穏な空気はあるけど、ナロキソンがあるからね。これ以上できる事がない。」
警察も管轄の保健所もなすすべもないのだろう、何も言って来ない。
オーバードーズで廃人になる患者は後を絶たない。恐ろしい麻薬に変わりはない。
「ありがとう、龍一。
正式な辞令も無しに、こき使ってしまった。」
「大介、早く彼女を嫁さんにしてやれよ。」
あの美人の女医さんのことだ。
「ああ、そういう関係だったんですね。」
貴也も彼女から、可愛い坊や、なんて言われて、その度にドキドキしていた。
「あんなカッコいいお医者さんが大介先生のお嫁さんなんだ?」
「なんだ貴也は瑠璃子先生が好きだったのか?」
「そんなわけないでしょ。からかわないでよ。」
あの女医さんは瑠璃子と言うんだ、と初めて知った。
「もう、これ以上広がらないといいですね。
フェン○ニル。」
あのコンテナの扱いが特別で、胡散臭い中国人が張り付いている。
昔から懇意にしている華僑の梁大人は奴らの仲間ではない。
「貴也、帰ろう。
久しぶりにゆっくり出来そうだ。」
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