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              「……さて…、ユンファお兄さんは、ソンジュくんにいっ…ぱいいじめられたいんでしたよね…?」    と俺が改めて念を押すなり、ユンファさんは泣いているとも笑っているともつかない(かす)みがかった顔をコクと縦に振った。しかし、次にこう言う彼の声ばかりは悔し涙に濡れた嗚咽まじりである。   「…も…もう全部ぐちゃぐちゃ、…もういい、…もう僕のこと、いっぱいいじめて、…ぶっ壊してぇ、…」   「わかりました、愛しい貴方のお望みとあらば……」    俺は「さて…」とユンファさんのその細腰(さいよう)を掴む。  するとその腰をびく、と怯えさせた彼は、その切れ長の目をとろめかせて俺を見下ろしながら、哀艶(あいえん)の不安げな泣きそうな表情をその美貌にあらわす。俺のほうにこの度の主権が完全に渡ったと自覚したのだろう。しかし俺はまだ突き上げない。   「……ユンファお兄さんは…どこが弱いんでしたっけ…? ふふ、俺ときたらうっかりど忘れをしてしまいました…。教えてくださったそこをたっぷりといじめてあげますから、きちんと俺に貴方の()()を教えてください」    と俺は言うが、もちろん俺が幾度となく抱いてきたユンファさんの肉体の弱点、彼がことによく感じるその性感帯はもとより、その性感帯をどのように責めれば彼が身もだえるほど善がるのか、俺は彼の肉体のその特性をつぶさに把握している。  ……とはいえ、今から責められる(いじめられる)性感帯(弱点)をわざわざ俺に申告させられるというその(みじ)めさは、もちろんマゾヒストのユンファさんを悦ばせるのである。   「……はぁ…♡ はぁ…♡ はぁ…♡」    ……このようにして、とろんとした目で俺を見下ろすユンファさんは上ずった吐息で喘ぎながら、俺をおさめた膣内をきゅんきゅんと甘くときめかせている。  しかし俺がほくそ笑んだその直後、…俺の想定とは外れた場所をユンファさんは「ここ」とその「弱点」を示した。   「……は…♡ ……こ…ここぉ…♡」    と彼ははぁはぁ危ういほど興奮しながら、おもむろに薄いニットの黒ハイネックの裾をまくり上げ、……ほのかな薄桃にそまった胸板の上までその裾をたくし上げると、その胸板の中央に、そして胸板下に縄の生々しい赤い痕がのこる胸――そのほの白い胸板にはなお鮮やかに映える、ローズレッド(なお「ローズレッド」とは赤薔薇(ばら)の色ではなく、わずかに紫がかった赤味の濃いピンク色)の乳首をかるく突き出して、自分の弱点は「ここ」だと示したのである。    しかもユンファさんは――俺のさらなる加虐をみずから欲するように、いやそれのみならず――眉尻を下げながらもうっとりと下の俺へ微笑し、   「…ソンジュくん…♡ ゅ、ユンファの弱点は…♡ この…モロ感雑魚(ざこ)乳首です…♡」    なんて…彼のその興奮に上ずった吐息っぽいセリフには、わざわざ「(年下の)ソンジュくん」に対して「ユンファ」と自称するという、自身の被虐性愛を自分で極めてゆくマゾヒスティックな自虐がある(もちろん「モロ感雑魚乳首」もそうだが)。――いつもそうだが、もうここまでくると彼はほとんどの場合、事の終わりに至るまで俺に服従する。   「……、へえ…このいやらしい乳首が、ユンファさんの弱点なんですか…?」    と俺は両手をその人のその赤らんだ乳首に伸ばし、その粒だった乳頭を両方人差し指の側面でピンピンピンと弾く。――すると「…ァ…っ♡」と苦悶げに眉をひそめたユンファさんは、ビクンッ…ビクンッとその平坦な白い下腹部をへこませるように、腰から上を跳ねさせて感じている。  ……が、しかしこうしてノっておいてなんだが、   「……、…」    その実俺が期待していた弱点、俺が個人的にユンファさんに申告してほしかったその彼の弱点というのは――俺の両手が彼の腰をつかみ、突き上げの準備をしていたとおり――、普段でも(こと)にそこを突かれると減らず口を叩けなくなる、そう…彼の一番の弱点である子宮口、そしてその付近の精液溜まり、つまり「ポルチオ性感帯」である。    そもそも挿入を終えている男が能動的に動きたい、との己れの欲望に従順であるのは当然であり、俺はマゾヒストの彼を歓ばせつつも、心置きないその場所への平責めの流れを作りだそうとしたのだが――しかし、かといってユンファさんのこの申告はある種の「逃げ」、つまり自分の一番弱いところを俺に申告しないで善がり狂うことから逃げた、というわけでもないのである。  確かに今の彼の乳首はこの赤らんだ色にも見るように、ここは今は本当にこと敏感になっている「弱点」で間違いはないため、サディストの俺でも「逃げるなよ、違うだろ」という矛盾したことは言えない(ましてや俺は弱点を教えてというのに「一番」というのをつけなかった)。  しかも――俺がそのハリのある乳頭の先を、両方爪先でカリカリとやさしく()いてやると、   「……ァ…っ♡ ぁ、ァ…♡」    ビクビクビクッと下腹部を弾ませたユンファさんは、きゅっと悩ましげにその美しい切れ長のまぶたを閉ざし、確かに普段よりも甲高いか弱い声を発しているばかりか、ぎゅ、ぎゅぎゅ、とその膣内でまで歓んでいる。たしかにこの善がりようは事実「弱点」といって相違ない。  ……なお彼は胸の上までまくりあげたその黒い裾を、両手できゅっと軽くにぎって下がらないように押さえており、そしてそのゆるい拳に赤い半開きの唇を寄せ、つまり斜め下へその顎を引いている。――そのポーズは何か可憐である。俺は親指の腹でそのハリのある粒を両方(まる)くころがす。   「……ァぁ…♡ ァ…♡ んぅ…きもちぃ…♡ おちんぽも…子宮も…、きゅんきゅんする……♡♡」   「……ん、かわい…、……」    だが正直にいうと、これはこれで悪くはない。  ……この美人の普段の可憐な無垢そうな薄桃のそれよりも艶めかしい様相となったこの赤い乳首、そこを責めれば責めるだけ中性的ときこえるほど甲高い声を発して善がる美男子、――やはりいずれ俺は必ずこの美人の乳首をもう何度かこの状態にしよう。とまた決意を固くする俺である。  彼の楚々(そそ)とした薄桃を艶やかなローズレッドに染める過程の喜びをなんとなし今にも感じ、するとにわかにサディスティックな興奮をあおられた俺は、凝縮されたその乳頭をぎゅっと両方、やや力をこめて指先で押しつぶす。   「…ッん゛、♡♡ ッアぁ……っ!♡♡♡」    すると彼の下腹部がビクビクビクと跳ね、そして痛がっているように険しくなったその愁眉(しゅうび)、ぎゅっと閉ざされたまぶた、しかしその普段よりも甲高い甘い嬌声――俺はさらに指先に力を込めたままなかば回転させ、その乳頭の両方をぎゅーっとつねってみる。   「…んァ、♡ ぁ、♡ ……っんん、♡ ぅ…ッ!♡♡」    苦しみ喘ぐユンファさんの、その斜め下へ伏せられた顔にはなまめかしい苦悶の表情が浮かぶ。――それも彼の内ももが俺の腹の上に乗りあがり、その腿を伏せたまま、たちまち彼は内また気味にその両膝を密着させた。…つまりイきそうなのである。  ……俺は最後の追い込みに、中指で彼の乳頭を両方すばやくピンピンピンと弾いてゆく。   「…ァ…♡ ぁぁ…♡ ァ…ぁ…♡ ぁンイく、♡ ぁ…ィ、♡ …っちゃぅ、♡ ……――ッ♡♡♡」    するとほどなくして、…俺の上で両膝をあわせた下半身をぶるぶると震わせたユンファさんは、とぷ…とぷ…と少ない量を射精する前向きの勃起を恥ずかしげに隠すように、それの亀頭前に両手をかざした。  ――ぶるぶると俺の鼠径部のうえで彼のお尻が力み震えながら、小さい前後の動きを繰り返している。  俺の恥骨のうえにのった彼の陰嚢は彼の勃起へ向けてきゅーっと引きあがりながらうごめき、ぎゅ…ぎゅ…と彼の膣内、ことそのリング状の前立腺が力強くすぼまっては広がる。   「……はぁ…、何隠しているの? ちゃんと俺にイッているおちんぽを見せないと……」    と俺は自分の勃起をかくす彼の両手を掴んで退()ける。抵抗はなかった。合わせられた細長い白い両もも、無毛のなま白い恥骨に生えた根本から、むく…むくと首を縦に振っている彼の前向きの勃起は、その濃い桃色のつやのある亀頭の尿道口ににじませた白濁液を、ぽた…ぽと…とその腿のあいだに滴らせている。   「ザーメンが垂れていますけれど…、はは…まさか本当に乳首だけでイッてしまったんですか…? 本当に雑魚乳首だな……」    などと…とりあえずサディストらしい呆れたふりの言葉責めをしておく俺だが、今は実に大変もどかしい思いをしている。――彼の膣内が締まったりうごめいたりしているだけの快感は、俺の恥骨に男の衝動性を溜めてゆくばかりであり、俺は率直にいってもうそれを思いっきり放出したい。   「……はぁ…はぁ……♡ 君にざこって言われるの…んん…♡ 感じちゃう…♡♡ へへ……♡」    とはぁはぁとまだ息を切らしているユンファさんが俺に罵られてなお悦びの微笑を浮かべる。しかし、彼はまるで俺のもどかしさを(さと)ったかのように――それもまだ、その膣内にきゅっきゅと甘い収縮の余韻を残しているなかで――俺の下腹部に両手を着き、   「……でも…僕の一番の弱点は…♡ ぁ…♡」    合わさっていた太ももをやや広げて俺のわき腹に内ももを着けると、そのお尻をゆっくり、ぱちゅん、ぱちゅんと弾ませるようにして上下させはじめた。彼の黒いハイネックの裾はその人の胸の上にとどまっている。…ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅと俺の亀頭が彼の最奥の溜まりに入り込むたび、濡れたやわらかい肉がかき回されているような音が立つ。   「……ぁ…♡ あん…♡ ここ…♡ …っここ…♡ ここが僕、一番弱いの…♡」    と涙目で微笑しながら俺を見下ろすユンファさんは、俺の亀頭が自分の子宮口をずりっとこするたび「ここ」と喘ぎ声でいう。 「……ふふ、…ここって…?」    この機を逸さず、俺は彼のその白い柳腰をつかむ。  ただしまだ動き出さない。――俺が「ここって?」と尋ねたなり動きを止めたユンファさんが、自らお尻をずりずりと前後させ、自分のこりこりとした子宮口に俺の亀頭をこすりつけてくるからである(たまらなくいやらしいのでこれで動いてしまうのはもったいない)。  ……ユンファさんはそうしながら、俺のことを切ない濡れた眼差しで見下ろしている。   「……ん…♡ ん…♡ こ…ここ…♡ わかる…? ソンジュのおちんぽの先にこりこり当たってる、ここ…♡」   「…はは…それはわかるけれど…、ちゃんとはっきり言ってくださらないと……」    すると珍しく俺を見下げるその眉目(びもく)含羞(がんしゅう)の困惑を漂わせたユンファさんは、「だから…」と斜め下へはにかんだようにその紫の瞳をそらす。   「……ぉ…奥だよ…、一番、奥……♡」    と言いながら彼はおもむろに両足をベッドに着いてゆき、また同時に後ろへ両手を着いてゆく。  そしてその生白い細長い内ももを左右に大きく開いたユンファさんが、やや速く腰を浮かせては沈めるようにして、その前向きの勃起を根本からぷるんぷるんと振りまわしながら、俺の太い勃起が刺さった桃色の艶のある膣口をぐちゅぐちゅと上下させる。   「…あ…っ♡ あ…っ♡ あ…っ♡ ここ、♡ ここが一番よわ、♡ あ…っ♡ 奥…一番奥、♡」   「…はは、どこ…?」   「……ッ♡ も、だ、だから……、…こっここ、♡♡」    と恥ずかしげに目をつむったユンファさんの片手が、自分のまるいおへその下にあてがわれる。彼の腰は相変わらずぐちゅんぐちゅんと上下をやめない。   「…ここ…っ♡ …し…子宮……♡ ポルチオ、突かれると…僕弱いの、♡ っあ……!♡ ィ、♡♡ ……ッ!♡♡♡」    なまめかしく眉をひそめたユンファさんの腰がビクンッと跳ね、絶頂の収縮に彼のお尻がずり、ずりと揺らめくように前後する。彼は「子宮」やら「ポルチオ」やらと少々生々しい単語を口にしたことで興奮したのだろう。そしてビクッビクッとへこむ自分の下腹部を片手で押さえたまま、肩口に寄せた赤い唇で「ぁ…子宮いってる…♡」とうわ言のようにつぶやいている。   「…もうイッちゃったんですか…、ふふ…――“ユンファの弱点はポルチオです、だからポルチオをいっぱい突いていじめてください、ユンファはポルチオを突かれるとこうやってすぐにイきます”…」    俺がこのように淫語を言うようそそのかすと、彼はいまだ絶頂の余韻に酔いながら、ぽーっとした表情で俺のそれに従う。   「…ん…♡ ゅ…ユンファの、弱点は…、はぁ…ポルチオです…♡ だから…僕の、ポルチオ…いっぱいおちんぽで突いて…いじめてください…♡ ゆ、ユンファはぁ…、ポルチオ…突かれると、…すぐに、イッちゃいます……♡」   「……うん、エロい…」    うっかりと俺は身も蓋もないことを独りごちた。  俺のそのひとり言がユンファさんに聞こえていたのかどうかは定かではないが、ただ――俺が「いっぱい突いて」との言質(げんち)を得たと動き出そうとした、その前に――、彼はまたその勃起をぷるんぷるんと振りまわしながら、先ほどよりその上下の動きを加速させて、ぱちゅぱちゅぱちゅと浅くも速く俺の恥骨でそのお尻を弾ませる。さらにユンファさんは、そのさなかにも自分でお腹のうえから子宮を撫でまわしている。   「…あ…っ♡ あ…っ♡ あ…っ♡ ああきもちぃ、♡ ここ、♡ ん…っポルチオ、♡ ポルチオ好き、♡ すき…っ♡ 僕、ポルチオに届くおちんぽ大好き、♡♡」   「……っん゛…ぇ、エロい、エロすぎ……」    ――俺は今アホである。  ユンファさんのこの乱れよう、…考えようによっては単なる()()()()()()ともいえなくはないのだが、少なくとも俺の勃起に「大好き♡」と切々言いながら泣いている俺の愛する美男子、…エロすぎる。   「…だって粗チンじゃ届かないんだもん、♡ 僕の子宮、ソンジュのは届くの、♡ ここっ…♡ 僕ここ好き、♡ すき、♡ あっあぁぁ…っ♡ すごいとどいて…ぁーきもちぃ、♡」    とユンファさんは肩口に寄せた苦悶の表情をこてんともう片方の肩に寄せ、ずちゅずちゅずちゅとお尻を上下させながら、ぐぐぐ…と片手で押さえている下腹部をへこませたり、ビクビクと突き出したりと、とにかく俺の亀頭が子宮口にあたるたび善がっている。   「…あん…っあ、♡ ソンジュのおちんぽ、ソンジュのおちんぽとどくから、♡ 僕の子宮にガンガン当たって、♡ は、あぁ…っ♡ すき…っ♡ すき…っ♡ このおちんぽ、♡ ソンジュのおちんぽだめ…っ♡ だめだめ…♡ あぁ…♡ きもちくて腰とまらな…♡ あっ♡ あっ♡ あっ…♡」    そして彼はすくめた肩口に唇を寄せたまま下腹部にあった片手もまた後ろへ着くと、「腰(の動き)が止まらない」との言葉どおり、自分で自分の奥口をばかり重点的に責めるよう、浅くぱちゅぱちゅぱちゅとお尻を上下させながら、淫らにもそのぷるんぷるんと振り回されている勃起を突き出す。――俺の恥骨とその白いお尻とのあいだに短いねばねばとした彼の愛液が糸を引いてはそのお尻に圧される。   「…ぁ、イッ……――ッ♡♡」    と、ぎゅっと眉をひそめたユンファさんはにわかに動きを止め、その内ももをビクンッビクンッと内側へむけて跳ねさせながら、またイッている。   「……は、♡ はぁ…っ♡ ほんとらめ…♡ ぁぁ…♡ すぐイッちゃう……このちんぽすぐイく…♡ は…♡」    ユンファさんは肩口に寄せた苦悶の表情で絶頂しながら、すすり泣くような声でぶつぶつと艶めかしいひとり言を言っている。   「……、…」    まあしかしエロ…いや、――まあしかし、確かにそれはそうなのかもわからない。いや、とても俺には断言できるだけの情報や経験則がないので、なんともわからないことではあるのだが、…というのも、俺は数少ないオメガ属もこと希少なアルファ属の遺伝が濃いオメガ属を抱いたのは、ユンファさんが初めてである。…その経験則の少なさから「事実かどうかはわからない」と前置きはした上で、たしかに彼の膣内の内壁は(せま)く横幅においては小さいのだが、そもそもとして彼はオメガ男性ながらその体がアルファ属男性らしく大きいためか、その膣の縦幅においてはもともと人よりも長かったように思う(それでも俺のサイズだと全てはおさまりきらなかったが)。    ましてや俺の勃起に慣れる前はともかく――こうして慣れたあとの今、ともすれば俺の二十センチまで縦幅を引きのばされている彼のそこは、たしかに俺ほどの大きさがなければ奥にまでは届かなくなっているのではないか?    俺はユンファさんと出逢ってからというもの、さまざま要因はあれど彼以外の誰を抱いてもつまらなくなってしまったが、しかしそれは案外――彼のほうもそう…だったりするのだろうか?        だとしたら――めちゃくちゃ嬉しい。          

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