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第5話 ⭐️
「ええぅ……ラグナぁ……ああっ……うごいてぇ……!」
懇願する声は、泣き声に変わっていた。
ラグナの動きが止まっただけなのに、リオの奥はきゅっと痺れて、じんじん疼いて止まらない。
「今日は、そろそろ本当のことを言ってもらうぞ」
リオの腰が逃げるように揺れるのを、ラグナはがっしりと掴んで封じた。
中に押し込まれたままの肉棒が、わずかに脈打つ。
疼きだけが、リオの全身を焦がしていく。
「お前は、なぜ毎日俺のところに来る?」
耳元に低く落ちた声に、リオの身体がぴくりと跳ねる。
「ぼ、僕はぁ……おまえをぉ……ふ、ふういんしゅるぅのぉ……!」
ラグナが鼻で笑った。
「封印が目的なら、なぜ仲間を連れて来ない? お前一人で勝てると思っているのか?」
リオはぐずぐずに縋りついて、首を振った。
「ああん……そ、それはぁ……」
「それは?」
ラグナが、わざと腰を揺らした。
一番感じる場所を、くにゅ、と押し上げては、ゆっくり撫でる。
「ああっ……ああああっ……そこぉっ……! そこ……こすってぇ……っ!」
「だめだ。理由を言え。今すぐだ」
「えうっ……こ、この封印は……ぼ、僕しか……あつ、あつかえない、んだよぉ……っ!」
必死に言葉を繋ごうとしても、舌がもつれて、うまく話せない。
それでもどうにか絞り出した声は、涙に濡れて、もう言葉にはなっていなかった。
「……見え透いた嘘だ」
ラグナの声が、あまりにも静かで、
リオはびくっと震えた。
「や、やだぁ……うそじゃ……ないもんっ……!」
言い返すつもりだったのに、言葉はしゃっくりと一緒にこぼれて、ただの甘えた声にしか聞こえなかった。
肩が、背中が、びくびくと震えて止まらない。
喉の奥で「やだ、やだ」と繰り返しているはずなのに、洩 れるのは嗚咽ばかりだった。
涙と涎でぐしゃぐしゃになった顔なんて、もうどうでもよかった。
リオは、それでもラグナにしがみつくことだけはやめられなかった。
心臓だけが、バクバクと、壊れかけた世界の中で鳴り響いている。
そんなリオの耳に、ラグナの声が、ぽとりと落ちた。
「本当は――俺を倒したくないんだろう?」
リオの心臓が、どくん、と跳ねる。
奥で埋め込まれたままのラグナを、無意識にきゅう、と締め付けてしまった。
「あっ……ああっ……ち、違うの……っ!」
リオの言葉を聞くと、突然ラグナは身体を離した。
そして、ゆっくりと冷たい視線を向けた。
「そうか。なら二度と来るな。俺は、遊びに付き合うほど暇じゃない」
――……拒絶、された。
その言葉が、ずしりと胸に落ちる。
「そ、んな……やだ……」
喉が詰まって、うまく息が吸えない。
視界がにじんで、まるで世界が歪んだようだった。
初めて、ラグナに本気で拒まれた。
リオの中に、ぽっかりと穴が空いた。
どうして……そんなこと言うの。
いやだ。嫌だ。嫌だ……。
いつものように、こんな日々が、永遠に続くと思っていた。
でも、それは──突然、終わりを告げた。
涙が、堰を切ったようにあふれ出した。
「ラグナぁ……」
必死に、ラグナの腕を掴んだ。
跡がつくほど、指先に力を込めて。
それでも、腕はゆっくりと離れようとする。
――いやだ。離れたくない。いやだ、いやだ、いやだ……!
心の中で何度も何度も叫びながら、喉の奥が、焼けつくように熱くなって、やっと、震える声で言葉を吐き出した。
「……行かないで……」
その瞬間、ラグナの瞳が、わずかに揺れた。
「リオ……」
リオは一瞬、言うのを躊躇った。
それは、魔法使いという肩書きに背く言葉だった。
全人類を敵に回す、たったひとつの呪い。
だけど――
肩書きも、使命も、正義も、全部――どうでもよかった。
――僕は、ただラグナを、失いたくなかった。
「ラグナぁ……すき……すきなのぉ……だいすきなのぉ……っ」
ラグナは、リオの震える声を聞いて、息を呑んだように、身体をびくりと震わせた。
しばらく、何も言わなかった。
その顔は、今まで見たことのないほど、切なくて優しくて。
リオの胸の奥が、ぎゅうっと熱くなる。
「……リオ」
低く、かすれた声で、名を呼ぶ。
そして、そっと手を伸ばして、リオの髪を、静かに撫でた。
「その言葉が……聞きたかった」
ラグナは再び抽挿を始めた。
奥をぐっ、ぐっ、と押し上げるたびに、リオの中がきゅうっと締まり、甘い震えが全身に走る。
「あああっ! ラグナぁっ!」
ピストンはどんどん速く、深くなっていく。
ラグナの腰が打ちつけられるたび、リオの小さな身体は跳ねて、びくん、びくんと可愛らしく震えた。
「やあぁっ……ラグナぁ……っ……あうっ……!」
ラグナの指がリオの胸を撫でながら、小さな突起をくにゅ、くにゅと優しく愛撫する。
「ここも、触って欲しいんだろ……?」
「やっ……やだぁ……さわっちゃ……っ……ああんっ……!」
でも、感じてしまう。
奥の、もっと奥を擦られるたびに、リオの意識はとろとろに溶けていった。
――もぉ……だめぇ……きちゃうよぉ……。
腰が勝手に跳ねて、ラグナの熱を求めるように、ぎゅぅぅっと締めつけてしまう。
「しゅきぃ……ラグナぁ……しゅき……だよぉ……だいしゅき……ぃ……」
泣きながら、甘えながら、リオは何度も、何度も、縋るように囁いた。
「もっとぉ……もっと、僕のぉ……なか、こすってぇ……! めちゃくちゃにしてぇっ……!」
リオは恥ずかしげもなく、舌をだらりと垂らして、蕩けた顔を晒した。
「リオ……っ……その顔は……ずるいぞ……」
ラグナの声も、震えていた。
手が、リオの頬を撫で、額に口づけを落とす。
「好きだ……俺も……大好きだ……」
心も身体も、全部が溶け合って、名前と愛しか――残らない。
「ラグナぁっ……っ! しゅきぃ……!」
「リオ……もう、絶対離さない……!」
心の奥に、熱く激しいものがぶつかった瞬間――
「あああああああっ!」
すべてが、満たされた。
ドクドクとラグナの熱い愛が流れ込んでくる。
一滴も零さぬよう、リオは必死に締め付けた。
互いの鼓動が、打ち鳴らす音だけが響いていた。
ラグナは、腕の中のリオをそっと抱きしめた。
リオも、力なくラグナの胸元に顔を埋め、ふるふると震えていた。
「ラグナぁ……」
リオが甘えた声で名前を呼ぶ。
「ここにいる」
ラグナは優しく囁き、リオの髪を撫でた。
もう、何も隠さなくていい。
心も身体も、全部をラグナに晒していい。
リオは、初めて――自分から唇を重ねた。
「ラグナぁ……もっと……もっとしたいよぉ……ラグナの跡、刻みつけてぇ……」
リオは、潤んだ瞳でラグナを見上げた。
掠 れる声で、リオはさらに甘えて懇願した。
「ラグナのものにしてぇ……っ、……ぼくを……ぜんぶ……あげるぅ……」
抜こうとしたラグナの腰を、リオは足を絡めて、ぎゅっと離さなかった。
「……もっと……欲しいよぉ……」
リオは我慢できずに、軽く腰を揺らした。
「リオ……」
ラグナは小さく笑うと、リオの頬にキスを落とした。
「素直になりすぎるのも困るぞ……」
言葉とは裏腹に、その表情は、誰よりも嬉しそうだった。
互いを求めあいながら、朝が来るまで、何度も、何度も身体を重ねた。
疲れきっても、リオは甘えるようにラグナを呼び、ラグナはそのたびに抱きしめた。
夜が空けても、リオはラグナの胸元にぴったりすり寄り、ふわふわと甘い寝息を立てながら、幸せそうに微笑んでいた。
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