20 / 47

治療方針③

【ましろサイド】 無事におしっこが出て加藤先生から大部屋に戻っていいと許可が出た 集中治療室から出られて凄く嬉しいのに、明日からの治療を考えると憂鬱過ぎる 今から大部屋に戻ってもゴロゴロしながら明日の事を考えるだけだろうなと思いながら廊下を歩いていたら青木先生に声をかけられた この間竹内先生と来たフリー室 今日のフリー室は静かだ 大きなテーブルデスクにはこの間もいた先生が、みんなの宿題を添削していた 名札には【佐藤】と書いてある 佐藤「いらっしゃい」 青木先生がイスを用意してくれ、それに座ると佐藤先生が優しく声をかけてくれた 青木先生と佐藤先生のお部屋なのかな 青木「りんごジュースでいいか?」 ましろ「え!?はい」 パントリーとは別にフリー室にもドリンクバーがあるらしい この部屋落ち着く…… 出されたりんごジュースを一口飲んだ 甘くて美味しい…… 青木「集中治療室の居心地はどうだった?」 語尾が少し笑っている。居心地が悪いのを知っていての質問だろう ましろ「……もうあの部屋には行きたくないです」 正直に言ってしまった。 青木「浮かない表情なのは集中治療室が辛かったからか?」 ましろ「…………」 自分では普通にしてるつもりだったけど、浮かない表情をしているのか? たしかに気分はどんよりしている 話してもいいのかな…… ましろ「……治療のスピードを早めるって佐々木先生に言われて辛い……です……グスン」 言っちゃった…… 青木「佐々木先生に辛いって言わなかったのか?」 ましろ「……言えない…グスン…」 青木「先生達に気持ち伝えられるくらいまだコミュニケーション取れてない?」 ましろ「……嫌って言ったら先生困らせちゃうから……グスン…」 テーブルに山積みになったティッシュを片付け、また新しいティッシュの箱を開けてくれた 青木「苦手なこと、不安なことを解決することも先生達の役目なんだけどな? 特に佐々木先生は知りたいと思うぞ。ましろの苦手なこと、不安なこと、どの程度が限界なのか」 ・ ・ ・ 【佐々木サイド】 青木先生から連絡をもらい、ましろと面談をする事になった 面談室で俺と2人きりということに緊張しているのか下を向いて何も話そうとしない 初回入院だし、こっちから面談を組んであげればよかったんだけどなかなか忙しくて時間を作ってあげられてなかった事は俺の反省するところだ 佐々木「治療のこと?」 小さく頷き鼻をすすっていた 受け身な性格のましろを理解してもっと慎重に治療方針を話してあげれば良かったよな。 こちらの提案を嫌でも「はい」と答えてしまうタイプの患者には言葉以外の反応にも注視しなくてはいけなかった 佐々木「お尻柔らかくする処置苦手かな?」 ましろ「……にがて…グスン…」 佐々木「触診も毎回泣いちゃうもんね」 ましろ「……グスン……」 拡げる処置をしてもすぐに元に戻ってしまう体質なため、森田先生も頭を悩ませている どこまで頑張れる子なのかまだこちらも把握しきれていないから、フリー室でのレッスンを追加することもまだ保留にしたままだ 佐々木「明日森田先生の治療なんだけど頑張れそう?」 もう一つ気になっているのが、森田先生への恐怖心だ 敢えて森田先生の治療だということを伝えてみたがどう反応するか……

ともだちにシェアしよう!