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【20】

「……なんだよそれ。……またお前の、恥ずかしいことの告白かよ」 カミロは笑ってごまかすように言った。やっとの思いで出した言葉だった。 戸惑っていた。いつもなら、テオは真剣な話になると茶化して逃げるくせに。でも、今日は違った。 「……そうだよ。俺の、恥ずかしい告白だ」 テオは目を逸らさずに、真っ直ぐ言った。 「俺は、お前と離れたくない。この関係を終わらせたくない。……ずっと、そう思ってる」 冗談じゃない。照れ隠しでもない。まっすぐな目。その重さに、カミロは一瞬、呼吸の仕方を忘れた。 沈黙が落ちた。 喉の奥がじりじりと熱くなる。「俺だって」と心の奥では叫んでいるのに、言葉が出ない。好きだなんて言ったら、きっともう戻れない。 家族がいる。 仲間もいる。 この町も、この場所も、過去も。 それから、未来も。 いろんなものが絡み合って、言葉にすればすべてが崩れそうだった。 テオの視線がカミロを貫く。 「……お前はどうなんだよ?俺と同じじゃないのか?」 好きとか、気になるとか、親友とか…そんなレベルじゃない。ただ気が合うとか、趣味が一緒とか、そんなもんじゃない。カミロはそれを痛いほど知っている。 でも、言えるほど強くなれていない自分がいた。 「黙ってんじゃねぇよ……」 テオの声が震えた。次の瞬間、もう抑えられていなかった。 低く、喉の奥から搾り出すような声とともに、テオがカミロの胸ぐらを掴む。そして、ぐっと身体を寄せて、真上から覆いかぶさるように向き合ってきた。息を呑んだ拍子に、唇が触れてしまいそうな距離だった。 「何年もずっとこうだっただろ。一緒にいて、笑って、夜中に抜け出して、スケボーして……誰にも言わないこと俺には話してくれたじゃん。そういうの、全部…特別じゃなかったのかよ?」 息が乱れている。 心臓が、うるさいくらいに鳴っている。 「なぁ、カミロ。お前の全部が、俺にとって生きてる証みたいなんだよ。朝、仕事行って、汗かいて、クタクタになって帰っても…お前がいるだけで、全部チャラになる。お前がいない未来なんて、想像できねぇよ」 拳をぎゅっと握って、テオは言葉を吐き出すように続けた。 「好きだよ。好きだ。ずっと言いたかった。でも失うのが怖かったんだ。お前に避けられるのが、『違う』って言われるのが怖くてたまらなかった」 声は震えていた。けど、もう止まらなかった。 「俺にとって、お前はただの友達じゃねぇただのボード仲間でもねぇ。お前がいたから、生きてこれたんだよ。今だって…」 静かで、息苦しい部屋の中。 テオの声だけが、熱を持って響いていた。 カミロは唇を開きかけて、閉じた。 何かを言おうとして、それが見つからなくて、ただ喉の奥が熱くなる。 言葉にすれば、きっと全てが壊れる。 でも、言わなければ、テオの手が遠ざかる気がした。 「……テオ」 名前を呼ぶことで、気持ちが少しだけ届く気がした。 でもその先が、どうしても出てこない。 目の前のテオは、ただ静かに待っていた。 急かすこともなく、責めることもなく、でも逃げ場も与えてはくれない。 「……テオ、早く抱けよ」 そう言い、カミロはテオを抱き寄せた。

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