4 / 5
第4話
昨日の夜から丸1日何も口にしていない。
相変わらずハルを追い出したまま、地下室の扉を閉ざしている。
「ゆき……ごめんなさい。中に、いれてほしい」
弱々しいハルの声。
きっと、この人は俺がいないと生きていけないんだ。そう思う。
俺も同じように思っているのに、どうして。
結局こうしていると、ハルの顔を見たくて堪らなくなって、扉を開けてしまう。
「ごめんね、ゆき。……入れてくれてありがとう」
涙を滲ませて弱々しく笑うハル。
大好きで、愛しくて、抱き寄せてきつく腕の中に閉じ込める。
「ハル、大好き。どうしようもなく好きなんだ」
頬を撫でて、ハルの唇を指でなぞる。
顔を傾けて唇を寄せると、顔を逸らされて手で口を覆われる。
「だ、だめ」
「なんで?どうしてダメなの。どうして俺を受け入れてくれないの?俺のこと好きじゃないの?俺にはハルしかいないのに!」
胸が苦しくて、絞り出すような掠れた声で叫ぶ。
背中に腕を回されて、ぎゅ、と抱き締められた。
「ゆき、愛してる」
ずっと願っていた言葉に胸が熱くなる。目頭があつくなって、涙が落ちる。
「ずっと、ふたりで生きて行けると思ってた。でも、そんなの無理だ。こんな生活限界があるんだって本当は分かってた。分かっててずっと引き伸ばしてたんだ。ゆき。ずっと、ずっと愛してる。この先もずっと」
「外、行こうか」
頬を伝う涙を指で優しく拭ってくれる。何かを覚悟したようなハルの顔に急に怖くなって、悲しくて、寂しくなって、ただ、涙が出た。
ともだちにシェアしよう!

