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                 俺は自分の勃起の凶猛(きょうもう)性を自覚していたため、ああして俺なりに入念な愛撫をもってユンファさんの膣を濡らし、十分にほぐしたつもりであった。――いや、実際あれだけよく濡れて開かれていれば、並の男の勃起ならむしろ彼には大歓迎されたことだろう。  しかしまずアルファ属男性の俺の陰茎は、勃起をすればなお太さも長さも(彼が慣れ親しんでいるであろう)ベータ属男性のそれとは並外れている。  ――その上、このときの俺がこうしてユンファさんの膣内にそうやすやすとは挿入できなかった原因は、実はユンファさんのほうにもあった。    ユンファさんはオメガ属男性も、アルファ属の血が濃い人である。  一般的なベータ属同士の両親をもったオメガ属は、ベータ属に属性ならではの身体的特徴がないぶん(ベータ属の身体的特徴は属性ならではというよりか親の遺伝の占めるところが大きい)、オメガ属固有の身体的特徴が際だっている者が多い。それというのも、オメガ属は本来小柄なことが多く(男性であっても平均身長は160センチほどである)、また男女ともに筋肉もつきにくい体質をもっている。    ところがユンファさんは、むしろそのオメガ属の体質と真反対といえる、屈強な身体的特徴をもったアルファ属同士の両親のもとに生まれている(ゆえ)に、彼もまたオメガ属にしてアルファ属の身体的特徴をところどころ受け継いでいた。  ――たとえばユンファさんは、まず一見からしてもアルファ属的な涼やかな容姿をもっているが、小柄な者の多いオメガ属にして彼は178センチと背も高く、またその広い肩にも見るように、わりかし骨格から大きく骨太なほうである。  また何より彼は細身ではあるが、その肉体のあちこちが筋っぽく筋肉質であるところからしても、彼の筋肉量は少なくともベータ属男性の平均程度にはあることだろう。    すると必然的にユンファさんは、骨盤底筋(こつばんていきん)と呼ばれる、いわばアナルや膣周りの筋肉においても発達しているようだった。  ……それも、まあさすがにアルファ属男性には及ばないにせよ、彼が男性であるぶんか、同じく筋肉のつきやすいアルファ属女性よりもそのあたりの筋肉量が多いようである(アルファ属男性に次いで筋肉量の多いベータ属男性の平均に近いのだから当然ではあるが)――つまりユンファさんの膣は、他の膣をもつ属性別のそこよりも「締まり」がよい。  というのも、たとえば体質から筋肉量の豊かなアルファ属女性の膣が、膣をもつ全属性別――アルファ属女性、ベータ属女性、オメガ属女性、オメガ属男性――のうち「一番よく締まる」といわれるのは、その「締まり」とその付近の筋肉に相関関係があるためである。    また往々にしてアルファ属女性の膣は、もとから未発達的に小さいほうだとよくいわれている。  彼女たちは生殖器に精巣ももっているので、第二次性徴期には卵巣とそれの両方を発達させるためか、基準とされるベータ属女性の膣に比べれば未発達的だ(膣の長さも短く幅も(せま)い)というのだ。    なおオメガ属男性も同様に卵巣と精巣をもっているものの、彼らの場合は逆に陰茎が未発達的に小さいことが多い。が――しかしそのオメガ属男性であっても、アルファ属の遺伝を濃く受け継いでいるユンファさんは、むしろそのアルファ属女性の未発達的な膣に似たものをもっているようだった。現に彼の陰茎は、よほど下手なベータ属男性よりも大きい。    要するにユンファさんの膣はオメガ属男性のそれであっても、アルファ属の遺伝が強いために膣まわりの筋肉量も多いので反発力も強く、またアルファ属女性的に彼の器それそのものもまた窄かったということである。  そのような場所に、いきなり俺の長大な太い勃起を挿れたらそりゃあ……そもそも俺を受け入れることに慣れた今でさえ、彼のそこは充実したキツい締まりを維持しているくらいなのだ。また彼は人より濡れやすい体質のほうだとは思うが、そうしてたっぷりと濡れすぎというほど濡れていてもなお、彼のそこは糠床(ぬかどこ)(くぎ)というようにならない。やはり窄いからである。    今でさえそれくらい窄く締まりの良いユンファさんの膣である。  すると、恐らく希少なアルファ男を初めて受け入れようというこのときの彼の膣は、何百というベータ男の勃起を受け入れてきたわり、いや、そのサイズであれば難なくというようであっても、今の彼の膣よりはよっぽど閉ざされており――およそこのときの彼の膣にとって、アルファ男の俺の長大な太い勃起は、もはや慌てふためくべき前代未聞の大男――そして俺のほうも下手すれば、これから人跡未踏(じんせきみとう)の聖域へ踏み入れるというのと、その侵略的な猛悪(もうあく)性はほとんど変わらなかったのである。    ……ただし「締まりがよい」と聞いて、間違ってもそれが良いことばかりであると見なしてはならない。  何事においても行きすぎた過不足は弊害となるように、膣という場所も窄ければ窄いほど、締めつけが強ければ強いほどよいというものでもなく、むしろそこはある程度の寛容な柔軟性がなくてはならない。  なぜなら、これは挿入される側にも挿入をする側にも言えることだが、あまりにもキツく締まりが(はなは)だしい窄い膣は、はからずもその両者に痛みを与えてしまうことが多いからである――。      そう…――このとき、実は俺もかなり痛かった。      しかし挿入前の俺は、むしろこれを好機と見ていた。  ……もちろん実際の破瓜(はか)ではないにせよ、少なくともその記念すべき瞬間に近い形で、惚れた美男子を甘やかして抱けると考えたのである。  であるのならばバックなどという合理的な体勢なやめだ、と俺は、俺の前で白いお尻を向けているユンファさんのそのお尻を横にたおし、その長身を仰向けにさせながら――その人の脚を開かせ、その白く細長い脚の間に両膝を着いて、しかし一旦は彼の肩のちかくに両手を着く。  ……そうして俺に組み敷かれたユンファさんが、何か切なげに目を細めて俺を見上げてくる。 「…大丈夫…? 痛かったですよね…、やっぱり挿れるのはやめ…」   「は…?」    しかしユンファさんが優男を演ずる俺の言葉のさなかに、何言っているんだ、と不遜な目つきで俺を見てくる。彼は次いで、はん、とその通り強がって笑った。   「…別に痛くなかったですけど?」    ちなみにこれはユンファさんの嘘である。  俺は後々になってユンファさんに「実は初めてのときソンジュのがデカすぎて、ちょっと裂けていたんだよね(血も出ていた)」と聞かされた。――「本当にバージン散らしたときのこと思い出したくらいだよ」  ……完全に後出しだった(この夜には何をも顧みずさんざん求めあってしまったというのに)。    いや、俺も悪い。  俺がそのことを知らなかったはずがない――。 「…いやだけれど、貴方の方も随分窄いようだから……」   「…あぁ言っていなかったけど、実は僕バージンなんです…。ふふ…だから、ソンジュさんが僕の初めての人なんですよ…」    ……なんてユンファさんは、それっぽくはにかんだように笑った。   「…っえ、そっそうなん…」    俺はこのときつい真に受けてしまったが、それはユンファさんの冗談であった。彼はあはは、と明るく笑うと、   「いや冗談ですよ、そんなの嘘に決まっているじゃないですか? ソンジュさん、さっき僕のまんこ舐めましたよね、ザーメンの味したでしょう、…あははは、何で引っ掛かったんですか? 何なら今日はまんこどころか、ご主人様にアナルまで犯され尽くしたあとですから――ていうか、体売って生計を立てている僕が()()()()なんて訳ないでしょ、…ふふ、ねえ、僕のどこがバージンなんか見えたんです…ははは、…まさか騙されるとは思わなかったな…」    と可笑(おか)しそうに、とにかく俺をからかってケラケラ笑っていた。…まあ彼のそれはごもっともである。少し考えてみればわかることだ。  ――しかし俺にしてみればその窄さもさることながら(とはいえ俺と寝るほとんどの人が一度は痛がるのだが)、何となくユンファさんの品の良い淑やかさとそれとが上手く結びついてしまったばかりに、俺はつい一瞬騙されてしまったのである。   「…いえ…でも何となくですが、ユエさんならば初めてと言われても、何らおかしくはないかなと…」   「えぇ、そうですか?」とユンファさんは俺をあなどった笑顔を(かし)げる。   「…ははは…まさかそう思うのはソンジュさんくらいですよ。…僕、正直みんなに、いつでもどこでも都合よくヤれる、下品なヤリマンクソビッチとしか思われていないですから」   「……いえ俺にはそうは見えない…。凄くお綺麗だし、何となく品があって…どこか儚げで…――」    ユンファさんは俺のうっとりとした言葉のさなかに、ぷっと吹き出した。   「はは、僕が綺麗で品があって儚げ? むしろ真逆ですよ。…」    ニヤニヤと悪ぶった笑みを浮かべているユンファさんは、俺をその切れ長の冷眼で見据えてくる。   「そもそも…僕が何で今日ショウさんと会ったかわかります…?」   「……、…」    俺は何も言わずに「さあ」と首を傾げた。ユンファさんは眉を寄せ、ふっと鼻で笑う。   「さっき言っていた“ご主人様”の命令です。…僕、今週は他人棒三十本とセックスしなくちゃいけないんですよ。…で、相手の男の命令は絶対。その三十本のちんぽの馬鹿な肉便器奴隷になれって、ご主人様に命令されているんです。つまり、貴方はその内の単なる一本。――だけど今なら僕、貴方にも絶対服従しますよ? それがご主人様の命令なので。」   「……そう」    なるほど、と俺は頷いた。  どうりで俺が強く出ると、弱くおもねるような態度を取っていたわけだなと思ったのである。  ……ところが俺のその「なるほど」は所詮、粋がった思考というだけだった。俺の左胸の本能が俺の(たぎ)つ嫉妬の悪血(おけつ)を全身に駆け巡らせ、それは当然のように俺の頭にも上って俺を激昂させた。      しかし体の動きばかりはのろのろと、俺は組み敷いていたユンファさんの上から退き、ベッドからも降り、床に両足を着けて立った。彼は「どこ行くんですか…?」とこの折にベッドを降りた俺の行動を不審がったが、俺は荒々しい動きでその人の体を横抱きにし、あたかもたやすい身のこなしでひょいっと持ち上げた。   「……っ?」   「…………」    実際ユンファさんの体は、少なくともアルファ男の俺にとって軽いといえる体重だった。痩せ型の彼は、およそ六十何キロかといったところであろう。         ×××   ×××   ×××    みなさま、いつもお読みいただき本当に本当にありがとうございますっ!  そしていいねやブクマなどリアクションで応援くださる優しすぎ天上界の女神えん男神の神様方、ほんと〜〜〜にありがとう、それしか言う言葉が見つからなあああ〜いっていうか何で日本語って「ありがとう」の意味のある言葉ありがとうと感謝くらいしかねぇの!? それとも僕が無学なだけか…!?   つまりありがとうございますを宇宙まで飛び越えたありがとうございますです(?)、ほんと〜〜〜〜〜〜〜にありがとうございます(土下座)    これからもみなさまに少しでも楽しんでいただける作品を書けるよう頑張ります、おれのこの宇宙ハッピーを作品シェアハピでみなさまのちこっとハッピーにできるよう、これからも励み〜〜!  頑張ります、引き続き応援のほうよろしくお願いいたしますっっ(強欲だったらすみません…強欲の壺)  ……あと明日ちょっと出かけるので、もしかすると明日は「目」の更新ないかもわかんないです!! なので結果「鍵」もしあさってとか更新になるかも、ごめんなさい!! でも頑張るつもりです!!    強欲の鹿しか。  

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