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第15話 美少年倶楽部ナンバー5のミケ

 壁際にそって黄色いカーテンが引かれている。4つの個室があるらしく、カーテンが開いている1つの個室の中を見せてもらう。 「ここが個室よ。まあ、個室っていってもパーテーションで区切って出入口にカーテンを引いているだけの簡易的なものよ。個室は自由に使ってもらって構わないけど、カーテンが閉まっていたら中にボーイがいるっていうことだから勝手に開けないこと。ボーイたちには在室か空室かどうかをしっかりチェックするように伝えているわ」  桜は心の中でふむふむと頷く。3畳ほどの空間には小さなローテーブルと座椅子が置かれている。 「ちなみにこの座椅子は自由に角度を変えられるから、横になりたいときはこうして平べったくして横になることもできるわ」  実際にオーナーが座椅子に寝そべり実演してくれた。オーナーの身体は大柄なため座椅子の幅から今にも滑り落ちそうになっている。桜は笑わないように耐えて息を吸う。 「とまあ個室の説明はこんなもんでいいかしら。あとはあっちの広い空間についてね」  個室のエリアから出てリビングの中心にある広いスペースを示される。ソファが整然と並んでいた。オーナーはそのうちの1つに横になっているボーイの男に声をかけた。 「ミケくーん。ちょっといいかしら?」  ミケと呼ばれたボーイは静かに身体を起こして桜とオーナーを見比べる。小柄で細い身体をしているが、目元が猫のようにつり目で強気な印象を受けた。 「はい。大丈夫です」  ミケはきっちりと姿勢を正してソファに座った。3人がけのソファの真ん中にオーナーが腰掛け、右にはミケ、左には桜を座らせた。桜は実際に生で初めてボーイを見てまじまじと観察してしまいそうになる。ミケの顔は美少年倶楽部のホームページで見た記憶がある。たしか先月の売上ではナンバー5だった。 「ミケくんはいくつだったかしら?」 「あー。俺は20歳です」  桜はミケが自分と同い年であることを知った。 「桜くんはいくつ?」 「俺も20です」  オーナーはそれを聞いてぱっと表情が明るくなる。そして何かいいことを思いついたような顔をしてミケに向き合った。 「ミケくん。1つお願いがあるんだけど……」 「何ですか?」 「今日、これから桜くんの講習をお願いしてもいいかしら? もちろん講習手当て5000円を支払うわ」 「お? まじすか。ラッキー。もちろんいいですよ」  少し砕けた口調でミケが笑った。笑うと目が細くなってまるで猫みたいに桜には見えた。

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