82 / 82

第82話

「すまない睦月」  俺が謝ると思っていなかったのか、睦月はただ俺を呆然と眺めていた。 「どうしてお前が謝るんだ」 「俺は、俺のことしか考えていなかった。フランスにいる間もお前と連絡を取っていれば……こんなことにはなってないだろ?」 「お前のせいじゃない。俺が弱かっただけだ」 「……睦月」  俺は何をしてやれる?  今にも消えてしまいそうな睦月に何と声をかけられる? 友として何ができる? 「睦月。これは俺の個人的な頼みだ。もう二度と寂しさを身体で埋めようなんて思わないでくれ」 「……大沼」 「もしお前が寂しいと思ったら、俺に電話でもメールでもしてこい。俺は帯人にはかなわないが、お前のことはよく理解してるつもりだ」  それと、と俺は一息ついてから言う。 「俺たち親友だろ。ライバルだろ。美大生の頃、夢に向かって頑張るって言ったじゃねえか」 「……夢」  睦月の嗚咽が止まった。ゆっくりと睦月の泣き腫らした目が俺を捉える。 「俺はフランスで修行してプロの画家になった。お前もはやくプロになれ。お前ならきっとなれる」  それが俺と睦月の友としての関係の再開だった。

ともだちにシェアしよう!