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第5話 お風呂play R18
「お兄さん、僕が脱がしてもいいですか?」
桜が男の顔をのぞきこむように提案する。その目は細く目尻は弧を描いている。垂れ目がちな黒い瞳と目が合った男はその瞳の奥に吸い込まれそうになる。
「じゃあ、お願いしようかな」
桜が男のシャツのボタンをぷちぷちとゆっくり外していく。慣れた手つきで次から次へと男の服をはいでいった。肌に擦れる桜の指先は冷たく気持ちがいい。男は恍惚としながら服を剥かれていく。ただ服を脱がされているだけだというのに、まるで十字架に磔にされたかのように身体が強ばる。まるで禁忌を犯しているような背徳を覚え、男は狼狽しながら目を伏せる。男を丸裸にさせると、桜も静かに服を脱ぎだした。男はそれを横目に見て、その肌のきめ細かさと白さに目が釘付けになった。陶器のようにつるりとした腕や足には毛という毛は見えない。ただ1点下半身の足の間だけは短く切り揃えられている。そこに彼の唯一の雄を見てから彫刻のように美しい肢体にうっとりとする。今すぐにでも触れたかったがそんな勇気は小心者の男にはない。まじまじと見つめるのもよくないとわかっていたが、こんなに綺麗な男にも男の象徴はついているのかと不思議に思う。西欧の裸の彫刻像のようにいやらしさを感じさせない風貌をしている。
「お兄さん。お待たせしました。まずこれでうがいしましょう」
桜はコップに注いだ茶色い液体をまず自分で口に含みうがいをして、残りを男に渡した。男は見慣れない液体に目を凝らす。
「これなんの液体?」
「イソジンです。お店の決まりなんだ」
そうかと納得した男は、がらがらがらとイソジンでうがいをした。おそらくマウスウォッシュ代わりなのだろうと1人納得する。それから桜が浴室に入りシャワーをひねって温度を調整する。適温に調整していると、浴室内がもくもくと白い蒸気で溢れていった。桜は男の手のひらにシャワーをかけて温度を確かめると、ホテルに備え付けてあるボディーソープを手のひらに出した。手元で軽く泡立ててから白いクリームのように膨らんだ泡で男の身体を撫でるように洗う。まずは胸、膨らみのある二の腕から手のひら、硬い筋肉で覆われた男の腹、それから大腿筋とふくらはぎ。
「んっ……」
男は桜に身体を洗われてつい身体が反応してしまう。華奢な白い指先に触れられると気がどうにかなりそうだ。そのまま半ば勃ち始めているものを両手で洗われるとたまらなくなる。その手つきは優しくてそれだけで緊張して張りつめた心が癒されていく。
「洗い残してるとこないですか?」
業務的にやりとりをする桜を見て、夢見心地だった男は現実に戻った。彼は売り専のボーイで自分はただの客だという現実に。そこには深い谷のようにうめられない溝があるのだと我に返る。最後に熱いシャワーで泡を流され桜にバスローブを着てベッドで待っているように伝えられる。男は桜の言う通りに身体を拭いた。その間桜は1人でシャワーを浴びている。
バスローブを着てベッドで待っていると、体を洗い終えた桜がおそろいのバスローブを着てやってきた。その姿が男の心臓の鼓動を速める。桜は、ゆっくり男の上に馬乗りになり男の唇を軽く吸った。2、3度それを繰り返すと次第に舌を絡めたディープな口付けに変わっていく。男は体を大の字にして桜に全てを任せた。緊張はほどけて足の間のものが痛いくらいに主張していた。
桜は男のバスローブを脱がしながら、耳をピチャピチャと音を立てて舐め始める。舌を尖らせてつつくように舐めると、男は鼻から息をもらす。耳の弱い男はそれだけで体をビクビクと揺らした。
「お兄さん可愛いね」
耳まで真っ赤になった男を見て、桜がにこにこと笑いかける。桜は耳を舐めるのを一旦やめると、柔らかくて形のいい桃の果肉のような唇で首筋、鎖骨、胸の順に口付けていく。男の筋肉質な胸まわりを優しく手のひらで撫でるように触れてやれば、頭上から吐息が降ってきた。男のものは既に痛いくらい昂っていて、桜の身体にぶつかるたびに瑞々しい先走りを漏らす。先端から滲み出たその透明な糸は桜の脇腹とゆったりと結びつき、ほどなくして途切れた。桜は明らかな主張をしている頂を無視して、男の足の付け根や固い弾力のある太ももへ口付けていく。手の愛撫も欠かさない。
男は自分で触りたいのを我慢して、桜からの刺激を待った。桜が触れてくるところは普段あまり快感を生む場所とは認識していない場所だったが、少しずつ桜の愛撫によって自分の体が変わっていくような気がした。自分が性感帯を開発されていることに初めて気づいた。これも売り専のサービスの1つなのだろうか。
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