30 / 34

第30話

 しばらくすると、俺の肩に頭を引っ付けている芙実の寝息が聞こえてきた。  目を閉じる前に、圭太、絶対大丈夫だよ、って手を繋いでくれた。  結果はわからないけど、大丈夫だと信じよう。芙実がそう言ってくれたんだから。  芙美の髪にそっとキスをした。今日は俺ん家のシャンプーの匂いだ。  目を閉じても、一向に眠気がこない。頭に浮かんでくるのは、アレのことだ。この状況じゃ仕方ないか…  明日、合格して、芙実を抱いたとしよう…で、その次からは、どうするんだ?そもそも次はあるのか?明日はご祝儀エッチなわけで、その次は…そうだ、ちゃんと俺たちの関係を、いや、俺はどうしたいのか、はっきり伝えないと。  俺の人生で、きちんと告白するのは初めてだ。  芙実、俺と付き合ってください。  あぁ、合格発表を待つよりドキドキしてきた。  俺、明日、心臓もつかな…。  朝、スマホのアラーム音より、俺は早く目が覚めた。あぁ…後、ニ時間で結果がわかる。  芙実が、大丈夫って言ってくれたんだから、大丈夫だ。俺の枕で気持ちよさそうに寝ている芙実を見てると、自然と大丈夫だと思えてくる。  俺はそっと布団を抜け出し、台所で洗面をした。ケトルに水を入れてお湯を沸かしている間、無音でラジオ体操を始めた。体を動かすと、どんどん血が巡っていくのがわかる。  あぁ…どうか幸せな一日でありますように。  コーヒーの香りが部屋中に広がると、芙実も起きたようだ。 「…ううん。いい香り…圭太、どこ?」 「こっち。コーヒー飲む?」 「それより、こっちに来て」  俺は芙実が捲り上げた布団の中に入った。 「せっかく一緒の布団で寝たんだから、まずは布団の中で、おはよう、でしょ」  もう、また可愛いこと言って。 「おはよう、芙実…大好きだよ」    俺は、芙実にくちづけをした。  俺ってこんなことできる奴だったんだ。芙実が好き、っていう気持ちがそうさせるんだな。  ご祝儀エッチはやめておこう。  ちゃんと告白して、恋人同士になってからだ。  布団の中で、俺は芙実を抱きしめた。

ともだちにシェアしよう!