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第6話

「あの、これは、…自分と、付き合っていますか?」 事後の余韻も緩やかに引くころ、背中越しに刈谷くんが問う。 「わ、別れてください」 こちらの返答を待つ気がない矢継ぎ早のタイミングで次の言葉が放たれる。 「……俺が嫌い?」 「……別れてください。無理です」 核心への返答はない。強制的な遮断の意図で、刈谷くんは頭から布団をかぶる。 「そっか。そうだよな…刈谷くん、俺が怖いもんね」 無言の布団の簀巻きと化した彼をやっぱり俺は後ろから抱く。 「付き合ってないよ、ごめんね」 全身で自分を拒絶し、じっと動かない刈谷くんに名残惜しさを隠せないまま、俺は彼の部屋を後にする。もう来ることはない、と言い聞かせ噛み締めながら最後に閉まったドアを一撫でする。分かり切っていた結末だったし、これまでの彼に対する自分の行いは下劣で最低だと自覚していた。一丁前に傷心だなんて、それすら烏滸がましい。ただ単に刈谷くんに平和が訪れるだけなのだ。最低男がようやくここから退散する。断ち切る覚悟が足りない俺自身に本気で張り手をぶちかます。空元気だろうが何だろうが、無理矢理陽気に自分を焚付けて俺はとんでもなく最悪な帰り道をなんとか進んでいった。

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