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第79話 欠けた月(side 大沼)
朝方から降り始めた雨は夜まで長引き、だんだんと雨風も強くなっていった。天気予報を確認していなかった俺は、台風が九州に近づいていることを空港で知った。
帰りの便はまだ予約していなかったので航空券が無駄になることは回避できたが、今日中に帰るのは難しくなった。
睦月には仕事があるからと言ったが、これといって仕事はまだなかった。
日本に3年ぶりに帰国して実家で家族に祝われ、その次の日に教授に会いに行き、夕方帯人の死を知った。
そして今朝、睦月に会いに福岡まで来たのだ。
帰国してから休む暇もなく過密スケジュールをこなした俺は、今夜は福岡に泊まって観光でもしようと考えた。
空港近くのビジネスホテルは台風によって俺と同じように帰れなくなった人達で溢れかえっていた。
空港近くのホテルは諦め、繁華街の近くのラブホ街にひっそり建つビジネスホテルに泊まることにした。
タクシーに乗ってホテルの前に到着すると、まだ昼過ぎだというのに風俗嬢らしき女とおっさんが手を繋いで歩いていた。
それも一組ではなく何組も。
俺はその異様な光景を横目に、ビジネスホテルの中へ入っていった。フロントでチェックインを済ませると、俺は渡されたキーを持ってエレベーターに乗りこんだ。
綺麗なラブホに囲まれてホテルの外観は少しボロそうに見えたが、内装はそこまで悪くなかった。
部屋は3階の角部屋だった。
窓から下を見下ろすと、正面のラブホに出たり入ったりするカップルが後を絶たなかった。
さすがは福岡だ。
辺鄙な都会の田舎よりかは繁盛している様子だった。俺はスマホを充電させると、そのままベッドに倒れ込んだ。
朝5時起きはさすがに体にこたえる。
とりあえず俺は夕方まで寝ることにした。うっすらと瞳を開けると、窓から見える空は灰色だった。
白と黒を混ぜて、黒の方が強い灰色だった。
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