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□真相 [高校時代編]

 時が経ち、アイは高校生になった。男子校(他意はある)を選んだので、顔見知りの多さを優先した一ノ瀬やジュンと別々になってしまったが、三人の繋がりは途切れなかった。普通に仲がいい程度では味わえない、裸の付き合いまでやれる関係はそうはいない。夜に落ち合って活動するようになり、喫煙、万引き、窃盗、理不尽な暴力、無免許運転、豪遊、薬、タトゥー、怪しいバイト、獄中生活は何でもやった。祖父母の効果は絶大である。  ここまで来ると、奔放な噂が広まって、校内では結構な有名人になっていた。頭のぶっ飛んだエロスの大魔王(女王)がいると。しかし、噂に反して授業はきちんと受けていて成績は優秀だし(図におっぱいやチンコを描き足して覚えたり、国語は言葉攻め、数学は計算、理科は探求心の追及の手本、社会や英語は大人社会で話を合わせるのに使える……などというのもある)、教員はリスペクト(こんだけ生徒がいるのに、手を出さないなんて偉いなー)しているし、非行は性にだらしないぐらいで、一応わきまえているしで、教師としては非常に扱いに困る生徒だった。「ひとしゃぶりごとに夏休みの宿題一個減りません?」といった類いの冗談を公然と交わすようになるなんて、正気の沙汰ではない。  生徒からの評判も熱かった。自分は魅力的で特別なのだと完全に自信をつけたアイは、野郎どものエデンに忍び込んだ魅惑の蛇姫として、癖をくすぐって楽しんだ。不敵に笑いかけてみせたり、伸ばすようになった髪を色っぽく掻き上げたり、肌をチラ見せしたり、隠し撮りを許したり。女ものの下着をつけて体操服に着替えてみると、周囲の反応が面白かった。辛抱堪らなくなった生徒には、一回一時間無料、二回目十万円という条件で遊んであげた。当然担任からは生徒にカツアゲするなとしかられたが「こんだけふんだくらないと学業に集中できなくなりますが、いいんですか?」と返して黙らせた。  時には上級生の運動部軍団に掴まり、輪姦(まわ)されそうになった事もあった。だが、力で敵わなくて無理やり犯される、なんて事態は二度と御免であったので、知り合った格闘家たちの教えと、これまでに学んできた体位を格闘技に組み込んで、騎乗位ドロップ、駅弁ヘッドロック、マヂ無理ホールド(バックドロップ)、パイズリ腕十字固め、69(ともえ)投げ、種付けスープレックスなどを駆使して打ちのめした後、チン射(陳謝)させた。  集団を仕切っているトップを辱めるというのは、暴力で制するより平和で効果的だ。何度か同じように乱暴されそうになったが、手首とブツを縛られた下っ端の眼前でウィークポイントを探り、癖を開帳させると、彼らは首輪がついたように大人しくなった。ついでに下級生へのいじめも根絶した。  そうして関わった連中が後に真っ当な恋愛をできるかどうか、知ったこっちゃな学校生活を満喫して、高校二年生の冬、ついに運命の再開を果たした。  祖父が取っていた地元新聞に、イブキが表彰を受けている写真を見つけたのだ。オレオレ詐欺に騙されそうになっている隣人を救い、逮捕に貢献したという記事だ。  離れてから今日に至るまで、イブキはトラウマの対象だった。弱かった自分をまざまざと思い起こさせるからだ。写真に写る気恥ずかしそうな表情のイブキは、小学時代からそのまま成長したような見た目で、動揺して息苦しくなった。 「落ち着け……もうあの時のボクとは違う。ボクは強くなった。恐れる事はない」  可愛らしい小鳥が肉を食い漁るケダモノにウルトラ進化するだなんて、方向性がトチ狂っているが。アイは新聞からイブキが一ノ瀬と同じ学校に通っていると知ると、連絡を取って近況を尋ねた。すると、なんと一ノ瀬とイブキは友人関係である事が発覚した。 『ダチなんだから、俺をダシにすんじゃねーぞ』  彼はアイをよく分かっている。釘を刺されたアイは、一ノ瀬がスマホに納めている分の写真と通勤の情報、時間割りを送ってもらうと、イブキの家へ向かった。住所は変わっていなかった。  今更謝りたいわけではない。ただ、成長したという充足感を味わいたいだけ――。更地になった工場跡地や忌まわしき歩道の一歩一歩を踏みしめながら目的地に辿り着くと、ざっと全体を見通し、玄関が見える場所に隠しカメラを仕込んで帰った。  ただちょっと、あいつの今が知りたいだけ――。登校時間、帰宅時間、平日、休日の生活リズムを粗方掴むと、同じ時刻の電車に乗り合わせて登校するようになった。  あいつの事が気になるだけ――。学校指定の店で制服とジャージを購入した。学校帰りに駅へ向かい、コインロッカーに預けた着替えと陰キャ男の変装グッズを取り出し、トイレで着替えると、イブキの学校に侵入して校内をぶらつくようになった。同世代が指定の制服を着ているという強力な目くらましや、教員の名前や顔を覚える事でうまく紛れる事ができた。  そうまでしてやる事は、直接相対さずに遠目で見るだけだ。恐怖だったイブキは、拍子抜けするほどに誠実な好青年に育っていた。一ノ瀬いわく、人当たりは爽やかで何事にも一生懸命。積極的なタイプではないので地味に見られがちだが、友達として付き合っていくとどんどん良いところが見つかっていくとか。表彰以降はちょこちょこ積み上げていた好感度が実を結んで、一気にヒーロー扱いされるようになったらしい。三年生になっても人気は相変わらずで、クラス委員に抜擢された。  放課後はクラス委員の仕事で残っている事が多かった。だがよく観察してみると、今の立場に少々気疲れしているようだった。一人の時に稀に見せる困った表情や、先生に話しかけられて無理やり作った笑顔が、ゆるやかないじめを受けているように見えて高揚した。 (あいつ、本当に変わってない! ヤバい、いじめてやりたい……っ!)  イブキの事を悶々と考えていると、祖父母ブレーキが壊れて、普通にアウトからゴリゴリの犯罪へとアクセル全開になってしまいそうになった。せめて卒業するまでは大人しくしていなくては。アイは手が出せない代わりに、スマホで読んでいた小説の文章を参考に、イブキを犯しまくる文章を書きまくって発散した。  最初は書きたいシーンと簡単な文から。そこから自然と前後にストーリーが付いて来て、小説投稿サイトに作品を発表するように。  普通にR18作品を書くよりももっと興奮したのが、切ない悲哀で完結させた後、自身の作者名と登場人物名を変えて、ブチ犯した続きを書く事だった。決して実らない恋で一旦終わらせた後、恋人から強奪してゴールインさせるのが堪らない。裏でこんな事をしておいて、「切ない」、「泣きました!」といった無垢な感想を貰うのもそそる。外部から声がかかって連載を持つようになった際も同じ手法を取っていて、矢印アイ名義の作品の裏にはすべて強引ぐ(ゴーイング)ハッピーエンドが存在した。  恋愛小説を書きながらも、未だに恋だとか愛だとかは分からない。オーガズムに紛れてしまうからだ。家族愛や友愛を除いて、何度でも飽きずに抱き合いたいと思えるような至高の存在が相応しいのだろうと想像はついているが、大体初めての時がピークであり、以降は惰性が混じる相手ばかり。  だが間違いなくイブキは特別で、無限の活力を生み出すキーパーソンだ。彼を見ているだけでみなぎるものがあったし、果てには修学旅行があると知るや否や、部屋割りでイブキと一緒になったやつを全員睡眠薬で眠らせて朝チュンする計画を立てるところまでいってしまった(一ノ瀬にバレて絶交まで持ち出されたので、未遂に終わった)。  アイはイブキが欲しくなった。しかし高校三年生という時期的に、あまり派手には動けない。一ノ瀬からイブキの進路についての話は聞いているが、進学と就職のどちらを選択しようとも、作家との兼用は厳しいだろう。学校と違って、安易に潜入はできまい。  アイはどうしたらずっと一緒にいられるのか熟考し……やがて、イブキがどんな進路をとっても先回りが出来るよう、強力な助っ人――もとい奴隷を作る事にした。 ――《補足》――  卒業前に祖父、次いで祖母が逝去しましたが、アイはこれまでに培ってきた縁を頼ってカンパしてもらい、滅茶苦茶豪勢な葬儀を上げる事ができました。  ブレーキぶっ壊れの解禁記念として、日記通りイブキに一度会いに行ってます。

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