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第82話
「すまない睦月」
俺が謝ると思っていなかったのか、睦月はただ俺を呆然と眺めていた。
「どうしてお前が謝るんだ」
「俺は、俺のことしか考えていなかった。フランスにいる間もお前と連絡を取っていれば……こんなことにはなってないだろ?」
「お前のせいじゃない。俺が弱かっただけだ」
「……睦月」
俺は何をしてやれる?
今にも消えてしまいそうな睦月に何と声をかけられる? 友として何ができる?
「睦月。これは俺の個人的な頼みだ。もう二度と寂しさを身体で埋めようなんて思わないでくれ」
「……大沼」
「もしお前が寂しいと思ったら、俺に電話でもメールでもしてこい。俺は帯人にはかなわないが、お前のことはよく理解してるつもりだ」
それと、と俺は一息ついてから言う。
「俺たち親友だろ。ライバルだろ。美大生の頃、夢に向かって頑張るって言ったじゃねえか」
「……夢」
睦月の嗚咽が止まった。ゆっくりと睦月の泣き腫らした目が俺を捉える。
「俺はフランスで修行してプロの画家になった。お前もはやくプロになれ。お前ならきっとなれる」
それが俺と睦月の友としての関係の再開だった。
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