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第16話

 深夜一時。  ハム太は絶好調。カラカラ、カラカラ…。  俺は、そっとケージの中に餌を入れた皿を置いた。すると、ハム太は近づいてきて、上手に前足で餌を掴んでほっぺの中に入れている。  次第にハム太のほっぺは倍以上の大きさに膨らんできた。なんか面白い。    翌朝。俺はいつもより早く目が覚めた。  芙実君に俺の布団を使ってもらったから、俺は、座布団を並べてその上に寝た。いつもと勝手が違うせいでなのか、アラームが鳴るより先に目が覚めてしまった。  芙実君とハム太はまだ寝ている。  俺は、彼らを起こさないように、そっと台所にいって、顔を洗って歯磨きした。  今日はルーティンを少し変えて、まずコーヒーから飲もう。  お湯を沸かしている間に、豆を挽く。ミルの音は最小限にした。でも、香りはいつも通りに部屋中を漂い始める。  ゆっくりとお湯を回しかけていると、芙実君が布団の中で伸びをしている気配がする。  あぁ…起こしちゃったかな。  俺は流し台の方を向いて、淹れたてのコーヒーを飲んだ。  あぁ、美味しい。コーヒーはいつ飲んでも気持ちをリセットしてくれる。  後、数時間したら、芙実君とさよならだけど、それでも、コーヒーは美味しい。 「…圭太、俺も飲みたい」  振り向くと、芙実君は肌着姿にワイシャツを引っ掛けた姿で立っていた。情事の後の寝起きの女の子みたいだ。色白いし、細いし、柔らかそうな髪は寝癖がついて… 「おはよ。起こしてごめん。すぐに入れるよ」 「圭太がさ、いつ寝て、いつ起きたかぜんぜんわからなかった。でもなんかいい匂いがしてさ…香りで起こされるのはいいね…幸せな気分だ」  もう…コイツは…。  最後にそんなこと言うなよ。  俺は新しいタオルを渡して、芙実君に流し台を譲った。  布団を部屋の脇にやって、座卓を移動させた。 いつもなら、布団をすぐに押し入れに仕舞うんだけど、今日はそんなことをしたら、すぐに芙実君が帰ってしまいそうな気がして、そのままにしておいて芙実君のコーヒーを入れた。

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