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第28話

 その夜。  早めに夕飯を食べて、風呂も入った。歯磨きもした。後は寝るだけ…でも、目は冴えている。  俺は、早速借りてきた本をカバンから出した。今から眠くなるまで、本とにらめっこだ。  布団の上に本を放り投げて、玄関ドアの施錠確認をしようとした時、コンコン、と誰かがノックした。 「圭太…俺、芙実だけど」  えっ⁈…芙実?何で?…驚きと同時に嬉しさも込み上げる。すぐにドアを開けた。 「ごめん。遅くに…」 「ううん…いつでも大歓迎だよ」  俺は、芙実の背中に手をやって、部屋の中に入れた。夜になると冷え込んできたようで、芙実のスーツの背中は冷たかった。 「だいぶ、フライングだけど」  そう言って、俺は笑った。だって、合格発表は明日の朝十時なのに、今は夜の十時過ぎだ。 「そうなんだよね…明日、寝過ごしたらどうしよう、とか考えてたらさ…それだったら、もう今晩から行こう、って思ってさ…仕事終わりに直接来た。だから十二時間の超フライング」  そう言って笑う芙実がとても愛おしくて、俺は思わず台所でキスをした。芙実の唇は冷たかった。芙実は嬉しそうな顔をしてくれた。 「なぁ…仕事終わりだったら、お腹空いてるだろ?」  芙実は、うん、って、はにかんだ顔をした。 「あっ、そうだ。俺の残り湯でよかったら、風呂入らないか…その間にラーメンでも作っとくからさ。温まってこいよ」 「いいの?…外さ、まぁまぁ寒かったんだよね。入ってこよっかなぁ」  そう言いながら、芙実はスーツの上着とズボンを脱いだ。俺がハンガーにスーツを掛けてる間にネクタイを緩めて、シャツも脱いで、肌着姿になった。おいおい…ここで全部脱ぐ気じゃないよな。 「じゃあ、温まってくるね」  芙実は風呂場に行った。  俺は、バスタオルとスウェットの上下と買い置きの肌シャツとトランクスをカゴに入れて風呂場の前に置いた。そのことを芙実に声をかけた。  そして、俺は台所でラーメンを作り始めた。  風呂上がりの芙実の姿を想像しながら…。

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