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第17話
洗面を済ませた芙実君は、布団の端っこにちょこんと座ってコーヒーを飲んだ。
「やっぱり、圭太のコーヒーは最高だな」
もう、また…。
だったら毎週来てよ。コーヒー飲みにさ。
でも、言えない。
「あのさ、芙実君。芙実君がくれたお守りとタコ様のおかげで、俺…」
「えっ…⁈合格したの?」
「いやいや、違うよ。合格発表は来月。でもさネットの解答速報を見たら、結構点数取れてるんだよね」
「うわぁ…やったな圭太。じゃあコーヒーで乾杯だ」
芙実君は俺に向けてマグカップをあげた。
「だからまだ、合格ってわけじゃないよ」
俺は苦笑した。
芙実君は、じゃあ、合格おめでとうでしょう、って言って、満面の笑顔で俺のマグカップに自分のをコツンと当てた。
ありがとう、芙実君。
その笑顔には、昨夜のほっぺの手形はすっかり跡形もなくなっていた。
俺は意識して、この乾杯コーヒーが最後だと言わなかったけど、芙実君もそのことには触れなかった。
昨夜ハム太が頬袋に餌をパンパンに入れてるのを初めて見たことを話すと、芙実君も、俺も最初ガン見したよ、と話した。そして一緒に笑った。
ゆったりと過ごすこんな時間…いいな。
芙実君がコーヒーを飲み終えた。
そうだ、朝ご飯だ。
「芙実君。朝ご飯何か食べない?」
「うぅん…そんな腹減ってないし、ありがとう」
そして、その言葉を聞いた。
「じゃあ、俺、そろそろ行くわ」
芙実君は支度をした。
今日はハム太のケージもあるから、おばちゃんの部屋の玄関まで一緒にいった。そしておばちゃんの部屋から出てきた芙実君は、笑顔だった。
「じゃあ、圭太ありがとう」
「うん…じゃあ…」
また、来週、って言葉は飲み込んだ。
芙実君は、軽快に階段を下りていった。階段の一番下で振り返って手を振ってくれた。
バイバイ、芙実君。楽しかったよ。
ひと月後、予想通り俺は一次試験に合格していた。
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