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第19話

「次の試験はいつやるの?」  正真正銘のおめでとうをコーヒーで乾杯した後に芙実君は訊いた。 「ひと月後の金曜日から日曜日の三日間」 「えっ?三日間も…はぁ、さすが難関資格だわ」  芙実君は少し考えて言った。 「なぁ圭太…合格したらさ、今度はコーヒーだけじゃなく、ちゃんとお祝いしようよ。お祝い何がいい?」  俺は、図々しくも唯一の願いを芙実君に伝えた。 「…ありがとう、芙実君。あのさ…お祝いっていうより、迷惑じゃなかったら、その…合格発表の時、一緒に結果を見てくれないかな…」  俺は、ドキドキしながら、芙実君の返事を待った。  一次試験の合格発表は、この部屋で一人、パソコンを開いて見ていた。嬉しい結果だったけど、 伝えたい人が傍にいないというのは淋しかった。 「ああ、いいよ、ぜんぜん。で、どこで見るの?その合格発表って」 「ここで…パソコンの前」 「そっか、わかった」 「毎年、金曜日の午前十時なんだよね…あっ別に夜でもいいんだ」  芙実君はまたニッコリした。 「いいよ。俺、こう見えて仕事は真面目にやってるから、その日は仕事休みもらって朝からここに来るよ」 「本当?いいの?…迷惑じゃない?大丈夫?」  芙実君は、俺の必死な言い様を見てゲラゲラ笑った。 「そんな一日くらい、どってことないよ」  うわぁ!やったー!  よしっ!もう、心の穴はすっかり埋まったぞ。むしろ、埋め過ぎて盛り上がってるくらいだ。  芙実君と一緒に合格発表を見て、そして、一番はじめにおめでとうを言ってもらう人は、芙実君なんだ。絶対に。  俺は、俄然元気が出てきた。猛烈に勉強しまくるぞ。 「じゃあ、一緒に合格発表見て、その後でお祝いしよう。だから、お祝い何がいいか、考えといてよ」  そう言って、コーヒーを飲み干すと、腰を上げた。芙実君は、今日も長居はしない。 「コーヒー美味しかった…じゃあね」 「うん…ありがとう、来てくれて。嬉しかった」  俺は、玄関外まで送ろうとしたら、芙実君は、ここでいいよ、と言って、笑顔でドアを閉めた。  俺…芙実君が、好きだ。

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