9 / 35

第9話 美少年倶楽部の面接対策

 初めて開いた売り専のホームページを見て、何かいけないことをしている気持ちになり桜は恥ずかしくて何度もウィンドウを消そうとした。《あなたは18歳以上ですか?》という確認画面も首の痒い面持ちのまま《はい》を押した。大人向けの店のホームページを見るのは初めてで、変なサイトに誘導されるのではないかと少しばかり葛藤もした。薄目を開いてホームページを見ると、箔押しのホログラムのエフェクトがかかり画面が光る。《先月のナンバー》《おすすめのコース》《ご紹介割引2000円クーポンはコチラ!!》などのバナーが出てくるのを桜は踏まないようにスクロールする。 しかし面接に備えて仕事内容は目を通しておきたかった。おそるおそるパソコンに映る画面に目を向ける。通常のサービス内容は玉舐め、ディープキス、全身リップ、ローション責めなどがあるようだ。有料でバイブ、ローター、拘束、口内発射……と様々なオプションがあることを知った。桜は他にも売り専としての基礎知識を学ぶために、美少年倶楽部とは別の売り専のホームページを見てリサーチをした。所謂ゲイ向けの性的サービスを提供する売り専のサービスには2つの形態があるようだ。店舗型と派遣型。これから桜が面接を受ける予定の美少年倶楽部は派遣型の形態で本社が鶯谷にあるという。店舗型だとバー形式の店が多く、売り専のボーイがバー店員として客にお酒を提供して接客を行う。客から声がかかればボーイは店の奥にある簡易的な個室スペースで性的なサービスを提供するというものらしい。一方、派遣型の店の場合はボーイ達は店のホームページに顔写真付きのプロフィールが掲載されておりそこから気に入ったボーイを客が店に電話をかけて予約するというシステムだ。通常、ホテルやレンタルスペース、客の自宅などで性的なサービスが行われる。また派遣型の場合は待機所と呼ばれるボーイたちの控え室のような部屋があり、そこで待機しながら客のもとへ派遣されるのを待つようだ。 「売り専って一口に言っても色々あるんだな」  桜はパソコンのキーを連打しながら頭に入れた知識を表にまとめた。美少年倶楽部の特徴やホームページに掲載されているボーイたちのナンバーを確認すると「アイドル系」のボーイが複数名トップ10に入っており人気なようだった。中でもナンバーワンと称されているボーイのルイは子犬のような無垢で可愛らしい容姿をしており、自分とは全く別方向のキャラクターのように感じて店のコンセプトに自分を合わせられるか心配になってきた。なにせ自分は185センチの長身とある程度鍛えた身体を持ち、他人からは「芯の強そうな美人キャラ」として見られることが多いからだ。  数日後、スカウトの男から面接日が決定したと連絡が来たので鶯谷の本社に向かう。自分にケジメを付けるために、桜は昼の仕事をしていた会社に辞表を提出していた。本当はパワハラブラック企業に対して退職代行を使いたいくらい気が滅入っていたが、せっかく手に入れた20万円の祝い金をそれに使うのは気が引けて結局憂鬱な気分のまま退職手続きを済ませた。

ともだちにシェアしよう!