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ユンファさんを横抱きにして、俺はこのラブホテルの室内を歩いた。俺の目は俺の足がたどり着くべき、ある目的地に向いている。
「…はは…持ち上げられたのは流石に初めてだ…」
ぼそと可笑 しそうにユンファさんがそう呟いた。――ラブホテルの一室は狭い。
……俺はすぐにたどり着いた目的地、荷物置きの木製テーブルの上に彼を座らせるようにして下ろした。この長方形のテーブルの端には電気ポットと伏せられた二つの湯呑みが置かれているが、それ以外は何も置かれていない。テーブルの高さはちょうど俺の股下までの高さである。
またこの長方形のテーブルは壁に密接している。
テーブルの上の壁には横長の飾り気のない鏡が貼りつけられており、その鏡の上にはスポットライトのような黒い傘の照明が間隔をあけて二つ取り付けられている。
すると鏡に映った彼の白い痩せた背中は、上からのその照明のやや黄色味をおびた明かりに照らされることで、その背骨に規則的にならんだ棘突起ひとつひとつに影が生まれ、それによってよりその小さい規則的な突起がゴツゴツと浮きぼりになって見える。
俺はそうしてテーブルの上に座らせたユンファさんの両脚を持ち上げ、その細長い白い脚の膝を曲げて、要するにM字開脚をさせて開かせ――半勃ちの薄桃の陰茎、仄 白い陰嚢の下……彼の桃色の潤んだ膣口をペンペンとスキンの着いた勃起で叩いた。
「さあ、改めて言ってくださいます…? “どうぞ僕のおまんこに、ソンジュさんのおちんちんを挿れてください”…」
俺のこの要求は嫌味なほど優しい響きがあった。
……ユンファさんは一瞬キッと俺の目を睨むようにして見たが、「今なら貴方に絶対服従しますよ」と俺に言った手前か、ふと目を伏せてやや斜めに顎をひくと、
「…どうぞ…」
「まさかとは思いますけれど、まさか…わざわざ言わねばわからないのですか。俺の目を見ながら。開きながら。――当然でしょう…?」
「……、…」
するとユンファさんは一瞬面倒そうに眉を寄せたが、まずは目を伏せたままに自分の腿のうらから回した両手の指先で、くぱ…とその桃色の膣口を開く。
……そして気だるそうな切れ長の目で俺の目を見やると、彼はさして羞恥したようでもなく、平然とこういった。
「…どうぞ…僕のおまんこに、ソンジュさんのおちんちんを挿れてください…」
「…いや、やはり…それだけでは足りないな」
「…は…?」
何が、とユンファさんが不機嫌そうな顔をする。
「…そういえば先ほど貴方は、俺にこう仰 られましたね。…“何でもするのでおちんちん下さい”と……」
「……ええ、言いましたが…?」
ユンファさんが後悔も何もしていなさそうな気だるい返答をする。むしろ勿体つけずに早く要求を言え、というような苛立ちさえ垣間見える。
「では…貴 方 の 苗 字 か ら ご 本 名 を 付 け て 、“何々のおまんこに、ソンジュさんのおちんちんを挿れてください”……どうぞ…?」
「……、…いや、…ッは、?」
ユンファさんがあからさまな蔑視で俺を見てくる。
……俺はちゅくちゅくと彼の膣口を勃起の先端でこすり、それをもって「早く言えよ」と急かす。すると「いや…」と険しい目を伏せたわり、彼の膣口あたりが蠱惑的に波打つ。
「…さあどうぞ…?」
「……、…、…」
嬌羞 の表情で斜め下へ目を伏せているユンファさんの頬は赤く、しかし彼の眉にはまだ凛々しい意思の強さが残っている。
「…僕のいやらしいまんこに、おちんちん下さい…」
と言ったユンファさんの手の指が、「僕のここに、下さい…」とくちゅ…俺の勃起の焦点を自分の膣口に定めてくる。――彼はそれで何とかこの場を切り抜けようとしているのである。
「…僕って…? 貴方は誰ですか…?」
しかし俺は譲らない。
それごときで揺らぐようではサディストに向いていない。俺はくちゅ…くちゅと浅い出入りをする。「んぁ…♡」とそれに感じ、ユンファさんはきゅっと辛そうに目を瞑った。
「…〜〜〜ッつ、ツキシタ、ヤガキ、ユンファの…ぉ、おまんこに、…ソンジュさんのおちんちん、挿れてください、……ッ」
より屈辱的に本名を付けて言わされたこの淫猥 なセリフには、さすがのユンファさんでも酷い羞恥に焼かれているようだった。――とても愛らしかった。
「なるほど…ツキシタ・ヤガキ・ユンファ…。ふふふ…貴方はユンファさんというんですね…? お名前もとてもお綺麗だ…、お綺麗な貴方にぴったり…」
しかし――これでは挿れられない。そうだろう…?
俺は少し呆れたふりをする。
「…だけれど…俺は貴方に、俺 の 目 を 見 な が ら と言ったはずでしょう…?」
「……、…」
ユンファさんがハッと目を開けて俺の目を見る。
彼の秀麗な黒眉はいまや弱々しく眉尻が下がり、彼のその涼やかな切れ長の目は正気と見えないほど虚ろにとろめいて、半開きの赤い肉厚な唇は震えている。ぐちゅ…くちゅ、と俺のスキンを着けた亀頭の先端に、ぐっ…ぐっ…と揺れる彼の膣口が擦りつけられる。
「これは追加ですね…――“ソンジュさん、ユンファの初めてを貰ってください。”…」
「……は、…は……ソンジュ、さ……」
ユンファさんはすっかりとマゾヒスティックな悦びに取り憑かれた顔をしている。――泣き出しそうな顔をしているくせに、その赤い肉厚な唇の口角をやや下げているくせに、俺の目を見つめてくるその群青色の瞳は俺に媚びた甘さでたっぷりと濡れていた。
「ソンジュ、さん…、ユンファの初めて…貰って、ください…」
「…しかし…ごめんなさいね…、俺のおちんちんは大変大きいものですから、ともすると貴方の大切なここが、壊れてしまうかもしれません……」
俺は焚きつけるようにその人の膣口をペチペチとそれで叩き、「やっぱり挿れるのはやめにしましょうか…」と困り顔の微笑をつくる。するとユンファさんは俺を見ながら泣きそうな顔をふるふると振り、むせび泣くような上ずった声でこう言う。
「僕のまんこなんか壊れてもいいです、僕を壊してください…おちんちん下さい、ソンジュさんのおちんちんでまんこ壊してください、ユンファのまんこ、おちんちんでめちゃくちゃに壊してください…」
「…おやおや…、そんなに俺に貴方の初めてを貰ってほしいのですか…?」
「はい…ソンジュさんに、…僕の初めて、どうしても貰ってほしいです……」
ユンファさんは俺の与える加虐に陶酔していた。
今から俺に初々しい華を奉奠 するという自分の役柄に酔いしれ、腰を揺らし、くちゅくちゅとしきりに俺の先端にその濡れた膣口を擦りつけてくる。――彼は被虐の興奮にぬかるむ群青色の瞳で俺の目を見据え、切ない潤み声でおのずから俺にこう言ってくる。
「…ユンファの処女膜破ってください、ユンファのまんこ貴方のおちんちんの形に変えてください、…ソンジュさんの大きくて太いおちんちんの形、ユンファのまんこにいっぱい教え込んでください、…ユンファが初めての経験わすれないように、貴方のちんぽの形このまんこに覚えさせてください、…」
「…ふ…恐ろしい人…、……」
一度スイッチが入ると没頭するタイプか。さすがにマゾヒストの素質がある、というか、さすが俺の惚れ込んだマゾヒストである。
そう俺の目を潤んだ群青色の瞳で見つめながら、ユンファさんはおもむろに自ら脚を大きく開き、さらには自分の膣口が横にのびるほどそこを開いて、彼は赤い肉厚な唇の端を下げ気味にこういった。
「どうぞ…どうかツキシタ・ヤガキ・ユンファのおまんこに、…ソンジュさんのおっきいおちんちん下さい、…ユンファのまんこぶっ壊してください、お願いします、……」
「…ふふふ、そこまで仰られるのなら…、……」
……俺はぐっと腰を押し出した。
今度は二度と退陣しない。メリメリと俺の太い亀頭が、彼の狭窄 的な肉に無理に食い込んでゆく。
「……――ッ!」
ユンファさんの顔が苦痛に歪む。
彼の顰められた眉の下、閉ざされたまぶたの際に密生した黒いまつげが扇 状となっている。また彼は「あ」の形に赤い上下とも肉厚な唇をあけているが、痛みから声を出すことさえできないでいる。
「…痛かったらちゃんと言ってくださいね…? いえ言えなかったにしても…例えば俺の体のどこかを、トントンと叩いてくださるだけでも結構ですから……」
俺のこれは情けごかしである。
と言いつつ俺は攻勢を弱めることもせずに、ユンファさんの膣口を無理やりこじ開けようとしている最中だ。――ましてや俺は、ただこの美男子の口から「痛い」という弱音が聞きたかっただけである。
……険しいほどユンファさんの黒い眉は顰められ、その美しい切れ長のまぶたは隙間もないほど強く合わさっている。しかしさなか、
「…はっ、ど、どこまで優しいんですか、…別に大丈夫ですから、…」
と強がって苦しそうに笑ったユンファさんは、自分の強さを示すように強張った薄目で俺を見た。先ほどまではマゾヒスティックな陶酔をしていた彼も、さすがにこの酷烈な痛みには目が覚めたか、あるいは俺が優しい風なことを言ったので、彼は内心ムッとしたのかもしれない。
しかし俺は彼のその勝ち気さにまた惚れ惚れとした。マゾヒスティックな面と合わせたその陰陽は、まさしく俺の理想だった。やはりどうもこの男を手に入れたい。――ここでずぶんっと鈍く、俺の亀頭が窄すぎる彼のなかにねじ込まれる。
「……グ…ッ!!」
するとさすがにユンファさんは奥歯を噛み締め、ぎゅっと目をつむる。明らかに苦渋の表情である。――俺は一旦止まり(俺も痛かったのだ)、しかし慰めにその人の小さく凝結 した乳首をくりくりといじり、その頬に垂れた甘い汗を舐めとったあと、その頬に唇を触れさせたままこう彼に囁く。
「……ごめんなさい、痛いですよね、…は、――だけれど、とても綺麗だよ……」
それにしても痛みに悶え苦しむユンファさんの表情が、また格別に綺麗だった。――しかしハッと唾を吐くような短い息を吐いた彼は、その強ばった頬を俺の唇の下でひくひくと引き攣 らせながら笑う。
「っ変なこと、言わせた変態の癖に、…今じゃまるで処女を抱く優男じゃないか、…」
「……ッ」
しかし彼が息巻いた際、その人の腹に力が入ったのだろう、亀頭をぎゅっと握りしめられたかのような鈍痛のせいで、その嫌味に返答をする余裕もない俺は、かろうじて唇を彼の耳元に寄せ、余裕の失われた低い声でこう囁く。
「…っ好きです、ユンファさん、…」
「……ッは、!」
ユンファさんの肩がビクッとした。俺は焦りから脂汗をかきながら、ず、ず…と極ゆっくり先に進む。むしろひときわ締まりの厳しい膣口にずっと留まるよりか、まだやわらかく開かれている奥へ進んだほうが賢明だった。――俺はユンファさんの脇の下から両腕をまわし、彼の肩を掴むと、わけもわからず自分の愛を彼の耳にぶつけていた。
「好きだ、一目惚れだったんです、…貴方が好きだ、…」
「……、…ゃ、……」
ユンファさんはゆっくり迫りくる俺の胸板をそ…と両手で押しのけようとしているが、その両手には力がなく、汗をかいた俺の胸板に張り付いているばかりである。――「愛してる…」という俺の泣きそうな震え声が、この胸からこみあげてくる低い吐息にまざる。
「…はぁ、愛してる…貴方が欲しいんだユンファさん、…どうしても貴方が欲しい、どうか俺だけのものになって……」
「…ゃ、ゃめ、…ッやめ、……て……♡」
と語尾ばかり嬌声めいていたユンファさんの声に、……俺はおや、と思った。ふっと離れ、間近に彼の顔を見る。
「……〜〜〜っ」
ずず…と窮屈ななかを押しひろげながら奥へ入ってくる俺の太い勃起によって、痛みのみならず膣の膨満感もまた凄まじいのであろうユンファさんは、目をつむった険しい顔をしてただ耐えていた。
――俺はまた一旦その人のなかの中腹で止まる。
「……? …ん……」
なぜ止まったと薄目で俺を見たユンファさんの唇を、すかさず俺ははむ…と優しく食む。…はむ…はむと彼の肉厚な唇を食みながら、俺の胸元にある彼のその片方の手を取り――俺はその人の手首から這わせる自分の手の指で、その白い長い指を絡めとり、そっと握った。
「……、…っふ……ん……♡」
「……、……」
なるほど……可愛いところがあるのだな。
震えているユンファさんの五本の指先が、俺の手の甲をゆるく押してくる。そればかりかその人の声はもう少し上ずり、きゅう…と彼の膣口が奥まるようにして締まる。――なるほど。
この男を落とすには優しくするべきだ。
――このマゾヒストの美男子のツボ…いや、弱 点 は、案外「甘く優しく愛されること」らしい。
そう……この瞬間のこの「気付き」こそが契機となり、俺はこれまで徹底してユンファさんに優しい愛を向けてきたのであった。
は…とユンファさんの唇が離れ、彼は弱々しい涙目で俺の目を見てくる。
「…愛してる、ユンファ…」
と俺が唇を離した距離のまま囁き声でいうと、ユンファさんの顔に泣きそうな翳りが差す。
「ふざけるなよ…」
「ふざけてなんかいない。本当に愛してる…――ところで大丈夫…? 痛いですよね、すみません…」
俺が心配げにそう言うなり、ユンファさんは眉尻を下げた切ない表情で、その青味の濃くなった薄紫色の瞳を小刻みに揺らしながら、間近な俺の瞳を見つめ返してくる。ただしその表情のわり、彼はこう言った。
「べ、別に…さっきのバージンとか何だとかは本当にただの冗談で、…まさか痛いわけ…」
「…いや、しかし思えば痛いとは言いにくいですよね…――大丈夫…。俺の方で様子を見ながら、少しずつ挿れていきますから……」
「…っ違う、僕は本当に痛くな…」
とユンファさんが悔しそうな顔をしたが、俺は微笑んで頷いた。
「わかってる…、……――。」
俺はこのあと――優しく…優しく、彼の陰茎や乳首を刺激しながら、ゆっくり…ゆっくりと、彼の唇や首筋、耳をこの唇と舌で優しく愛撫しながら、…一寸刻みに少しずつ挿入をしていったのである。
……俺だけは違う、俺だけは優しい、俺だけは貴方を重んずる……。
しかしようやっとユンファさんの奥口までたどり着いても、俺の雄しべはどうやら彼の華には大きすぎた。――今でこそ俺の全てが彼の華のなかに納まるが、初めて挿入したこのときにはさすがに全ては入り切らなかった。少なくとも根本から三分の一弱は外に出ていたことだろう。
なおユンファさんは挿入中一度だって「痛い」ともいわず、また彼の指がトントンと俺のどこかを叩くようなこともなかった。
しかし俺と手を繋いでいた彼の五本の指ばかりは、俺の手の甲にめり込むようなほど強くそこを指圧し、そして彼の指と指のあいだに挟まる俺の指の根本をギリギリと圧迫してきた。痩せている彼の指は骨のように固く、俺は指の根本に骨にひびくような圧痛を感じたくらいだ。
――実際、ユンファさんも相当痛かったはずである。
俺にもメリメリと窄い細道を押し開くような感覚があったどころか、窄いあまりに俺のほうもキツい、苦しい、痛いと顔を顰めていたくらいだった。
それこそユンファさんのみならず、俺も挿入を終えた頃には涙目になって若干放心状態だった(挿入を終えた安心感もそうだが、入り込んでもなお彼のその窄さはしばらく俺を苦しめていた)。
とまれかくまれ無事に挿入まで終わると、ユンファさんは眉尻を下げ、どこか呆れたように俺に笑った。
「…はは…本当にゴム着けたまま挿れちゃいましたね、勿体無いことするな…――折角入りましたけど、…何なら今からでも全然外していいですよ…」
ユンファさんのその強がった笑顔は、彼の汗と涙に濡れて色っぽい光沢があった。うす赤くなった顔全体にしっとりと汗をかき、頬や額には玉の汗をうかばせ、また彼のまなじりには涙が溜まり、その紅潮した頬にも涙の道が艶めいていた。
「……とんでもない…。こんなにも美しい貴方を抱けたのだから、俺にとって今日は物凄く贅沢な至福の日です。愛しています、ユンファさん……」
俺が汗にまみれた顔で微笑みかけると、ユンファさんは気まずそうに目を伏せた。伏せられた黒い扇のまつ毛にも極小さな涙の雫がちらほら宿っている。
「……へぇ…、……ん…」
俺はそっけない彼の唇を下から持ち上げるように、彼に口付けた。
――俺はこのあとしばらく動かなかった。
まずはユンファさんの体に馴れてもらう必要があった。いやそれもそうだが、何よりこの窮屈さでは俺もまた、とてもじゃないがすぐには動き出せなかった。
お互いがお互いの体に馴れる必要があったのである。――なお俺はそのあいだ、その人の首筋や唇、耳にあり余るほどの唇を捧げ、ときどき彼の乳首や陰茎を愛撫して過ごした。
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