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第16話 初めての講習
「ありがとう。助かるわあ。桜くんは売り専で働くのは始めてだから基本的なところから教えて欲しいの。今日はミケくんの予約は入ってるかしら?」
ミケはスマホを開いてカレンダーを確認している。
「あー。18時からお客様の家へ向かう予定です。それまでは時間あるので大丈夫です」
「あと2時間くらいあるわね。そうしたら、近くのホテルに桜くんと行って講習してあげて」
オーナーは腕に巻いてある金色の時計を見ながら呟いた。桜は「講習」という聞き慣れない単語に耳をすませる。
「じゃ。ワタシからの待機所ツアーはおしまい! ミケくん。あとは頼んだわよっ。桜くんには講習について簡単に説明するわね」
ミケが自分の荷物をまとめている間に桜はオーナーから説明を受ける。
「うちのお店では売り専で働いたことがない新人のボーイに対して先輩のボーイが講習を行うことになっているの。お客様への接し方やplayの準備の仕方、サービスのやり方などを教わる貴重な機会なの。初めてのことで緊張するかもしれないけど、ミケくんは講習するの上手いから勉強になると思うわ。彼は先月、ナンバー5に入った実力者よ。彼の実力や技を盗んで桜くんもナンバー入りを目指しましょう。それじゃあミケくん。あとはよろしく頼むわ」
「はい」
お辞儀をしていると、つんつんと横からミケの手が伸びてきた。
「桜っていうの? 俺はミケ。同い年のやつ少ないから嬉しいよ。よろしく」
ミケは手を差し出してきてくれる。桜はそれを軽く握り返した。
「俺、右も左もよくわかんないんですけど頑張って覚えるんでよろしくお願いします!」
「OK。じゃあまずは仕事用の荷物の準備の仕方から教える」
桜はミケと共に仕事用の荷物の入ったトートバッグを準備する。
「ここの棚に仕事用のトートバッグのセットがあるから中身を確認するように。バスタオル2枚、ローションの入った容器とイソジンの入った容器が基本の3セット。あとはオプション用のローターとかバイブを入れて行く。予約の段階でオプションがついてなくても、play中にオプションつけてもらうこともあるから入れ忘れがないように気をつけろ」
「はい。確認します」
桜はミケの指示通りトートバッグの中身を確認する。透明なとろっとした粘液はローションだろう。イソジンとミケが言ったものはこれだろうか。桜は不思議そうに茶色の透き通った色をしている液体の入った容器を見つめる。
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