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「…よし、じゃあ挿れるよ。……」
とユンファさんが立ち上がり、ベッドにギッ…ギッ…と片膝ずつ着いて、ベッドに座る俺の上にまたがってくる。俺は俺の両もものうえで膝立ちになった彼を、顎を上げて見上げる。
――ユンファさんは俺の目をじっとその紫の瞳で見下げながら、俺の勃起を片手で調整し、俺の亀頭の先端を自分の膣口にくちゅくちゅとこすりつけながらニヤリとすると、こう俺を愛らしくからかった。
「…ユンファお兄さんのとろとろおまんこのなかに、勃起おちんぽ挿れたい人ー…?」
はは、と俺はそれに目を細めて笑う。
「はい、挿れたいですユンファお兄さん。…はは…お兄さんの素敵なおまんこのなかに、俺の勃起ちんぽ挿れさせてください」
こんなセリフを言うには、やはり幾分かの羞 じらいの疼きを覚えるが、しかしその疼きは俺の熱い頬を照れくさく笑わせるだけだった。
……すると満足げに目を細めたユンファさんが、俺に向けて下げている何やら得意げな微笑をく、とわずかに傾けると、下にある俺の唇にその赤い唇を下げてくる。
「…いいよ青年。じゃあお兄さんにちゅーしてくれたら挿れさせてあげよう」
「……ぐ、…はは……」
たまらない、可愛すぎる。「ちゅー」だなんて単語を、普段あれほど冷徹で高飛車な美男子の口から聞くことになろうとは(オメガ排卵期万歳である)。
今日のユンファさんは可愛すぎる――俺は収まりのきかない、だらしなくニヤけた顔を少し傾け、目をつむりながらちゅ…と、彼の赤い唇にやや尖らせた唇をゆっくり押し上げるように押しつけたあと、おもむろに唇の尖りを正して口を離す。
しかしユンファさんはそれでは満足せず、俺の目を可愛い拗ねた切れ長の目で見下ろす。
「…もっと…」
「…もっと…? ふふ…、…ん……」
では再び、ちゅ…とその肉厚な赤い唇にやや尖らせた唇を押しつける。――するとユンファさんが顎を引き、俺を見下げてにやりと笑うと、くちゅくちゅと膣口に俺の勃起の先端をこすりつける。いや、こすりつけているというよりか、彼はそのくちゅくちゅとした音を立てて遊んでいるようだった。
そして彼はくちゅくちゅと遊びつつ、またにやりと細めた切れ長の目で俺の目を見ながら、
「…しょうがないなぁ…、まあちょっと足りないが、大サービスで挿れさせてあげようか…?」
とまるで僕は妥協してやっている、とでも言いたげな可愛いわがままを俺に言ってくる。
「…はは…それはすみません。……」
愛おしいなと柔らかく笑いながらも俺は察している。おそらくユンファさんのその「ちょっと(キスが)足りない」というのもまた彼の本音ではあるが、かといって何よりもう彼自身が早く挿入されたいのだろう。
「…けれども…キスは挿れたあとでも出来ますから、どうぞお願いします。……」
「…うん…、……」
鼻を鳴らすように返事をしたユンファさんは、目を伏せてぐっと――立てた俺の勃起の先端に、熱い膣口を押しつける。…小さいそこはやや俺のそれを押し下げるような圧をかけてきたが、ややあってにゅぷんっと俺の亀頭を呑み込んだ。
「……あっ…!♡♡」
するときゅっと切れ長のまぶたを切なく細めたユンファさんが、俺のうなじにぎゅっと抱きついてくる。
……彼の膣口はあいかわらず窄いが普段よりかやわい気がする、また今日はただならぬほどそこが熱い。
「…ッく、ゥゥ…ん…――♡♡♡」
まるで子犬が可愛くしょげているような甲高い鼻声をもらしつつ、彼はゆっくりとにゅぷぷぷぷ……腰を下ろしてゆく。――みるみると彼の熱された細道におさめられてゆく俺の勃起は、外気とそのなかの熱さとの温度差もさることながら、ぬかるみながらもやはり甚だしいその圧迫感に、早速根本の恥骨に衝動性を疼かせはじめている。
「……、へへ……」
とそこでユンファさんが俺の肩を押し、俺のことを押し倒す。――俺がおとなしくベッドに背をあずけると、俺の上にまたがる格好となったユンファさんは、赤らんだ顔で恍惚と微笑みながら「ほら、見て…」と吐息まじりに言う。
……俺の根本に、じんわりとした熱が感じられる。
「ソンジュの…今日は、全部入っちゃったよ…」
「……っえ、…ぁ…」
俺は驚いて目と顎を下げた。
……俺がユンファさんのなかに全部入っている。
彼の濡れたお尻が俺の脚のつけ根あたりに密着している。このとき俺は、初めてユンファさんの膣内にすべてを納められた。それは、まるでその刀のために誂 えられた鞘 のように、過不足のない完璧な納まり方をしている。
先ほどユンファさんは「イケそう(今日は全部入りそう)」と思えたのだろう。それで彼はおそらく俺の全てを受け入れてみようと考え、ああして俺のことを押し倒したのである(騎乗位という体位は奥の奥まで入り込みやすい)。
「…はは、本当だ…。俺の入っちゃったね、全部…ユンファさんの、ここに……」
と俺は手錠をされたままの手、その人差し指の爪の腹で、ユンファさんの下腹部を下からつーと上へ縦になぞる。
「…んっ…!♡」
すると、険しい具合に目元を強ばらせたユンファさんがビクッとその下腹部を跳ねさせ、ぎゅっと俺の勃起を締めつける。――俺は彼の下腹部、丁度子宮あたりをトントントン…と人差し指の先でかるく叩いてみる。
「…ユンファさんのここまで、俺のは届いている…?」
「…ぁ、♡ ぁ、♡ ぁ、♡ っと、届いて、る…っ♡」
とユンファさんは、そのタップの度にまるでそこを内側から突かれているかのように小さい悩ましい声をあげ、ひく、ひくひく、とその下腹部を痙攣させては、
「ぁッだめ、いっちゃう…♡ いっちゃういっちゃう…♡ ぅ、だめだめだめ…♡ いく、いく…ッぁ……♡♡」
ぎゅっと目をつむり、ひそめた眉の眉尻を下げたユンファさんの、その細長い両ももがぶるぶると震えながら俺の腰骨に乗りあがる。きゅ、きゅ、きゅ…とその膣内の収縮は速いが軽い。要するに絶頂とはいえ甘いそれである。
「……っハ、…」
喉をヒュッと鳴らすようにそう口から息を吸いこんだユンファさんは、俺の下腹部に震えている両手を置き、俺の上でへたり込んだような格好――内ももを俺の上で伏せているような格好で――、斜め下へ切なく目をつむった顔を伏せている。
「…ぁ…♡ …ぁぅ…♡ らめ…きもちぃ…♡ いくのきもちいぃ…♡ いつもよりきもち…ぁ…♡ いく…♡ だめまたいく…♡ いく…♡ いく…♡」
とユンファさんが深くうなだれ、ビクビクッと臀部を痙攣させながら、俺の下腹部に着いている両手のその腕を、自分のぶるぶる震えている内ももではさむ。
「……〜〜ッ♡♡ は…ぁ…♡ ぁ…♡ だめ…♡ ぁーらめ…♡ いってるのに、いって……ぁぁらめ、♡ らめらめ…いっちゃう…♡ いっちゃう…♡ またいっちゃう…♡ いっちゃ……ぅ〜〜ッ♡♡」
「……、…」
俺はもう何もしていない。
確かにユンファさんの最初の絶頂のきっかけは俺であった。最初のそれに関しては、俺がユンファさんの子宮をトントンと指先でタップしたから起きたことである。彼はもともと子宮を上から刺激されることにも弱いので(もちろん内側からそこを俺に突かれるのも彼は滅法弱いが)、俺はついいつもの悪戯心でそのようなちょっとした意地悪をした。
なおユンファさんは普段でもそれだけで天に昇り詰めることはある。――ただそこまではともかくとしても…普段通りでないのは、そもそも下腹部をタップされただけで「ぁ♡ ぁ♡」と声をあげていたこともそうだが、…何とその一回の絶頂を皮切りに、まるでイく癖がついてしまったかのように、なぜかひとりでに彼が何度も何度も甘イきし始めたところである(とはいえ普段の彼でも「イき癖」がつくことはある。俺が何回か動くたびに「イく…♡」と達するような感じだ。ただしいつものそれは夜の最後のほう、そして俺が動いている最中のことだ)。
……くり返すが、俺はあの意地悪以降は本当に何もしていない。
そしてもちろんこれはユンファさんの演技ではない。いや、今そのような演技をして何のメリットがあるのかもわからないが、ユンファさんの顔がどんどん赤らんでゆく。俺の恥骨あたりから何からどろどろと彼の愛液と汗で濡れてゆく。何より、俺の勃起は絶え間なくきゅっきゅっきゅっきゅっ…とその膣の甘い収縮に淡いもどかしい快感を与えられ続けている。
そうしてユンファさんはひとりでに苦悶し、斜め下へ向けた自分の顎にゆるく握った拳の、その爪の腹を押し付けている。
「…〜〜〜ッ♡♡ ぁぁ…♡ おわんな…っ♡ いくのおわんないィ…っぃく、またいっちゃう…♡ またいっちゃ…ッ♡ またいく、いく、ぃ…――ッ♡♡」
とユンファさんの内ももがぶるぶると震えながら、先ほどよりも深く内側へ向き、内股にゆるく膝を立てているようになる。すると俺の下腹部に片手を着いたままの彼の腕は、その内ももに挟まれる。
「…………」
俺はもしや、…とこうした推測を立てる。
……もしやユンファさんは今、自分の子宮や膣の収縮によって、継続的な快感を得てしまっているのではないか。
人がどこかしらの性感帯を刺激してオーガズムを得ようというときは、もちろん継続的な、まるでメトロノームの針(振り子)のような、絶え間ない一定のテンポでその部分を刺激するものである。
そして俺の勃起はいうまでもなく並より太く長い。
それこそ俺のそれには、彼の窄い細道的な膣内を無理やり押しひろげるような太さがあり、また、彼の子宮口からその周辺の「溜まり」を縦に引き伸ばすような押し上げるような長さもある。――つまり俺の勃起はユンファさんのなかをすべて満杯、もうこれ以上は何も入らないというほどいっぱいいっぱいまで満たすようなものである。
すると普段からユンファさんもそう言っているが、彼の膣内にある性感帯は、俺の勃起の甚だしい太さと長さによってもはや入っているだけでも圧迫され、それを言い換えるならば俺は入っているだけで、彼の膣内の性感帯を刺激している。
……その上で、あまつさえ普段よりも性感の冴えているオメガ排卵期中のユンファさんの体、その普段よりも感じやすくなっている彼の膣内に起こっている――なかの性感帯をあまさず刺激する俺の勃起を咥え込んだまま起こっている――彼自身の甘い絶頂のそのきゅっきゅっきゅっという収縮は、彼の膣内にある性感帯を余すことなく、その速い一定のテンポ――オーガズムを得ようというテンポ――で刺激してしまっているのではないか。
それもある意味では悪いことに、その絶頂も完全に昇り詰めるようなものではなく、浮き沈みのたやすい甘いものであることも加わってか――。
「…ふ、ぅぅ…っ♡ ぅぅぅ〜〜…っ♡ ら、らめぇ…っ!♡ こんらのらめ…っ♡ らめ…っ♡ やら、や…っきもちぃ、♡ どうしよ、とまんらぃ…っ♡ ぁッいく…♡ またいく…♡ ぁぁぁ…♡ またいっひゃ…っ♡ うぅ〜…♡ いくのとまんらぃ…っ♡」
ユンファさんはうつむいた顎に拳の側面をあてがったまま、ビクンッビクンッとその自分の片腕をはさむ内ももを大きく跳ねさせながら、…泣いている。
……ぎゅっと恐れたように目をつむり、苦悶の愁眉の眉尻を下げ、ぽたぽたと汗か涙かよだれかもわからない透明な液体を、俺の腹の上に落としてくるユンファさんは、
「たすけて、…まっまたいっひゃ…っ♡ うー…っ♡ またいっひゃぅ……♡ たすけてぇ、……」
と俺に助けを求めてくるのだが……。
「…いや助、けて…と言われましても……」
俺も俺でどうしたものかと困惑している。
実際俺が何かしら、たとえば彼に意地悪をしているだとか、あるいは彼の性感帯を攻め立てているだとか、それならばまだしも…――俺はユンファさんの膣内に居 る だ け である。
もちろん「どうしよう、どうしよう」と泣いているあたり、ユンファさん自身にさえもはやコントロールできることではないのだろうが、…かといって俺がコントロールできることでもない。
何なら俺は、ひとりでに善がってひとりでにイッているユンファさんに放置されている状態ですらある。
「……ぁーーまたいく…♡ いくいくいく…♡♡」
と言うユンファさんはいま、俺の上で内また気味に立てた膝を抱えると、その膝頭に額を押しつける。
なお彼のかかとが上がっている足、そのつま先は俺の腰の横のベッドを踏んでいる。そして彼がその三角座りの姿勢となると、俺の勃起は彼の膣内により圧迫される――股関節が閉ざされた結果、その骨に挟まれている膣もまた狭められたからである――。
……ということはその姿勢、逆にいえば彼にもより俺のものの形が伝わっているということだろう。
するとその姿勢を取っては、余計にこの絶え間ない絶頂、この地 獄 の 輪 廻 転 生 ル ー プ から抜け出せなくなるのではないか……?
「…〜〜〜〜っ!♡♡♡ ぅぁぁ…♡ ぁぁぁ…♡ ぁーー…♡」
「……ユンファさん、あの…多分、前のめりになったほうが……」
と俺は提案してみる。
ユンファさんが前に上体を倒せば、少なくとも俺たちのあいだには多少の隙間が生まれるはずだ。また少なくとも俺の亀頭が彼の子宮口あたりからは遠のく。
いやしかし、絶頂中に何を言ってもうまく聞こえないか、ましてやユンファさんは今混乱気味に泣いているし、と俺はすぐに思ったが――。
「…っあぁ、ぼくしぬまでいくかも、♡ いっしょういく、♡ …ぅ゛ーー…っ♡ もうやら、やらのに、らめ…っ♡ いく…♡ いく…♡ いくいく、またきた、いく…っ♡ またいく…っ!♡」
「……、…、…」
そもそもこの調子のユンファさんでは、まずそれが途切れるタイミングは訪れようもないな。一生や死ぬまではさすがに言いすぎだろうが(まあセ ル フ 快 感 責 め 状態では彼がそう思ってしまうのも無理はない)、それこそ彼が気を失うまでこうかもわからない。
そうだ…ユンファさんが動けないのなら――俺はぐっと腹筋を使って起き上がり、彼の膝を抱えている両手を掴んで、またゆっくりと背中をベッドへ下ろしてゆく。
「ほら、前のめりになって…? そうしたら多少は隙間が出来ますから……」
と俺がユンファさんの手を引きながらスローモーションに後ろへ倒れてゆくと、彼がふと弱々しい泣き顔で俺を見る。
「……あぁぁ……♡」
やはり体勢を変えることによって多少彼のなかで変動した俺の勃起が、彼の膣内をずるるとこすっているせいで艶めかしい声をあげたユンファさんだったが、…完全に俺の背がベッドに着くと、彼は弱々しい顔で俺を見下ろしながらも安堵したようにふわりと微笑む。
「…あ、でも…ほんとだ…。へへ…そんじゅ、おうじさまみたいだね……」
「…はは…、王子様、ですか…?」
可愛いが……この救済はとても童話にはできまい。
とはいえユンファさんは、俺が彼の手を引いて(セルフ快感責めから)助けたために、まるで今の状況の俺が「白馬の王子様」のようにでも見えたのだろう。
俺の首筋から鎖骨あたりにユンファさんの熱く濡れた片頬が押し付けられ、彼の熱い手が俺の指先をきゅっと握る。
「ぁー死ぬかと思ったぁ…」
「これでちょっとはマシですか…?」
「……うん…。まだ気を抜くとわからないけど…、ほんとに腹上死するかと思った……」
「…はは、まあ…そうですね…、……」
そうだな…まあ多少大げさだが、仮にあれでユンファさんが死んだとしたなら、彼はいみじくも俺の腹の上で死ぬこととなったのだろう…――いや、やっぱり死ぬとはさすがに大げさか。
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