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第27話
いよいよ、合格発表を明日に控えた木曜日。
今更ジタバタしても仕方ない、結果は既に決まっているんだ。でも、落ち着かない、気もそぞろ、心ここに在らず。二次試験が終わった時の、あの清々しい気分は、一体どこにいってしまったんだ…あぁ、情け無い俺。
で、いつものように午後から図書館に行った。
今日も人は疎ら、しーんとしている。図書館だから当たり前か。昨日読んでた本を棚に取りに行った。皆んな俺が読んでる本なんて興味もないみたいで、昨日戻した棚から一ミリも動いてなかった。
窓際の席に座った。早いもので、季節はいつの間にか、晩秋になっている。芙実と出会ったのは確か、まだ、桜の季節の前だった。
まさかこの俺が、誰かをこんなにも好きになってるなんて、その時は想像すらしていなかった。
ページを繰って昨日の続きのところを開いた。
目は活字を追っているけど、本の内容は頭には全く入ってこない。何ページかめくった後、俺は、読むのを早々に諦めて、今日は借りて帰ることにした。初めてだ、借りるのは。どうせ今夜は、寝られないだろうから、時間潰しにちょうどいいなと思った。カウンターに行って貸し出しの手続きをした。
帰り道、俺は思った。
明日、合格して、芙実を抱く…あぁ、抱くなんて言葉を思い浮かべるだけで、恥ずかしいな。でも、そうなんだから…うん。
キスして、服を脱がせて、唇以外のとこにもキスして、で、で?…あああーまずい。俺、何も用意してない…ゴムとか、ローションとか。
うわぁ、どうしよ。ネットで注文しても明日は間に合わないよな。間に合ったとして、芙実の前で箱から出すのは、超恥ずかしい。
今から買いに行くか…
俺は、家から少し離れた所の行ったことがないドラッグストアまで足を伸ばした。いい散歩だ。
昼下がりのドラッグストアは客はそう多くなかった。俺は無表情を装って、その二点とインスタントラーメンと牛乳とシャンプーとそしてのど飴を買った。
やれやれミッション成功。帰りの足取りは軽かった。
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