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 俺はユンファさんのふくよかな赤い唇に唇を押しつけざま、彼の体をふたたびそっとベッドの上に押し倒した。  なおそれは、――汗をかいたのちのユンファさんが寒い思いをしないように――端をつかんだかけ布団で、自分の裸の背中を覆わせながら。  そして俺はそのままユンファさんの、その非常にあわいうす桃色に艶めいている白い裸体に、その麗しい細身のすみずみにやさしく口づけ、甘やかすようなやさしい愛撫をほどこした。  しかし間違ってもそれで「四度目」を目論んでいたのではない。――これはいわゆる後戯であった。  さすがに三度射精をしたのちともなると、俺の怒りにも等しい嫉妬心はひとまずの鎮火のときを見ていた。  もちろんまったく嫉妬心が死に絶えたのではない。それが(こころよ)くすべて水に流されたのかといえば、決してそうではなかった。――しかしそれでも、それでも俺はユンファさんを愛している。  その愛をもって彼のすべてを受け()れたい。だから俺はあの「約束」を呑んだのだろう。だから人一倍嫉妬しやすいと自覚していてもなお、それでも俺は彼にそれを「些末な問題だ」と言ったのだろう。  俺は多少の冷静さを取り戻したなり、愛する美男子への愛の矜持(きょうじ)から、ああして嫉妬をした自分を恥じた。  そのときの自分が救いようのない低俗な男だとさえ思われた。――あの「約束」を交わした俺たちにおいては、ユンファさんのその行為は「裏切り」にはならない。  そもそもすべてを受け容れると、それでもよいと、貴方が幸せならばなんだって構わないと豪語したくせ、いざとなれば嫉妬し、やっぱり受け容れられない、どうして俺以外の男と寝るんだ、…俺というのはひどい自己矛盾をかかえた情けない、あまりにも自分勝手な大嘘つきの男だ――。  俺はユンファさんの脱力した肉体に口づけながら終始、射精によって得た明晰さをもって、そうした忸怩(じくじ)からの自責で、己れの燃えさかる嫉妬心を幾重もの(くさり)で縛りつけて自戒し、さらにはそれが上げていた黒煙の熱によって焦げついた、その黒煙の満ちみちた胸中を無理やりにも換気した。  しかしそうして荒療治的に取り入れた涼しい風は、火傷(やけど)の炎症を残す俺の胸中をヒリヒリと痛ませた。  ――俺はわかっていた。  きっとその火種を消すことはできない。  いつまた燃えさかりはじめるかもわからない。  ともすると、こんなのは焼け石に水かもしれない。  それでも俺は――どうしてか、どうしても――ユンファさんを愛したいのだ。  ――愛とは一体何だろう?  俺の唇がふたたび彼の耳の下の角ばったところに触れる。それと同時、俺の片手は――自分の肩をゆるくつかんでいる――彼の手の、その手首から手のひらをなで上げ、それから指をからめて手をつなぐ。  されるがままの彼の手指には力が入らない。しかし俺の唇に触れているしっとりとした肌は、ざわ…と粟立ってざらついた。 「……ねぇ、ソンジュ……」  ユンファさんがかすれた力ない声で俺に話しかけてきた。――彼はこう続ける。 「…愛って…何……」 「……、…何でしょうね……」  俺はそう言いながら少し自分に呆れて笑った。もとよりこれで回答をはぐらかしたのではない。  残念ながら、俺もちょうど今それについて悩んでいたところだ。――愛とは何だろう?  ユンファさんを愛しているからこそ、俺はかの「約束」を呑んだ。しかし、愛しているからこそ嫉妬をした。そして、愛しているからこそ自分のそれを恥じた。――許し、許せず、自分をも(ゆる)せず、しかしまた彼をゆるした。  今も彼のすべてをゆるそうと努力している。  ユンファさんを愛しているからこそ……そうとはいえ、俺のこれは本当に「愛」なのか?  だがユンファさんは以前、「元々人間は愛なんてものを持ち得ない」というようなことを言っていた。  ――その人が「愛とは何か」と俺に質問してきた、それすなわち、彼も今はそれについて考えていたということだろう。  それもそれは間接的に、「愛はある(あった)」と考えを変えたようなものであった。  そうであればここは私見でも愛について、しっかりとした回答をしたいところではあった。が――折しも俺は、今まさにそれに対する自信をなくしていた。  たしかにこの美男子を愛してはいるが、それこそ彼が以前言っていたように、人間の愛とは結局のところすべてが自分のため――人間の愛情など所詮エゴイスティックなもので、厳密には愛する人を愛しているのではなく、愛する自分のためにその人を愛しているのに過ぎないのではないか……。  かえってユンファさんは今、以前自分の言っていたそれを疑っているのだろうその一方で、逆に俺のほうは、今は結局、彼のあの言葉こそが人間の愛の真理だったのではないかと、そう思われてきてしょうがなかった。 「これは非常に情けない、月並みな回答ですが…」――と俺は話しはじめたものの、自然眉尻が下がるのを感じて、そのまさに「情けない顔」を愛する美男子に見られたくないあまり、彼の耳もとからは顔を動かしていない。 「…ひょっとするとそれは、画一的な答えはないものなのかもしれません…」  それも俺のそれはひどく曖昧な返答だった。  これまで得てきた愛についての持論も、今やそれのどれもこれもが疑わしく思われていては、今の俺には語れるだけのそれの持ち合わせがなかったのである。 「しかし…逆にユンファさんは、それについてどう考えてらっしゃるんですか…?」 「……わからないから聞いたんだよ……」 「…まあ…それはそう…、ですよね…、……」  何が正解なのだろう。  しかしそう考えるの自体不毛なことなのか。  ――俺はユンファさんの首すじに唇を押しつけた。彼はぴくん、とした。  ……そのあいだにふと思いついたことを、俺は彼の首もとで口にした。 「それなら、一緒に悩みましょうか…。愛とは何か…――結局それの答えは俺と貴方、二人で見つけ出してゆく他にはないのでしょうから……」 「……何だ…今日はらしくなく弱気じゃないか」  と、しかしユンファさんは、俺の自信喪失を早速見抜いて、そう淡々と指摘してきた。 「ソンジュほどこういう話題で能弁になるやつもないと思っていたが…」 「…それは…どうでしょう…、……」  俺の唇がユンファさんの首すじをすべり落ち、その人の白い鎖骨に触れる。 「……、…」  そもそも……俺の「理想の愛の形」は――。  俺は目をつむった。…父たちの寝室に隠されていた、あの角の白くすり切れた赤い革の首輪が見える。――結局俺の愛もエゴイスティックなものである。いいや、「も」だなんてとんでもない。  世間一般のどのような愛と比べても、俺のそれほど利己的なものもないと断言できる。  俺はおもむろに腕を立て、ユンファさんの白く美しい首をじっと凝視する。 「……俺の理想的な愛において、()いて一つ言えることがあるとすれば…――俺は出来得る限りまともになりたいんです…。せめてユンファさんに対してだけでも、まともに……」 「…ソンジュはまともになんかなれないよ」  しかしユンファさんは、気だるげなかすれ声でそう断じた。 「僕と付き合っている限りは…――なあ…まともなやつと付き合わなきゃ、まともにはなれないんだよ、ソンジュ……」 「……そうは言っても…俺は貴方のために、まともになりたいんだ……」  この美しい白い首に似合う首輪の色は? 形は? それに付ける錠の色は、形は――ああ、鍵をかけてしまいたい。  ああ! ――()()()()()()()()()()!  貴方は知らないのだ。と俺はまた固く目をつむる。  俺が檻に閉じ込め、鍵をかけて、貴方から必死に隠している「何か」を、貴方は知らない。だからそんな呑気(のんき)なことが言えるのだ。 「そもそも…〝まとも〟って何だ…?」  ユンファさんは刺すような低い声でそう尋ねてきた。 「……、…」  俺は目をつむったまま何も答えない。  答えられるはずがないのだった。  ――「まとも」とは、つまり俺が檻に閉じ込めた「それ」と真逆のことであるからだ。  それを答えれば、その檻のなかのものも――誰よりもそれの正体を(さと)られたくないユンファさんに――見透かされてしまうように思えるからだ。  ユンファさんは妖しいささやき声でこう続ける。 「…まともじゃない自分を受け容れられない…、だから君はまともなやつになろうとしている…――だが生まれつきまともじゃないやつは、〝まともなやつ〟を演じることしか出来ない…――なあ…どうして君は、よりにもよってまともじゃない僕なんかの前で、必死になってまともなやつを演じようとするんだ。」 「……、…それは…どういう意味です……」  そう聞き返した俺の声はいささか震えていた。  ……俺はドキッとしたのだ。――もう「バレて」いるのではないか、なぜかそう思わせる何かがあった。 「どういう意味って…そのままの意味に決まっているだろ…――まあ、少なくとも……」  そう言うユンファさんの声は、どこかいら立ちを俺にぶつけるような神経質さを帯びてはいたが、それでなお儚い物憂さをはらんでいた。 「だから(かたく)なにゴムをつけて僕とするんだろ…、そして、だから絶対なかに出さないんだ、君は…――世間のまともなやつはそうするから。責任だのなんだのって、…まさか、ゆくゆくは僕と子供でも作るつもりなのか、君。――セックス依存症のイカれている僕が、子供なんかまともに育てられるとでも思っているのか。」  そして彼は「生憎だが、」と、やはり苛立たしそうにこう続けた。 「人によっては〝過程〟なんだろうが、僕の目的はあくまでも〝セックスそれそのもの〟であって、その先に目的なんか無い。――つまり責任を取るも何も、(はな)っから君が取るべき責任なんざ生まれやしないんだよ。」 「……、…」  俺はふと目を開け、ユンファさんのその不機嫌そうな真顔をじっと見下ろす。 「いいえ。」  そしてそう真面目に答えた。  それに関しては違う。と、それには堂々とした否定の念を抱いたのだ。――ユンファさんは不穏に漂うような神経質な不機嫌を、その美しい顔にあらわにしたまま、ふとその切れ長の目を伏せる。  しかし俺は、彼の不機嫌にもなんら臆することなく、静かな声でこう断言する。 「それに関しては、神に誓って俺が〝まともになりたい〟からしていることではありません。――ましてや、貴方の言っているその〝責任〟も遠からずではありますが、…詳細は少しだけ違っています。」 「……、…」  何が違うというんだ、と俺の目を睨みつけるように見上げたユンファさんの目つきが、余計に脅すような冷ややかなものとなる。だが俺は彼のその目つきにも慣れたもので、やはりだからといって感情を揺さぶられることもない。 「俺が取るべきだと考えているのは、」と俺は極めて冷静なままつづける。 「ユンファさんの〝彼氏としての責任〟です。――(もっと)もそれの内には、避妊というのも入ってはいますけれど、…子供が出来る出来ない以前に、俺は愛する貴方の体を大切にする責任がある。――だから俺は、必ずスキンを着けて貴方を抱いているんです。」  そして俺はふと目を伏せ、「はは、」と苦笑いをこぼす。 「まあ…といって貴方と付き合える前の俺は、(なか)ば下心をもってスキンを着けていたところもあるんですが……、しかし、今は断じてそうした下心などではなく…――」  そもそも俺のその「下心」は、この美男子を手に入れるため、という仕組みで俺にスキンを着けさせつづけた。――すると(まああの「約束」があるとはいえ、一応は)彼を手に入れられた今、しばしば彼に捨てられやしないかとの不安を抱えてはいるものの、ひとまずその下心が鳴りを潜めたのは当然の帰結といえることだろう。  俺は結局眉尻を下げた「情けない顔」でまたユンファさんを見下ろし、ふと彼にほほ笑みかけた。 「俺にとっては…貴方の体も、大切にするべき宝物なんですよ。――ユンファさんは俺の宝物だ。…だから必ずスキンを着けるんです。少なくとも今の俺には、そうするのにそれ以外の理由なんかありません。」 「……、…」  ユンファさんはそのつやのある黒い長いまつ毛をもの憂げに伏せた。彼はいつのまにかその美貌に漂っていた不機嫌を散らし、どことなくうつろな無表情になっていた。  俺はおもむろにユンファさんの隣に体を横たえ、仰向けの彼の肩をつかんでころんと自分のほうへ向けさせたのち、彼の横髪をそっと撫でながらこう続ける。 「宝物というのは使うための道具ではなく…触れるにしても壊さないように、大切に愛でるものでしょう。ですから…」 「…だから…何…、どういう、こと……よくわからない……」――ユンファさんは何か気おくれしたようなささやき声で、目を伏せたままそう言うのだ。 「……え、…あぁ…すみません、比喩(ひゆ)表現がわかりにくかったですか? つまり…」 「違う…。彼氏だから僕のなかに出したいとか…ないの、ソンジュは…――彼氏だから生でしたいとか、そういうの……なんで、君にはないの……?」 「……、…」  俺は言葉を失ってしまった。なぜと言われても…。  いや、俺にそのような欲求がないとは言えない。むしろある。  しかし、その欲求をユンファさんに押し付けないことこそ、俺にとっては彼を大切にすること――すなわち「愛」なのだと、  ああ、そうか。  愛とは何か――それも俺がユンファさんに捧げたい愛のうちの一つなのだ。  それも一つ、俺の「理想的な愛の形」のうちにあるものなのだ。  それがまともかどうかはともかく、それは少なくとも利己的とは言い切れない、俺のユンファさんへの「愛」なのだ。 「そりゃあありますよ。俺だってそれが無いわけではないんです、ただ……」 「でも…」とユンファさんは目を上げないまま、そっと疑わしげに眉を寄せた。 「本当に愛していたら、僕が嫌だと言っても生でするもんだろ…――それはそれだけ僕が欲しいってことだし…――たとえそれがまともじゃなかったとしても…、倫理観とか世間体とかそういう面倒事が無くて、罪にさえ問われなければ、本当は誰だってそうしたいもんなんじゃないの…?」 「……、…、…」  俺は耳を疑い、「は?」と低い声を出しそうになったが、何とかそのあらわな苛立ちの反応をこらえた。――ユンファさんは不安げにゆらいでいる薄紫色の瞳をふと上げ、俺の目を見た。 「僕はそれを君にしていいって言ってやっているだけじゃないか…。それなのに、ソンジュはどうして…」 「何を言っているの。」  しかし俺の声は怒りによって固かった。  ――誰だ?  誰がそんな価値観をユンファさんに植えつけた? 「誰が貴方にそんな最低なことを教えたのか知らないが、…」 「…は、いや最低なことって、」  とユンファさんは心外そうに眉をひそめるのだ。俺はそれに余計に腹が立ってしまった。 「いいや、悪いがそんなのは断じて最低なことですよ、本当に何を言っているんだ貴方は、――こんなことは言うのも心苦しいが、…それはユンファさんの綺麗な体を、都合よく性欲処理に使いたいような下劣極まりないやつが貴方に吹き込んだ嘘です、――貴方の肉体で自分勝手な快楽を得たいがための、…貴方を騙すための最低な嘘ですよ、そんなものは、…」 「……、…」  ユンファさんはその赤い唇を薄く開けたまま、固まっていた。少なからずショックを受けたようだった。  ましてや俺は滅多なことでは彼に対して怒らない。なんなら怒ったのは、これが初めてのことかもしれなかった。  しかし彼はぼんやりとしたまま、 「な、なんで…なんでそんなに怒るんだよ、君…、お、怒るようなこと…言った、僕……」 「……は…?」――俺は険しく顔をこわばらせた。  悲しいことに、ユンファさんはその価値観のおかしさをまるで自覚していなかったのである。  彼は困惑の表情で、たどたどしくこう言う。 「僕は…イカれてる、それはわかっているよ、…でも…、いや騙されているとかじゃなくて、…もう、もうわからない、だって、…だって…ねぇソンジュ…――ねえ…なんでそんなに、怒るの……」 「俺が今怒っている相手は貴方ではない、…貴方のことを騙し、自分にとって都合のよい最低な価値観を貴方に植えつけたのだろう過去の男らに対してです、――いや訂正します、…だが何故貴方も貴方で、自分の体を、自分のことをそう大事に出来ないんだ?」 「……は…? いや、いや僕は、僕は、自分のことはこれでも大事にして…」  とユンファさんは驚いて目を見張った。  俺はその何の疑いももっていないらしい彼に、いよいよもう止まれなくなった。 「逆でしょう、…本当は…っ本当に貴方を愛していないやつこそするんだ、そんな無責任な行為は!」  ……と思わず怒鳴ってしまったくらいだ。  いや、といってそれはさすがに言い過ぎである。  愛していればこそ隔たりのない行為がしたい。愛していればこそ恋人の肉体の「本物の感触」を得たい。愛していればこそ、恋人の精液でなかを満たしたい。  俺にそのような心理が理解できないわけではなかった。なんなら俺にだってそのような願望はある。だから「結婚をするまでは(しない)」と言った。そこまでゆけばあるいは、俺の取れる責任も増えるだろうからだ。  しかし、恋人がピルだの避妊薬だのを飲んでいようが、また恋人がスキンを着けずにしてもよいと許してくれようが、それを誠実性をもって固辞すること――少なくともそれが俺にとっての、最愛の人へ向けた「真剣な愛」のあらわれなのである。  ……頭が固いと言われようが何だろうが、またそんなの寂しいだとか言われたところで、そこで恋人可愛さのあまり流されてはならない。  なぜなら膣内射精をしてかかるだろう負担というのが、俺のほうには一切課されないからだ。  ――いわば俺は「射精するだけ」なのだ。  しかしその俺の一瞬の快楽をもって、ユンファさんの体にかかる負担や面倒事は、無論「一瞬」なんかでは済まない。それはしばらく続くのだ。――それもその負担は、妊娠やそれにおけるリスクばかりではないはずだろう。  愛する人と負担を分け合えないその行為を、「愛があるから」という免罪符をもってほしいままに行うのは、俺にとってはいささか無責任と思える。  なぜなら、それを行ったあとの責任は、どうしたって俺には取れないからだ。  避妊薬を飲むにせよ、膣内に出された精液を体の自然原理にまかせて排出させるにせよ、いずれにしてもそれの責任は「受けた側」のユンファさんにしか取れない。――ましてや恋人同士でしかない今、一緒に暮らしているわけでもない今、俺にできるアフターフォローというのも限られている。  それならば今の俺が取れる責任、俺のできる精一杯の、ユンファさんの体を大切にする行為――。  それこそが、 「――スキンを着けて貴方を抱く、ということなんです。」  と俺はユンファさんにその想いを真剣に説いた。  彼はぼんやりとした――しかしどこかいたいけな――表情で、黙って俺のつらねた持論を聞いていた。  ……しかし俺の話がひとまず帰結のときを見ると、彼はまたその長いまつ毛を伏せ、ふっと少し――美しく、呆れたように、しかしやさしげに――笑った。 「……この馬鹿真面目くん……」

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