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第31話
九時五十五分。
俺たちは、座卓にパソコンを置いてその前で正座をしていた。
芙実は俺の手をぎゅっと握って、大丈夫だから、って何度も言ってくれた。
合格もしたいし、芙実と恋人同士にもなりたい。でも、こうやって手を握ってもらい大丈夫だよって励まされているこの時間、この今を過ごせていることに、俺の心はもう満たされている。
二次試験を終えた時の、そう、あの時の感覚だ。どんな結果になっても、きちんと受け止めよう。
そして、十時になった。
俺は、Webサイトを開いた。自分の受験票をもう一度見てから、合格者発表のページをクリックした。
芙実の緊張した息遣いがわかる。俺も自分の鼓動がどんどん大きくなっていくのがわかる。
合格者の受験番号が並んでいる画面になった。二次試験の合格率は平均して三十五パーセントを少し超えたくらいだ。どうか、その中に入っていますように。
ゆっくりと画面をスクロールさせる。俺の番号はまだ先だ。連番になってたり、かなり間が空いてたり…受験した皆んなもドキドキして見てるんだろうな。そろそろ、番号が近づいてきた。芙実の手にも力が入るのがわかる。
さらにスクロールさせた。
……あ…あった。俺の番号だ。
芙実も見つけたみたいだ。
「圭太!…合格だよ」
芙実は俺を力いっぱい抱きしめてくれた。
あぁ、合格したんだ、俺…でも、見間違いってことはないよな。
俺はパソコンの画面にある俺の番号に受験票を並べて、もう一度じっくり見た。
間違いないっ!合格だ、俺。
「圭太、おめでとう」
優しい笑顔で、おめでとうを言ってくれる芙実。
「芙実、ありがとう…本当にありがとう。芙実がいてくれたから、俺、合格できたよ。本当にありがとう、感謝してる」
そう言ってる俺の頬には、涙が流れていた。
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