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第14話 待機所の案内ツアー
「じゃ待機所ツアーに行くわよう」
意気揚々と立ち上がったオーナーの後ろに桜もついていく。パーテーションから出ると3人の黒服の男性が煙草を咥えてだべっていた。見るからにヤクザもんのような風貌に内心びくびくとするのを桜はなんとか無表情で堪える。そんな桜の気持ちを汲み取ったのか、オーナーは「プププ」と笑いつつ黒服の男たちに声をかけた。
「はいはい。みなさぁん。こちら本日から美少年倶楽部でボーイとして働くことになった桜くんよお。ちゃーんと名前と顔を覚えなさいね。うちのお店は顔が綺麗な子が多いから間違えないようにね!」
オーナーはラフに絡んでいたが、だべっていた男たちは椅子から立ち上がり煙草を捨てて起立した。オーナーに敬礼でもするかのような勢いである。
「お! お疲れ様です。オーナー。桜くん。俺たちはお客様からの予約の電話を受ける受付を担当しているもんです。ちょこちょこ話す機会あると思うんでよろしくお願いします!」
3人とも両手を膝の上に置いて頭を下げる。桜はまるで自分がヤクザの組長にでもなった気分にさせられた。3人ともオーナーを心底尊敬しているらしく目が輝いている。オーナーの龍は彼らにとって大ボスらしい。畏敬の念も見える。ゆったりとした足取りで廊下を進むオーナーについていくと18畳ほどのリビングに通された。正方形の部屋で3人がけのソファが6つ等間隔で並べられている。テレビや鏡台も壁にそって置かれていた。数名のボーイと見られる男たちが桜とオーナーを一瞬見つめてからすぐに興味を失ったように目を逸らした。
「ここがボーイたちの待機所よ。端から紹介していくわね。ここが冷蔵庫と冷凍庫よ。食べ物や飲み物を入れてもらって構わないわ。ただし他の人のを間違えて食べちゃったなんてことが起きないように、食べ物は袋に入れて名前を書いたり、ペットボトルのキャップにネームペンで名前を書くというルールがあるからそこだけ協力頼むわね」
実際にオーナーが冷蔵庫と冷凍庫を開いて見せてくれた。中にはおにぎりやコンビニのサラダボウル、ペットボトルのコーラやお茶などが入っていてそれぞれにボーイの名前がペンで書かれていた。
「わかりました。自分が使わせてもらうときは名前を書くのを忘れないようにします」
「うんうん。よろしくね。そうしたらっと。次はこっちにある個室スペースを紹介するわね」
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