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第7話

 で、そのおばちゃんはどうしたんだろう…  喘ぎ声は誰かわかったけど、二つ目の謎、おばちゃんの行方だ。 「で、おばちゃんはどうしてるの?」 「おばちゃんの旦那さんが数年前に脳梗塞で半身麻痺になっちゃって、今は施設に入所してて…で毎週末におじちゃんのとこに会いに行ってます。で、今日ももう少ししたら帰ってくると思うんだけど」  そうだったんだ…うん?待てよ。数年前ってことは、俺がここに引っ越す前の話だよな。じゃあずっと前から週末は、おばちゃんの部屋には誰もいなくて…で、何で先月から週末のラブホになってるんだろう。  俺が不思議そうな顔をしていると、芙実君は察したようだった。 「どうして、俺が泊まってるのかって思ってるでしょう」 「えっ…まぁ」  芙実君は、ちょっと待ってて、と言うとおばちゃんの部屋に行った。そして、すぐに戻って来た芙実君は、スーツのポケットに手を突っ込んでいた。 「藤澤さんは、特にアレルギーとかはないですよね」  えっ⁈…何を出す気なんだ?  芙実君がそっとポケットから出した手の中には薄茶色の毛玉が…よく見ると、ハムスターだ。 「可愛いでしょ…ハムスターのハム太」  ハム太って、なんか俺と名前似てるし…ハム太は芙実君の柔らかそうな手のひらの上で気持ちよさそうに寝てる。  まだ、話しが見えない。 「おばちゃんの職場の友達が先月、自転車で転んで骨折して、その人がハム太の飼い主なんだけど、今は入院してるから、おばちゃんが代わりにハム太を預かることになって…で、ハムスターって夜行性なんだけど、コイツは特に超夜行性で、夕方から動き出して餌は絶対に夜中しか食べなくて…おばちゃんがおじちゃんの所に出掛けるのは昼過ぎで、一度、ケージの中に餌を入れた皿を置いて出掛けたんだけど、帰ってきたら皿がひっくり返ってて、たぶん餌は食べてなかったみたいで…預かったからには、ちゃんとみてあげないとって訳で、たまたま土曜日は俺の仕事が休みだから、おばちゃんに頼まれて、金曜日の夜から泊まりに来てる…んです」    なるほど…ハム太の世話を口実に、いいことをやりに来てたんだね。

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