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そのお仕置きとは一体如何 なるものなのか――。
ユンファさんは俺の頭上で俺の両手を押さえつけたまま、さらには俺の口にその片方の乳首を押しつけて、そして嫌味なほどわざとらしい、まるで幼子に話しかけているかのようなのんびりとした優しい調子でこう言う。
「お兄さん…君に、“悪いことをしたらお仕置きをするよ”って言ったよね、ソンジュくん…。さて君はそのとき、何て答えたんだったかなぁ……?」
「……、…」
あのときはまさかこうした――割と本当に俺にとってはお仕置きたらしめる――お仕置きだとは思い及ばなかった俺は、端からその約束を反故 するつもりで「ええわかりました」と余裕綽々 で答えた。…そう…(彼の言いつけに背いたなら)そのお仕置きを甘受するということを、俺はあのとき承諾してしまったのである。……俺は自分の聡明なサディズムを過信していたのかもしれない。
いや…まあ必ずしもその「お仕置き」とやらに応じる義務は俺にないが、しかしそれに応じないというのは、よほどの苦痛でもない限りはプレイ中におけるところのタブーである。――ましてやまだ何をされるのかの明確な内容はわかっていない。つまり拒むにはまだ今はいささか尚早だということだ。
俺がユンファさんの乳首をあてがわれている唇に悶々ときまり悪い沈黙を留めていると、彼は俺の返答を待つまでもなく――『もちろん自分があのとき何と答えたかくらいわかっているよな、ソンジュ…?』と俺に圧力をかけるように――優しいお兄さんぶったやわらかい声ながらも、こう断定的にいう。
「そうだね…ソンジュくんは、“わかりました。悪いことをしたら、俺はお仕置きを受けます”って答えたね…。ふっ…バーカ…♡ ――よーし、じゃーあ…まずは舌を出してみようか、ソンジュくん…?♡」
「……、…」
いや、ひとまずは流れに身をまかせてみようか――幸い(ま だ 、かもわからないが)彼のこの程度の「年上のお兄さま」的調子ならば、赤ちゃんプレイとまでは至っていないため、俺の嗜好にもさほどは反していない――これもまた一興、ましてや俺はそのうち反逆の機をも得られることだろう。
ということで……俺は彼の指示に従い、唇を控えめに開け、下唇の内側にかぶせるよう力ない舌先を出した。流れに身をまかせてみようか、とはいえ、その実これは俺のささやかな抵抗だった。――しかしユンファさんは俺のその抵抗をそれと察したものかどうか、「それじゃ駄目 …」と挑発的な笑みを含ませた声で俺を叱る。
「…もっと…。先っぽだけじゃなくて…もっと大きく、べーーって出そうね…?」
「……、…ふぁい…、……」
……結局俺のささやかな抵抗など簡単に退 けられ、俺はなかば自棄 になりながらも、彼に言われたとおり下唇が隠れるほど大きく、舌の根から押し出すように全体を伸ばした舌を露出させた。…要するに自棄となった俺は、限界まで自分の舌を露出してやったのである。
するとユンファさんは「ふふ…いい子…♡」と甘い声で俺を褒めたなり――限界まで伸ばしているために強ばった俺の舌の腹に、その乳首ごと胸板を押しつけ、ずり…ずり…と上下させる。
「……ん…♡ はぁ…勝手に舐めちゃ駄目だよ…? 僕がいいよって言うまで舌は出したまま、絶対に動かさないでね……、…ぁ…♡ ふふ…ソンジュくんの舌、凄くぬるぬるだ……♡」
「……、…、…」
俺の舌に粒だった乳頭がつぷと刺さり、こり…こりと俺の舌のはらをその粒が引っかいてくる。そしてややざらついた凝縮した乳輪、なめらかなつるつるとした胸の皮膚、俺の舌に上下に緩慢に擦りつけられているそれらは全てが熱く、かつほのかに桃の果汁の甘い味とその香りがする。――更にはそうずり…ずりと上下する彼の胸板につられて、俺の勃起のほうもまたにちゅ…ぬちゅと彼の膣内を浅く行きつ戻りつしている。
……悪くない。
「…ソンジュくん…? お兄さんの乳首…甘くて美味しい…? ふふ……♡」
「……、…」
まあ…まだこの程度ならば俺の嗜好の範疇からは出ていない。悪くない――いや悪くないどころか、かえってだんだん善 くなってきてすらいる。
……しかしユンファさんが「ねえ」と途端に冷ややかな低い声を出す。
「…ソンジュ、僕は君に美味しいのかって聞いているんだ。どうなの」
「……、…、…」
そうして彼はきちんと質問に答えろと俺を詰めるが……しかし俺は舌を大きく出したまま、それも今もなお彼の乳首をずり…ずりとそれになすりつけられている最中である。――まして「勝手に舌を動かすな」という彼の命令があっては、およそこれで俺が答えようとこの舌をしまったなり、俺には彼からの更なる叱責が待っていることだろう。
――俺が普段はサディストでありながらもユンファさんの前では時折マゾヒスティックな悦びを得てしまうように、普段マゾヒストの彼にもやはりサディストの側面があるようだ。
……要するに今俺が彼に強いられているもの、それとははしたなく舌をべーっと出したまま――もっといえば、無様にも今にも口端から唾液を垂らしそうなまま――また彼の乳首をそれに擦りつけられながら、舌ぶりのみっともない返答をしろ、という辱 めである。
あとで見ていろよクソ、……しかしここは大人しく応じてやろうではないか。
「……お…おいひいれふ……」
とこのように、全く締まりのない阿呆 みたいな弁舌の返答をした俺の口角からは、案の定唾液があふれてつーと俺の顎に伝ってゆく。
するとユンファさんは満足気に「ふふ…♡」と甘い含み笑いをもらしたが、しかし更に調子にのり、こう俺に更なる恥辱をあたえようと命じてくる。
「…そう…? よかったねソンジュくん…♡ じゃあ“ありがとう”は…?」
「……、…、…」
俺の片頬がビキビキと引き攣って波打つ。
……ともするとこれはユンファさんの復讐かもわからない。これというのは結局、普段俺がいじめてばかりいるユンファさんに今は俺のほうがやり返されている――普段俺が言っているようなセリフでやり返されている――のだが、なるほど、これはやられる側の立場に回るとなかなか癪に障るものである。…まあそれと気が付いたところでも反省する、態度を改めるつもりなど俺には毛頭ないのだが(何だかんだ文句は言いつつも、結局マゾの彼は俺にいじめられると悦ぶからである)。
……そして俺の舌に相変わらず、ずり…ずりとその凝った乳首や、舌ざわりなめらかな平たい胸を擦りつけてくるユンファさんが、
「あ・り・が・と・う…は? ソンジュくん…?」
とその低い神経質な声で俺を圧してくる。――マゾの癖に俺を虚仮 にしやがって……俺の片頬の波紋のような痙攣は止まらない。が、
「……ぁ、ありあほう…ごぁいまふ……」
……今のところはユンファさんに従っておく――いま一時的に優位に立ったつもりで俺を侮 っているこの美男子を、後ほどどのようにして泣かせてやろうか、などとふつふつ沸き立つ復讐心を腹の底に忍ばせながら――。
「…あはは…いい子…♡ いい子だね、ソンジュ…?♡ 君はいつもそうだったら可愛いのになぁ…、……」
すると多少なり果たされた復讐にか、随分機嫌がよい調子でそう言ったユンファさんは、「じゃあ、いい子にはご褒美をあげようね…?」とその胸板の上下の動きを止め、しかし俺の舌にその凝った乳頭をぷにと突き刺したまま、
「…さあソンジュくん…ユンファお兄さんの乳首、いっぱいお吸いなさい…?」
「……、…ふ……」
早くもやり返す好機をそこに見た俺は、ほくそ笑みながら舌をしまうと、まずはユ ン フ ァ お 兄 さ ま のご機嫌取りに「ありがとうございます」と小さい声で礼を申してから、そのお許しの通りに――彼の乳頭にすぼめた唇をあてがって、ぢゅーっと強く吸う。
「……うァ…っ!♡♡」
するとビクッ! と腰を丸めたユンファさんは、慌てて俺の唇からその乳首を浮かせ、
「だ…駄目ソンジュ、…は…♡ もっとやさしく吸って…? 敏感だって言ったじゃないか、もう…痛いから……」
とのセリフをその内容に反して色っぽい恍惚とした声で言う。――彼は痛みなりサディスティックな言葉責めなりで自分の細胞にもつ「マゾヒスト受容体」をくすぐられると、抗いきれずにマゾヒストに変貌してしまう性質をもつ。
「…ふ…これはすみません、興奮の余りついがっついてしまいました…。では今度は優しく……」
俺はユンファさんのその粒立った乳頭に舌先を伸ばし、まずはゆっくりとぴん…ぴんと下からその小さい突起を優しくはじく。
「……ぁ…♡ …は…♡ ん……♡ …んん…♡」
すると下から、ねちゅ…ねちょ…とかすかな音が聞こえてくる。それは乳首の愛撫に善がっているユンファさんの腰がくねり揺れているために、挿入されたままの俺の勃起と、きゅんきゅんと締まる彼の膣とが浅くも擦れあっているせいである。
……次に俺はそのハリのある小粒に舌先をねっとりと絡める。そのほの甘い凝 りは乳輪もふくめてややザラついている。
「……はあ…♡ ……ぁ、あぁ……♡」
こうして陶然としたなまめかしい声をもらすユンファさんはそう、乳首もかなり弱い。ましてや今は、確かに普段よりも乳首でよく感じているようだった(やはりもう何度かこの敏感な乳首と出会いたい)。
そして、そうしてねっとりと敏感な乳頭を俺の舌先にねぶられると、彼の細腰が一喜一憂するようにびく、と時折反れては、びくびくっと丸まり――また更に、俺の舌先がちろちろちろと速く何度もその乳頭を弾くなり、
「……ぁ…っ♡ …ッはぁ…〜〜〜っ♡♡」
その人の腰から背中がなだらかに反れ、彼の胸板がびく、びく、と小さく跳ねる。すると結果として俺の唇に彼のハリをもった乳頭がぷに、ぷにと何度か甘く刺さってくる。…次に俺の下唇にその乳頭がぷにと食い込んできたタイミングに、俺は彼の乳頭を唇でつかまえ、再びそれをじゅるる…と啜りながら口にふくんだ。
……唇でちゅぷ…ちゅぷと数回軽くしごき、ちゅ…ちゅ…と軽く吸う。
「……は、ぁ…♡ ん……♡ んん…♡ ぁ…♡ …乳首吸われると、子宮…きゅんきゅんして……は…♡ ……ッぁ…♡ きもちぃ……♡」
「……ふっ…、……」
先ほどあれだけ俺を挑発してきたわり、ユンファさんは乳首の甘やかな快感にとろけはじめている。
なお前のめりのユンファさんの子宮口に俺の勃起は届いていない。いや、仮に届いていたところでも、彼の子宮の収縮は俺には感じ取れやしないことだろうが、…しかし少なくとも、彼の膣内がその通りきゅんきゅんと甘い収縮をしていることは俺にも伝わってくる。
……俺はちゅう…と乳輪ごとその乳首に吸いつきながら、俺の口に吸いこまれて更に隆起したその乳頭の先をさりさりと舌先でこする。
「……ん…♡ ……ぁーきもちいい…♡ もっと乳首ちゅうちゅう吸ってぇ…♡」
「……、…」
仰 せのままに――俺はちゅうと吸っては弱め、ちゅうと吸っては弱め、吸うたびに一度先端をチロと舐めあげながら、彼の乳首にその吸引の甘い刺激を何度もあたえる。
すると俺の後ろ頭に片手を差し入れてきたユンファさんは、ベッドと俺の後ろ頭にはさまれているその手の指先で、俺の頭皮をやさしく揉むように撫でてきながら、優しい声でこのようなことを言う。
「…ぁ…♡ んふふ…可愛い、ソンジュ…♡ よしよし、いい子だね……♡ いっぱいお飲み……♡」
「……っ」
……俺は美男子のその慈しむようなセリフと指の愛撫に、興奮から目玉の奥の根が熱く強ばるのを感じ、たまらずぎゅっと両目をつむった。
なお俺のこの興奮の要因は「赤ちゃんプレイ」的なそれではない。
いや、それにかすめてはいるものの、ユンファさんのその慈愛の言動は俺に、彼が胸に抱く俺の子、二人の赤ん坊に自分の乳首をふくませて「可愛い…♡ よしよし、いっぱいお飲み…♡」と慈愛の眼差しをその子に向けている、その神聖な美しい慈愛の情景を連想させたばかりに、俺はそれにいたるに必 至 の 前 段 階 の 興 奮 を覚えたのである。
――これを物凄く下劣で平易な言葉に言いかえれば、俺はこの美男子を孕ませたい、このオメガ男に俺の子を産ませたいと興奮したのだ。
しかし……興奮のあまり夢中でその甘い乳首にしゃぶりついている俺を、ユンファさんがこうやたらと甘ったるい声で挑発してくる。
「……よちよちいい子でちゅねーソンジュくん…♡ でも、ごめんね…?♡ そんなに一生懸命僕の乳首を吸ってくれても…ユンファお兄さん、まだおっぱい出ないんでちゅー…♡ ――甘くて美味しいミルクを君に飲ませてあげられなくて、ごめんねぇ…?」
「……んぐ、…」
俺はハッと我に返ってうめいた。
案の定とでもいうか――いや、思えば先ほどからそうだったが――やはりそ ち ら の ほ う へ流れを持っていこうとしているユンファさんに、俺はハッとした。しまった…、もちろん、俺はいま間違っても赤ん坊になりきったつもりでユンファさんの乳首に夢中で吸いついていたわけではないが――むしろ彼の赤ちゃん気分というよりかすっかり彼の夫気分であったのだが――、しかし、俺のその秘めたる心情など当然客観的にみれば無いようなものである。
つまり今の俺というのは、(傍目から見れば)あたかもミルクを飲む赤ん坊のように夢中になって彼の乳首にしゃぶりついていた男、……屈辱だ。
……俺はふっと顔をそむける。
「あのですから俺、赤ちゃんプレイは…んっ」
「こら」
としかし、すぐユンファさんが俺の後ろ頭にある手をつかってごろんと俺の頭を転がし、また強引に俺の唇にその(俺の唾液まみれの)乳首を押しつけてくる。
「…駄目でちょーソンジュくん、お兄さんの乳首からお口離しちゃあ……ふふ、ククク…――し ょ ん じ ゅ はミ ル ク の 奇 跡 、起こすんでちょ…? はーいしょんじゅくん…♡ ならいい子で…お兄さんの乳首、いっぱいちゅぱちゅぱちようねー…?♡」
「……、ッグ……」
し ょ ん じ ゅ 、だと……ましてこの赤ちゃん言葉の甘ったるい声のセリフの途中にはさまれていた、喉をクックと鳴らす邪悪な男の笑いに、俺の恥辱はなお増してゆく…――(というか、ミルクの奇跡とは…?)
「……、……っ」
頬が引きつる。とんでもない人だ……とは思いつつ、俺はひとまずはおとなしく彼の乳首をちゅうちゅうと吸っておく。
「そうそう、いい子だ…♡ ん…♡ ほんとにミルク出そう…♡ がんばれがんばれ、しょんじゅくん…♡」
「……、…、…」
まあ今ユンファさんはある意味で無敵である。
オメガ排卵期の只中 にあっては多少ネガティブになってもすぐに楽観思考にもどり、今はほとんど常に楽しい気分でいるらしい彼は、それこそその期間中でもなければ、こんな恥も外聞 もないプレイを俺にサービスしてくれることはないだろう(いくら三日間ぶっつづけの赤ちゃんプレイでそのモードが抜け切っていないかもしれないとはいえ、普段の彼ならば億劫がってこんなことはやりそうもない)。
……いや、そうでもないかもわからない。もとより高飛車でプライドの高いユンファさんである。
だからこそ、俺への復讐という目的ありきであれば、ともすると普段通りの冷徹な愛想のない彼でも、こうしたことはしてくるかもわからないか。――いやサービスしてくれているとはいったが、これは過剰なサービス精神…というかやはりこれは、普段彼をいじめてばかりいる俺へのささやかな復讐なのだろう。…それにしてもやはりその方面には、俺の感性は快 い反応を見せない。
……興奮しなくはないのだが、何よりこれにノッたら俺のなかの何かが完全に終わるような気がする……――赤ちゃんプレイ…いわくプライドが高い社会的地位の確立された男ほどハマるらしいそれ…――思いあたる節がある俺は決して、決してこれ以上はその危ない領域に踏み込んではならない。
「……ふぅー…、……」
と俺が疲れたため息を鼻からもらすと、ユンファさんが「もう…」と可愛い子どものいたずらに呆れたような甘い声を出す。
「……ため息なんか吐 いちゃって…――もしかして…幾ら吸ってもお兄さんの乳首からはミルクが出ないから、ソンジュくんは疲れちゃったのかなー…?」
「……、…、…」
違う……俺はこの屈辱的な状況にほとほと疲れ果てているのだ。
しかし俺のその真実を知る由 もないユンファさんは(というか知っていたところで彼は余計にそれで俺を煽ってくることだろうが)、俺の後ろ頭を慈しむように撫でながら、俺をこのようにからかい続けてくる。
「…でも、それは仕方がないんだよソンジュくん…。だってね…お兄さんのお腹の中には、ま だ 赤ちゃんがいないから……♡」
「……、…、…」
俺はわかっていたが、俺の勃起は俺の誇りを裏切り、ビクンッと彼の膣内ではしゃいだ。
わかってはいる……ユンファさんのそのセリフは、およそ最中の血気盛んになった男をそそのかすためのそれである。
「……ぁ…♡ ソンジュくんのおちんちんがビクッてしたぞー…? ふふふ…♡ 今ならまだ間に合うのになぁソンジュくん…、ねえ…?」
とおもむろに俺の唇からその乳首を浮かせたユンファさんは、そのままゆっくりと上体を起こしてゆく。
そして彼は俺の上にまたがり直すと、赤らんだ甘い美しい微笑で俺を見下ろす。
「ソンジュくんの赤ちゃん…♡ を、僕に妊娠させるチャンスはまだ…――」
が、…しかしそこで彼のその美しい微笑は、途端に皮肉な鋭さを帯び、
「あぁごめんね、ハッ…クク、でもその前に……」
「……、…、…」
と言う美男子の、その上からの完全に俺を愚弄している笑顔に対し、俺はただそのムカつく笑顔を睨みあげているだけだ。今 の と こ ろ は ま だ …ね――。
「…そうだよね、ごめんごめん、ソンジュくんは赤 ち ゃ ん の 作 り 方 なんざ知らないもんね…? ふっ、しょうがないなぁ…――このユンファお兄さんが教えてあげようか…、……」
ユンファさんの伏し目がチラリとその顔と共に背後を確認し、彼は後ろに両手を着きながら、俺のうえでまたガニ股座りとなると――大胆にもその両ももをガバリと大きく開いて、いわゆるM字開脚をする。
……そうして彼はベッドに両足を着き、その胸板の上までまくられた黒いハイネックをまとう上半身を後ろへかたむけて、…いうなれば、彼はその前向きになった陰茎を俺のほうへ突き出して、
「……は…♡ …ぁ……♡ はぁ、…はは…♡」
と妖美な伏し目を下の俺へ向けながら微笑し、ぬちゅ…ぬちゅ…とゆっくりお尻を上下させはじめる。
……すると普段よりか赤味の濃い桃色の光沢のある亀頭の先端、その尿道口から垂れる透明なカウパー液の糸をまき散らしながら、彼の前向きの勃起がゆらんっ…ゆらんっとふり幅大きく縦にゆれて俺の目を誘う。
「…赤ちゃんはね…♡ コンドームなんてもんを着けていたら、ふ…♡ 出来ないのだよ、ソンジュくん…?♡ は、ぁ…♡ だから…♡ ユンファお兄さんの、この…とろとろの…♡ あぁ…♡ 危険日まんこに…っ♡ ――ソンジュくんのおちんちんを、生で挿れ、っないと……♡」
「……、……」
しかも……そのゆらんっ…ゆらんっと根本からを振れている勃起の下、小ぶりな白っぽい陰嚢のそのさらに下――ぐちゅん…ぐちゅん…と彼の桃色の膣口がくわえ込んでいる俺の太い勃起、光沢のある淡い薄桃に染められたそれの幹が、彼のその桃色の潤んだ粘膜の肉からあさい範囲見えてはまた呑み込まれ、見えてはまた呑み込まれるその様が垣間見える。それがなんともエr……か、官能的である。
「…生で…ぐちゅぐちゅ、って…♡ ソンジュくんのおちんちん、僕のおまんこのなかでいーっぱい擦って…♡ あ…♡ いーっぱい、気持ちよくなって…♡ ――僕の卵子が待っている子宮に…ソンジュくんの、ザーメン、…いぃっぱい、ぶっかけないと……♡」
「……、…」
俺は両眉を力ませながらつーー……とゆっくり、徐々に瞳を上げてゆく。
縦に大きくゆれる無毛の汗ばんだ白い恥骨、割れた腹筋があさく浮いている筋っぽい平たいお腹、そのお腹についている丸いちいさいおへそ――赤い縄の痕がついたみぞおち上、赤らんだ小さな二つの乳首、あわい薄桃色にそまる汗にぬれた胸板のあさい膨らみ、胸中央の赤い縦線、胸の上に未だなおとどまる黒いハイネックの裾、…――恍惚とした眼差しで俺を見下ろす美男子のその切れ長の目、しかし俺を捉える、その澄んだ紫の瞳の眼光ばかりは獣のように鋭い。
「赤ちゃんは…ぁ…♡ 出来ないのだよ、青年…♡ それは何故かというと…ん…♡ ――お兄さんの子宮のなかにある、…は…♡ 卵子と…君の、精子が、…は…♡ 出会えないからだ…♡ ふふふ…♡」
そしてユンファさんが「わかりましたか…?」と、やけに綺麗なやさしげな微笑をくいと傾け――すると唐突に、まるで俺の精液を絞りとろうと、もっといえば、強引に絞りとった俺の精子で妊娠しようとしているかのように、彼のお尻の上下の動きがぱちゅぱちゅぱちゅとあさく軽快に速まる。
「……あっ♡ あっ♡ あっ…♡ きもちいい、♡ 君に孕ませられると思ったらきもちくて腰とまらない、♡ あっ…♡ あぁ…っ♡ あ…っ♡」
となまめかしく苦悩する美男子の顔、ユンファさんはやや竦 められた肩に薄くあけた赤い肉厚な唇を寄せつつも、やはりその速く上下する腰のスピードは落とさない。
「あっ…♡ だっだから、…ユンファお兄さんに、君の赤ちゃんを産んでほしい、なら…♡ んふ…今すぐ、ゴム…外そ…?♡」
つー…と俺を誘惑する甘い横目で見やるユンファさんが、その赤い唇の端をニヤリと吊り上げる。しかしふと物憂げに目を伏せた彼は、依然としてぱちゅぱちゅと俺の恥骨の上でそのお尻を軽快に弾ませながら、切なく眉をひそめる。
「…あっあ…っ♡ ユンファお兄さんと生でえっちしよ、ソンジュくん…っ♡ …っお兄さんの危険日まんこに中出しして、♡ っ僕生で欲しいの、♡ ソンジュくんのおちんちん、生で欲しいの…っ♡ そ、ソンジュ、くん…っソンジュ、ソンジュ…っ♡ ユンファお兄さんのこと、孕ませてぇ…――っ!♡♡♡」
「……チッ…っ悪い人、……」
俺は堪らずむくりと上体を起こした。
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