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【21】※

セックスをして、熱を冷ますしか方法がなかった。理性も、言葉も、もうどうしようもない。お互い、それがわかっている。 「……テオ……もっと……もっとくれ。……足りない」 うわごとのように、喉の奥から零れる。テオの動きが一瞬止まり、すぐに深く沈み込む。 「カミロ……好きだ。お前が、全部ほしい」 言葉と同時に、腰を深く打ちつける。 湿った音が何度も部屋に響く。汗と熱気と、荒い呼吸が入り混じって、世界が狭くなる。 「……くっ、やばい……出る、出すぞ……!」 「ああ……テオ……一緒に……」 背中を抱きしめカミロも限界に達する。 二人同時に絶頂を迎え、テオがカミロの奥で震えた。 コンドームを外す手は焦れていて、勢いで中身がこぼれ落ちる。白く濁った液体が、カミロの腹に垂れて、肌を這う。 ティッシュを取る暇も惜しんだのか、テオは新しいコンドームを手探りで装着しながら、カミロの脚をもう一度開く。 「……お前の中、離れたくねぇ……」 カミロの身体はもう限界を越えているのに、心が「まだ」と叫び続けていた。 「俺も……ダメだ、まだ……全然足りない」 熱に浮かされたように、潤んだ目でテオを見上げる。その目に、テオの喉がかすかに動く。 「……まだ欲しいのかよ、カミロ」 低く押し殺した声で言いながら、テオはゆっくりと腰を押し込んだ。ずるりと奥まで入り込んでいく感覚に、カミロの背筋が震える。 「あ……っ、ああ……」 再び、テオが深く動き始める。 強く、そしてゆっくりと。 中を押し広げ、擦り、掻き回す。 そのたびに、火がついたように体中が熱を帯びた。肌という肌が熱を持ち、汗が髪を額に貼りつかせる。もはやどこが自分で、どこがテオなのかさえ曖昧になる。 「……あっ……そこ……やば……」 「ああ、ここだろ、知ってるよ。感じてるの、わかるから」 カミロの内側を、テオが巧みに探り当てる。ぴくりと跳ねるそこを、まるで焦らすように、意地悪に擦り上げてくる。 「くっ……もう、わかんねぇよ……カミロ…好きだ…好きなんだ」 手はテオの肩に爪を食い込ませた。声にならない声が喉の奥から漏れる。肌の奥が灼けていくようで、火照りが止まらない。 「……こんな…熱いなんて……」 テオも息を荒げ、カミロの額に汗のついたキスを落とす。 「お前が、こんな顔するから……止まれねぇんだよ」 打ちつける動きが激しくなるたびに、ベッドの軋み音が増していく。カミロの中で、テオのそれが何度も何度も奥を叩き、掻き回し、擦り上げる。 「……テオ……もう、やばい……どうにか…なりそうだ……」 「それでいいよ。……俺だけ感じてろ。俺だけ、入れてろ」 テオの低く囁く声が、熱い息と共に耳をくすぐる。 その言葉に、カミロの中のなにかが決壊しかける。壊れてもいい、溶けてもいい。テオだけが、自分をこんなふうにしてくれる。 そのまま、再び押し込む。 カミロの喉から抑えきれない声が漏れる。 「あっ……テオ……やば、く……!」 「締めんなよ……っ、イくから……」 潤んだ瞳の奥で、カミロは必死に堪えていた。 好きだと言いたい。伝えたい。 でも、声にしたら壊れてしまう気がした。 言葉じゃなく、腕で、指先で、体温で、伝えようとする。テオの背中に手を回し、力いっぱい抱きしめた。せめてこの肌の温度だけでも、自分の中に刻みたかった。 呼吸が荒くなる。 耳元で、テオが何度も「カミロ」と囁く。 胸がきゅっと締めつけられる。「もう名前を呼ばないでくれ」そう言いたいのに。 逆に「もっと呼んでくれ」そんなふうにも思ってしまう自分がいる。 呼ばれる名前に、こんなにも意味があるなんて知らなかった。こんなにも、嬉しくて、苦しいなんて。 火照る体は、まだ冷めない。 このまま朝が来なければいいと願った。

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