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むくり、俺がぐっと腹筋をつかってしたたかに上半身を起こすと、ユンファさんはまるで蛇が飛びかかってくるような素早さで俺のうなじに両腕を回し、ぐっと俺の首を抱きよせながら、まるで俺の唇を捕食するように一瞬で――その一瞬に目を瞑った彼の美しい顔が見え――傾けた赤い肉厚なその唇で、俺の唇をあむあむと貪食 してくる。
「……んっ…」
俺はその獣の衝動的な強い揉みしだくような熱い唇に鼻でうめき、……しかし次の瞬間には彼の唇の傾きとは反対に唇を傾けると、目をつむり、ほとんど対抗するようにその唇にやり返す。――二つの唇が入り乱れて押しあうようにもつれ合い、そのうちにどちらが先攻だったことか、お互いの口内にお互いの舌が侵入しており、二つの組みあわされた唇のなかでにゅるにゅると唾液に濡れた舌が絡まりあう。
「……んうっ…♡」
とユンファさんの鼻から抜ける上ずった声が聞こえた。……先ほど手錠をされていても可能と知った俺が、彼の細い腰をがっしりと掴み、ぐっとその人の子宮口を突き上げたからである。
そのままぐっぐっぐっぐっとあえてその人の弱い子宮口、その付近の溜まりばかりに亀頭を押しこんでは引いてゆくように、そこを何度も何度もぐりぐり、ぐちゅぐちゅと太い亀頭でこする。
「…んっ…!♡ …んん、♡ ん…っん、♡」
するとユンファさんは、俺の恥骨の奥から勃起の先端にいたるまでこみ上げては放たれる、その獣の交尾の衝動そのままの俺の動きを受容する代わり、俺を攻めたてていたその唇の能動性を失う。「…ん…っんぁ、♡」と結局俺の唇から離れていった彼の唇は、いや、彼は俺の首にぎゅうとその両腕を巻きつけて俺にしがみついてくると、俺の肩のうえにその顎をのせる。――そしてユンファさんは、その子宮頸部 に俺の亀頭を突き入れられるたび、俺の耳もとで甲高いみだらな喘ぎ声をあげる。
「…ぁ…っ♡ あ…っ♡ あ…っ♡ あ…っ♡ …ぁ、あ…っ♡ ………っぁあだm…♡ ぃ、いく…いっちゃう、イッ、♡ ……ぁぁいっちゃう、♡♡ いっちゃういっちゃういっちゃう……ッ♡」
「……ふっ……」
先ほどまではさんざっぱら俺をいじめていた癖に……この年 上 の 綺 麗 な お 兄 さ ま は、俺が能動性を取り戻すなり、若干マゾヒスティックな受動性をその心身にあらわした。…ゆさゆさゆさとその逆三角形の上半身を俺の恥骨にゆさぶられ、まるでその甘美な振動に耐えるためというように両腕で俺の首にしがみついてきているばかりか、彼はその細長い両脚の脛 を俺の腰の裏でクロスさせ、…要するに彼はその脚でまで俺にしがみついてきているのである。
……愛しの美男子の隠しきれないマゾヒスティックな嬌態 、それには俺の「サディスト細胞」が疼き、たちまち俺の全身の無数のそれが沸き立つ。
「……イッちゃ駄目……」
と俺は彼の耳にささやきながら動きを止めた。
……するとユンファさんが「え…?」と落胆する。そして彼はイきたい、イきたいという焦燥を俺の手のなかでくねるその腰に流露させながら、媚びた甘い声で俺の耳にこうささやいてくる。
「や…いやだ…。ィ、イかせて…、…お願いソンジュ、イかせて……?」
「…イかせてもらえるなら何でもする…?」
こうして交渉を持ちかけた俺に、「何でも…?」と色っぽい上ずった声でくり返したユンファさんが、ふふ…と俺の耳をその妖艶な含み笑いで誘惑的にくすぐってくる。
「…お兄さんに何をしてほしいのかな、ソンジュくんは…?♡」
「…手錠を外してください。」
「……、…」
しかし、俺の解錠要求にはだんまりのユンファさんは、ややあって俺の耳もとで「やだ…」と甘ったれた声で言う。――俺はつかんでいる彼の腰を前後にちいさく揺らし、それによってくちゅくちゅと彼の子宮口、もう何度か俺に突かれたなり天まで押し上げられてしまうその熟 れた子宮口を、わずかな幅でこすってそそのかす。
「…ユンファお兄さんはイきたくないんですか…?」
「…ん、♡ …んん…♡ ぃ、イきたいぃ……」
すると焦れに焦れたユンファさんが、わがままを言う子どものような甘ったるい嬌声でそう言う。そのさなかも彼の柳腰はなまめかしい揺蕩 の動きを止めない。
俺は普段であればまず聞けることもないだろう、冷徹な美男子のその甘えきった声ににやけながらも――本当に可愛すぎるが――、かといって、この交渉における妥協は一切するつもりがない。
……俺は彼の耳もと、あたかも優男のやわらかい低いささやき声で、しかし断固このようにゆずらない。
「…じゃあ手錠を外して…? そうしたらたっぷり…何度でも、どこででもイかせてあげますから……、…ね…?」
「…嫌だ」
しかしユンファさんのほうも断固ゆずらない。
……俺は一旦彼の腰から両手を離し、俺の腹にややもたれかかってきている彼の熱い勃起の上部を表からにぎる。そして、ぬるぬるとしたハリのある亀頭に親指の腹をおき、そのままこすこすと浅く皮をずらすようにしごく。こうして握ってしごくと、その亀頭も幹をしごく俺の手のひらの動きにともなって、俺の親指の腹にぬるぬると浅い範囲こすられる。
またにちゅにちゅと、カウパー液にたっぷりと濡れそぼつ浅い皮が、その下のカリ首とこすれて音を立てる。
「……あ…あ、♡ んっ…♡ いや…♡ ねえ、違うぅ……ッぅん…奥…♡ 奥、もっとおちんぽで突いてほしいの……」
とユンファさんは切ない甘い吐息でそう言うが、実際当然の快感は得ているために、俺の勃起を咥えこんだままの彼の膣はぎゅ…っぎゅ…っとしばしば力強く締まっては緩まりきる前にまた締まる、こと陰茎とつながっている前立腺の輪はひときわ強く収縮し狭まっては多少ゆるみ、また狭まって俺を食いしばる。またそれにともなって、彼のその板のような下腹部もまた奥まるようにビクッ…ビクッと痙攣している。
「……奥って…?」
しかし、ちゅくちゅくと彼の勃起を扱きつづけながら、俺は彼の耳にそうとぼける。――するときゅ!ー…と、今にも絶頂しそうに持続的に膣内を奥まらせるよう締めるマゾヒストの彼が、やけに可愛らしい恥ずかしそうな上ずった小声で、
「……ぉ…おちんぽじゃなくて…おまんこの、奥…、子宮口……ポル、チオ…――今は僕、おちんぽじゃなくて…子宮でイきたいの……」
「……子宮でイきたい……」
俺はそのセリフに興奮したばかりに、自分の口で味わうようにそれを繰り返した。
「…はぁ……そう、子宮…♡ …んふふ……♡」
「……、…」
しまった、と俺は思った。
ユンファさんのその含み笑いは、あきらかに俺の興奮を弱味として掌握するつもりの妖艶な、しかし狡猾 な男のそれだった。――案の定彼は俺の耳に、このようにゆったりとした魔性のささやき声で言う。
「……妊娠しやすいように準備……♡ ソンジュくんの精子が来てくれるのに備えて、いっぱい子宮でイっておかなきゃ…♡ …ふふ…だからお兄さん、子宮でいっぱいいっぱいイきたいの、ソンジュくぅん…♡ お願い…?♡♡」
「……、…、…」
いや…俺はま だ 、――いやいや、俺は今きちんとスキンを着用している。
なお、オーガズムを迎えることで妊娠しやすくなる、というのは一見俗っぽい話のようにも思えるが――しかし確かに膣や子宮、卵巣をもつ人々は、一説によるとオーガズムによって妊娠の確率が上がるとも言われている。
いわくオーガズムをくり返すと子宮が下がってくる(膣の縦の距離が縮まる)ため、それによって、精液の噴出する亀頭先端と精子の入りこむべき子宮口との距離が縮まる――すると単純に、卵子へむかって泳ぐ精子が卵子にたどり着くための距離が短くなる――ほか、オーガズムによって妊娠の確率を高める(精子の動きを助ける)分泌液が大量に出るので、必ずしもオーガズムを迎えなければ妊娠できないということではないにしろ、一応は医学的にもオーガズムと妊娠の相関性は解明されつつある、らしい。
すなわちユンファさんは、無駄かもそうじゃないかもわからない知識が豊富な小説家の俺の、その知識量を見越したうえで――俗っぽい冗談や単なるまことしやかな煽り文句ではなく、それには確かに医学的な裏付けはある(らしい)と知っている俺が、それで余計に興奮するとわかっているうえで――、ああしたセリフを俺の耳に囁きかけてきたわけである。
……とはいえ…もちろん今の俺は防御の安心感、それすなわちスキンを着用しているという事実を有しているため、――ドクドクと俺の心臓のほうは男の本能に素直に衝動的になってはいるが、――いや、……
「…は…♡ あ…♡ あ…♡ あ…♡ ソンジュ…ソンジュ…♡ あ、気持ちいい…♡ ソンジュのおちんぽ、気持ちいい……♡」
「……、…」
ユンファさんは俺が動くまでもなくあさい縦揺れをはじめた。――俺は瞬時にあ る 報 復 を思いついた。
まずゆるく握ったままだった彼の勃起から手を離す。そして彼の浅い上下運動をくりかえす細腰を両手でつかんだ。俺は腰を掴んだだけである。――ただし、
「…あ゛っ…!♡ っい、…んうぅ゛…っ♡」
ユンファさんは甘さのあるうめき声をもらしながら、俺のその「報復」によって動きを止めた。
……俺はユンファさんの腰をつかむにおいて、自分の両手首にかかる銀の手枷と手枷のあいだをつなぐおよそ十センチほどの銀のチェーン、そのチェーンでわざと彼の勃起をすくい上げた。…すると裏筋から持ち上げられた彼のそれは、浅くとも上下するたび硬質なアルミのチェーンに裏筋をこすられたので、おそらく彼は痛みを覚えて止まりざるを得なかったのだろう。
たとえばフェラチオをされたときにも、硬い歯が当たれば棘に刺されたような痛みを感じるように――人によっては、また当たった場所によっては激痛を感じるように――、硬質なチェーンもまた、勃起したそれには棘のような脅威である。
俺はユンファさんの勃起を押し上げるチェーンを外さないまま、はぁ、はぁと痛みに怯えたような引きつった呼吸をくり返しているその人の耳に、こう悠々としたやわらかい声でささやく。
「……勝手に動くからいけないんです…。俺は手錠を外してくださらないなら、貴方をイかせないと言ったでしょう…?」
「…はぁ、…いやだって…折角今日は僕がソンジュをめちゃくちゃに出来るチャンス…」
「なるほどね…やっぱり報復ですか……」
まあそれをされるに思いあたる節はありすぎるほどあるが、…俺が呆れたなり、ユンファさんは「いや、そうじゃないけど…」と不満げな掠れ声で言い、もごもごときまり悪そうにこう続ける。
「…それだけじゃないというか、それもまあ…正直、無くはない…みたいな……」
「…ふ、それはどうだか…。……、……」
俺は目を伏せてやや考える。
……それからふと思いつきのまま、ユンファさんのその耳たぶを前歯で甘噛みした。
「……っん…♡」
すると官能的な声をもらしつつぴく、とした彼に、しめしめと俺の舌先はその熱い耳たぶをチロチロとくすぐってから――次に耳の内部の複雑な形状をした溝 にはまり込み、俺はその迷路をこの舌先でねっとり…ゆっくりとなぞる。
「…は…っ♡ …ぁ、ぁぁ……♡」
「……はは…、……」
俺がなぜユンファさんの耳を愛撫しはじめたか?
……もともと耳も彼の弱い性感帯のうちの一つなのだが、彼はこうして耳の愛撫にぞくぞくと感じているとそのうちに、普段でも大なり小なりその意識を恍惚ととろけさせる。
それは俺が推測するに――。
おそらくはぐちゅぐちゅ、くちゅくちゅという、鼓膜が舐められているのかというほどよく聞こえるその淫らな音が、耳のなかどころか頭のなかいっぱいにこもるよう反響することや――また耳自体彼の性感帯のうちでも殊 に弱い場所の一つであること、それこそ日によっては耳の愛撫だけ、まれに俺がその耳に低く囁くだけでも昇天することさえあるので――頭の中に反響するくちゅくちゅという音で否が応でも耳の快感に集中してしまい、そして耳の快感に集中するとそのいやらしい音にも集中してしまい、結果として思考がにぶるほど意識が恍惚と遠のいてゆく……。
……といったような理屈で(多分)、とくにユンファさんは俺に耳をねっとりと責められると、普段でも蕩散 状態に陥りやすい。
ということで、俺の舌先はくちくちくちとユンファさんの耳の穴をこじ開けようとほじくる。もちろん実際には不可能であり、俺にもそのつもりはないが、耳が弱い人はその「耳の中に侵入されてしまうかも」というのにドキドキする場合もあるのだそうである。
……少なくともユンファさんはそのタイプだ。
「……ッ♡ …は、ぁ…♡ ぁぁ…♡ ァ…♡ や…んぅ、♡ …んぅぅ……♡」
ビクンッと怯えたように肩を弾ませた彼の耳の、そのぞく…ぞくぞくぞく…という官能的な小刻みな振動が俺の唇に伝わってくる。――きゅん、きゅんとその人の膣が俺の勃起を甘噛みし、ゆらゆらと俺の腿のうえでそのお尻が極小さく前後する。
「……ふふ、可愛いねユンファさん……」
俺がし た り 、こう男の甘い声で囁くと、
「……は…――♡♡ …ンぅぅ……♡」
甘ったれた嬌声を鼻からもらすユンファさんの膣が、きゅんきゅんきゅんと素早い甘い収縮をくり返す。いけないいけない…手錠を外してくれるまでは彼をイかせないつもりだったのだが、どうやら俺は声を含めた耳の愛撫で彼を甘イきさせてしまったらしい。
……いや、しかしこれはむしろよかったかもわからない。甘い絶頂中の彼の意識は余計にとろけていることだろう。――俺は彼の耳に唇をあてがったまま、年下の彼氏が甘えるような媚びたやわらかい声でこのようにささやく。
「…ユンファさん…? 俺、ユンファさんのことぎゅーって抱き締めたいな……――それなのに、手錠なんかがあったら貴方を抱き締められないよ…。…だから手錠…外してくれる…?」
「……は…♡ …は……♡ ……、…♡♡」
すると「年上のお兄さん性癖」の弱いところを、俺の「可愛い年下」の調子にくすぐられたユンファさんは、俺の唇があてがわれたままの耳をコク…と縦に小さく動かす。要するに彼は『わかった、手錠を外してあげる…♡(ソンジュに抱き締められたいから…♡)』と頷いてくれたのである(なお俺のこの推察はもちろん俺に都合よく脚色されている)。
「……ふふ…、ありがとう、ユンファさん…――。」
――上手くいった……俺は彼の耳に触れたままの唇をほくそ笑ませる。
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