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18 ※
「……んん…、……」
と俺は艶 めいた低い声を鼻からもらす。
――俺はベッドの縁に腰掛けたままだった。俺の目の前に立つユンファさんが俺の手のなかで射精をしたのち、彼はすぐ俺の顎をつまんでくっと顔を仰向 かせると、上から俺の唇をあむ、と大きく開けた唇で食んできた。
斜めから狼の大口にほとんど食われているような俺の唇は、あむあむとやわらかい彼の唇に揉み立てられながら、歓びに興奮した犬のような舌に時折ぺろぺろと口まわりを舐められ、その彼の貪愛 な口にしゃぶりつかれている。
「……、…ふふ、……」
俺はまるで愛犬に顔を舐められているかのようにニヤけた。少なくとも惚れた美男子に体を求められているという感じがしたのである。
俺はその悩殺的なキスを受け止めながら、彼の強ばりの多少ゆるまった陰茎の管 にのこる精液をもみ出してやる。――しかし一方的な彼の唇の攻勢にもまして、その人の片手の爪先が俺の乳首の先をカリカリと優しくひっかき、そしてもう片手では俺の勃起を下着のうえからまさぐってくる。すると俺の腰は身じろぎ、揉まれている自分の口もとに上手いこと意識が向かないので、お返しの唇を動かしかねていた。
なおこの頃には俺の勃起も、その漲溢 の程度が甚だしかった。
俺の唇の隙間ににゅるりと差し込まれた彼の舌が、俺の上下の唇を撫でながら口内に這 い入ってきた。――俺がせめてと彼の甘い舌を舌先で舐めると、彼の舌はにゅるにゅると俺の舌に蔦 のように纏 わってくる。…彼の舌は、俺の戸惑う舌の動きを封じるようですらある一方的な興奮した動きで絡みついてくるが、そのさなかにも俺の唇は、彼のやわらかい唇にまったりと揉みほぐされている。
「……は……」と唇を離しただけの距離で、潤んだユンファさんの妖艶な半目開きが俺の目を見下ろす。
彼のゆるまった切れ長のまぶたの、その際 に生えそろう黒く長いまつ毛はより艶美な艶を宿しているが、そのまつ毛の下で陶然と火照った色深い紺色の瞳には光がない。…が、それだから余計に危うい色気のあるその瞳が、俺の両目を蠱惑してくる。
ユンファさんはその瞳で俺の目を見下げながら、おもむろに俺の片手を取る。その手は彼の陰茎にあった手なので、その人の粘液質な白い精液が付着している。
……彼の口もとがやや引いて、その赤い唇の前に俺の手を持ち上げた彼は――ぺろ…と自分の精液を舌先で舐めとった。…俺の口もとにも近いために、彼の精液の濃い桃の香りがする。
「…ふふ…、僕のザーメンで汚してごめんなさい…」
とユンファさんは悪びれたというより俺を誘うように微笑した。ユンファさんはうっとりとした虚ろな顔を傾けると、ぺろ…ぺろー…と俺の指の背、側面にと舌を這わせ、俺の長い指にその舌を這いまつわせて、俺の手についた自分の精液をつきつぎと舐めとってしまう。――俺はその舌のゾクゾクとくるような感触にもまして、男にとってはかなり被虐的なその行為をおのずからした彼に、ゴクリと喉を鳴らす。
そうして俺の手を自分の舌ですっかり綺麗にしてしまうと、ユンファさんは俺のその手を自分の股の下へ導いた。俺の手はしかし、いきなり彼の膣口に触れるのをはばかり、ひとまずはその人の内ももを撫でた。その生白いあたたかい柔肌はぬるりと彼の愛液で濡れていた。
何とも思ってもいなさそうな彼の気だるい紺色の瞳が俺の目を見下げ、その人の赤い唇が俺の唇に触れる寸前まで近寄ってくる。
「…抱いてください…」
ユンファさんの囁くようなその声が俺の濡れた唇に触れる。濡れた唇にはその言葉のほのかな吐息がより熱く感ぜられて唇の表皮がひりつく。
「……、なら…恋人として抱いてもいい…?」
と俺はその人の唇に優しい男の低い声を返した。
この愛やら恋やらに失望した男を甘くとろかすように抱いたなら、この冷ややかな美貌は一体どんな様相を呈 すだろう。そうした俺の性愛的な好奇心の広がりを支える帆柱 は、しかし確固たる彼への愛念である。
……しかしこの美貌の男は、その伏し目の紺色の瞳で、俺の海らしい水色の瞳の手前で磯遊 びをしながら、俺のそれを冷笑した。
「……ふ…、僕に愛されたいと願った男は、みんな地獄に堕 ちるんです…――何故なら、僕が地獄に堕とすから……」
「……、…」
俺はゆっくりとまばたきをした。俺の瞳を惑わすようにまさぐる彼の紺色の瞳がくすぐったかったのである。
「…では、地獄はどんなところなんですか…?」
と俺が尋ねているさなかに、ユンファさんは流れるように俺の首元に鼻先を寄せていた。
俺の勃起や乳首をいじくりながらも彼は俺の質問に答えない。俺の首の上で、ちゅ…ちゅと、しっとりとやわらかい彼の唇が軽快に弾んでいるだけだ。
「…その地獄とやらに、貴方は居ますか…? ……」
チク、と一瞬、無数の針先、一センチほどにまとめられて密集した針の先がちょんと肌に触れたような痛みを感じた。……キスマークをつけられたのである。
少し離れた場所にもそのわずかな一瞬の痛みを感じた。もう一度感じた。俺はユンファさんに計三つのキスマークを首筋につけられた。
「…貴方が居るのなら、地獄も住めば都 でしょうね」
俺は動じない。
するとユンファさんの唇がおもむろに俺の耳元へ上がり、
「ふふ…ソンジュさんが格好良いから、キスマークつけちゃった…――これで太陽の下に出たら、昨日の夜にいけないことをしたってバレてしまいますね…」
と妖艶な囁きが俺の耳を愛撫してきた。
俺は気持ちユンファさんのほうへ顔を向けつつ、彼の筋っぽい背中や腰の裏を撫でまわしながら、
「…じゃあ責任を取ってくださいね…?」
とそう言う。彼はそれを鼻で笑った。
「…ふっ、責任…? はは…悪いが、僕はその言葉が大っ嫌いなんです…」
「…なら、せめて貴方の本当のお名前を教えて」
「……いいですよ。僕のことをもっと満足させてくれたら教えてあげます…。ふふ……」
言いながらユンファさんはおもむろに、俺の開いた足のあいだの床に膝を着き、その顔を仰向かせた。彼の片手は床に着かれているが、もう片手は俺の勃起を黒い下着の上から撫でくりまわしてくる。
……そして彼は俺の目を上目遣いに見つめながら、ゆっくりと焦らすようにその美しい顔をそこへ寄せ――ぺろ、と悪戯な舌を一瞬それに触れさせてすぐしまう。彼は俺の目を見上げたまま、はむ…はむとそれを唇で食んでくる。
「どうせ焦らすのならば…その綺麗なお顔を擦 りつけるだけにしてくださいません…?」
俺は生意気に焦らしてくるようなユンファさんに、作られた柔和な声色でそう微笑みを傾けた。
「……、…」
するとユンファさんはふと切ない顔で俺を見上げ、俺の勃起にあった両手を床に着く。
……俺はユンファさんの後ろ頭に手を添えた。添えただけだ。しかしユンファさんはまるで吸い寄せられてくるように、俺の黒い下着の中でふくらんだ勃起に紅潮した頬を擦りつけてくる。
「…そう…、そうです…」
「……、…んん……」
腿の裏を浮かせた正座のような中腰で、すり…すり…とその痩せた頬やこめかみを俺の勃起に擦りつけてくるユンファさんの頭を、俺がついい つ も の 癖 でなで…なでと撫でて褒めてあげると、彼は「…はぁ…」とうっとりとした嘆息をもらし、片手を股ぐらへ入れ――くちゅくちゅと膣をいじりはじめた。
……綺麗すぎるほどの男の顔が、下着越しとはいえ、自分の恥部に擦り付けられている。しかもそれに興奮したこの美男子は、自慰まではじめてしまった。
残酷な興奮が高まった俺はついその人の前髪を鷲掴み、その頬を何度もビンタしたくなった。「誰がオナニーしていいと言った?」と――しかし、
…………堪え、俺は「もう脱がせていいですよ」と声をかける。――ユンファさんはゆっくりと頭をもたげると、俺の黒いボクサーパンツのゴムに手をかけ、それをずり下げる。俺は尻を浮かせた。
さなかに俺の勃起の先端が下着の布にやや引っかかり、その反動でボロンと飛び出てきたそれが、ほとんど直立に直ろうとゆらゆら揺れる。――その剛健な勃起の揺れに見惚れていたユンファさんは、揺れが収まるなり、媚びるような潤んだ目で俺を見上げた。
「…おちんちん舐めていいですか…?」
「どうぞ…」
「…いただきます…、……」
とユンファさんは、俺の陰茎の亀頭をその赤くふくよかな唇ではむと咥え、まずは俺のなめらかな薄桃色の亀頭をしゃぶりはじめる。
こと敏感な亀頭を、やわらかい唇でちゅぷちゅぷと軽く吸われながら優しくしぼりとるように刺激され、それも美貌の男が自分の目をもの狂わしい赤紫色の瞳で見上げながら、赤い凄艶 な肉厚な唇で自分の勃起を咥えている様は、俺の甚だしい欲情の脈動を次々さそう。
「……ん…あぁ、気持ちいい…」
俺は低声 で喘いだ。
……ふふ、とユンファさんは切れ長の目を妖艶に細め、俺の勃起の幹をやわらかく握った。彼の片手はこす…こすと俺の陰茎の薄皮をずらすように刺激しながら、先を咥えていた唇をあけて舌を下唇にかぶせ、ちろちろ俺の亀頭を舐めて悪戯をしてくる。
「……は…、おちんちんビクビクしていますね…、気持ちいいですか…?」
「はい、とても…、とても気持ちいいです……」
俺はまた手癖で、ユンファさんの頭を褒めるようになで…なでと優しく撫でた。
「……は……♡ ……、…」
すると、俺を見上げている彼の切れ長の目がとろんと危ういほど虚ろになり、彼は下腹部からお尻をくねらせる。――俺はユンファさんの、この主人に褒められたマゾヒストのような嬌態 を見たとき、覚えた危うい興奮のほしいままに彼を暴きそうだった。
「…はは…、……」
だが――惚れた人にそんなことはできない。
「……ん…、…んん……ん……」
ユンファさんは俺の目をうっとりと見上げながら、俺の勃起のやや張ったカリ下から亀頭を、ちゅぽ…ちゅぽ…と軽く吸いつきながらまったりとしゃぶってくる。
巧みに上唇と下唇をひときわ敏感なカリ下に引っかけて引き、吸いながらその唇で亀頭をしぼり、俺の陰嚢を極めてやさしく撫でまわす。
……その美貌の人が服従したかのような眺めにも、また巧みに与えられる快感にも甚だ興奮した俺は、その興奮のあまり間違えれば彼の頭を掴んでしまいそうだった。
「随分美味 しそうにしゃぶるんですね…」
俺が低い吐息まじりにそう言うと、俺の勃起を口から放し、俺を興奮した涙目で見上げてくるユンファさんの顔がやや傾き、
「……は…、おちんちん美味しいです……」
と少し泣きそうな切ない顔で彼は微笑む。
――ふと俺が目を下げると、彼の真っ白い胸板についた薄桃色の乳首はぎゅっと小さく集まって、こと乳頭はぴんと粒勃っている。例 え ば の 話 だが、これだけぷっくりとしていれば抓 るのも容易かろう。
「……ん…、……」
ユンファさんは俺のものを掴んでコスコスとしごきながら、あむ…あむとカリ下の皮を食んでくるが、ユンファさんのもう片手はその人の股ぐらへまた恐る恐ると伸びてゆく。
――彼の片手は自分の半勃ちの、軸 ばかり前向きで頭はしなだれさせている陰茎を通りすぎ、向かうところ小ぶりな白っぽい陰嚢の下……くちゅくちゅと自分の膣のなかをこすりはじめたようだ。
「……凄く綺麗……」
俺が――「勝手にオナニーをするなよ」とのセリフを堪えて――言いながらまた頭を撫でると、ユンファさんの陰茎が根本からくいっくいっと頷き、垂れた亀頭がぷるんぷるんと振れる。
……彼の豊艶 な唇が、カリ下からもう少し俺の勃起を侵食してゆく。――ほとんど三分の一ばかりであるが、じゅぽ、じゅぽ、じゅぽ、と夢中で俺の勃起をしゃぶっている彼の、俺が太いあまりに大きく顎を開いているその様子、小さい赤い唇で一生懸命それを咥えているユンファさんが、何とも言い尽くせない俺の恣意 的な艶情 をかき立てる。
「可愛い…」
俺の手は無意識にユンファさんの後ろ頭に添えられた。するとユンファさんは俺に頭を押されてもいないのに、俺の目を見上げながら、自ら俺の勃起をもっと口の奥へと押し込む。――そう許されると堪えきれなくなった俺は、彼の後ろ頭を押さえて腰を突き出した。そのままその人の咽頭まで先端を押し込み、ゆるやかにずるっ…ずるっ…と尻をすぼませるようにして腰を動かす。
……勝手に動く俺の太い剛性な勃起にそのすぼめた赤い唇を、その舌をずりっ…ずりっ…と擦られ、奥のやわい咽頭を先端でぐっ…ぐっ…と押されるたび、
「……んっ…♡ …ん、♡ ……っん、♡」
とユンファさんが鼻にかかった甘く切ない声をもらす。…秀麗な眉尻を下げ、必死に俺の目を見上げてくるその赤紫色の瞳に、俺はまた嗜虐心 を催 した。
ユンファさんの側頭部を両手でつかみ、ずっずっずっとその唇と舌で勃起をしごく。さすがにそのたび咽頭を突くまではしない。
「……んっ…♡ んっ…♡ んっ…♡ んっ…♡」
しかし彼は恐ろしげに俺を見上げながら、じゅぷじゅぷと吸い込むようにして、むしろ俺の勃起を至剛 となるまで漲 らせようとしてくる。
「……っ」
俺は腰を引き、その唇からものを抜き取った。射精しそうだったのである。
俺の下腹部へはね返る弓なりの勃起の亀頭から、ユンファさんの粘性な唾液が鞭 のようにしなりながら引いて、俺の裏筋にはりつく。
「……っは…、僕のまんこにおちんちん下さい……」
とユンファさんは切ない潤んだ目で俺を見上げながら、俺のそり返る勃起をそっと掴んだ。
「………んん…♡ 何でもするのでおちんちん下さい…、……ん…♡」
そしてぽってりと濡れた赤い唇を俺の勃起の裏、亀頭から三分の一まで何度もずりずりと往復して擦りつけてくる。――媚びてくるようなその動きにもまして、くちくちと彼の自慰の手もまた止まらない。
……ユンファさんの俺の目を見上げてくるその蕩 けた切れ長の目、彼の赤紫の瞳はしっとりと欲情の蜜に濡らされ、その蜜によって明瞭性がぼやけている。――これはい け な い 目 だ。
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