20 / 24
2
「6クラス中、当時の担任で残っていたのは3組の田口先生だけだったか。授業中だったから直接話は聞けなかったけど、松木先生からは卒業アルバムというヒントを貰えたぞ。盲点だったな」
帰宅後、実家の自室に戻ったイブキは、きちんと整列した本棚の中から一際大きく、目立つ赤色の卒業アルバムを取り出した。ページを開いてすぐに3年1組――イブキのいたクラス写真に行きついて、「うわ、懐かし!」と零してしまう。
「冬野大空……大きい空……いないな。同じクラスじゃなかったっていう記憶は確かだったみたいだ。2組……3組……4組……5組――!」
見つけた! イブキは胸を躍らせた。冬野大空という名前の一致と、アイ本人と思しき学生写真も載っていた。にっこり笑う生徒や緊張が表情に滲み出ている生徒達の中に、背筋を真っ直ぐにして微笑んでいる美少年がいる。どうやら当時は黒髪の短髪だったらしい。イブキの知るアイの金髪は自然な色合いだったので、おそらく校則の関係で染めていたのだろう。クラスが違って髪の色も違うというなら、気付かないのも無理はない。
「ええ~、本当に無理はないって事はないのか? 黒髪でもハーフっぽさは残ってるし、女の子の間で人気になりそうなのに。……いやでも、写真は少ないな」
他の写真にも彼の姿がないかチェックする。一枚一枚入念に確認してみると、集合写真以外で見つけられたのは三枚きり。一枚目は教室で女子グループメインに収めている中に、ぽつんと席に座って読書する姿。二枚目はバスケの授業中、つまらなそうに体育座りをしている姿。三枚目は文化祭前日に撮られた写真で、友達と作業中のイブキを、少し離れた場所で見つめている姿だった。いずれもかなり存在感が薄い。誰もアイの存在に気付いていないような扱いで、まるで幽霊のようだった。
ただ、三枚目の写真が明らかにイブキを意識しているふうに見て取れる事から、アイにとってイブキは何かしら特別であったらしい。
「……そういえば、卒業間際に知らない人から話しかけられたような記憶が……。特に気にしなかったけど、あの人がアイさんだったりする? くっ、思い出せ―! 記憶力のいい父さんと母さんの息子なんだから、やれば出来るはずなんだ! 頑張って思い出せ!」
イブキは念を送るように祈りのポーズをする。するとイブキの願いが届いたのか、ほんのりとその謎の人物と当時交わした内容を思い出せた。
それは、一方的な問答。
――君は……?……?
『……かなぁ』
――……?
『好きだから』
何だこの会話、と突っ込みたくなる内容。中身ががほぼ空虚である中、やけに最後の言葉だけはっきりと思い出せたのは、これを言った瞬間、相手がふわりと一輪の花が咲いたような表情をしたからである。
曇り掛かった顔に、先ほど見た写真や現在の姿を重ね合わせる。今思えば、その顔は確かにアイだった。
ともだちにシェアしよう!

