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第89話 癒されているのは俺のほうだ(side 真柴)

「ん……」  とても気持ちのいい夢を見ていた気がする。  ゆっくり目を開けると見慣れた天井があった。  おでこが冷たい。  手を乗せると、冷却シートが貼ってあった。  桜?  気だるい身体を起こしてあたりを見渡すが、桜の姿はない。  ソファにべったりとついた寝汗が気持ち悪くて端に寄る。  どのくらい寝てしまったのか時間の感覚もない。  身体が熱い。シャワーを浴びたい。  俺はベッドから足を下ろすと、四つん這いになって前に進んだ。  赤子のようなおぼつかない動き。  リビングを通り抜けて廊下を進む。前に進む度に大きく息が上がる。  床が冷たくて気持ちいい。  うつらうつらする頭で浴室へ向かう。  すると寝室の明かりが付いているのが見えたので、這って向かう。すると寝室のベッドの上に丸まって眠る桜の姿が見えた。 「桜……」  俺のベッドの上で毛布にくるまって横になっている桜を見つけた。胸のあたりが一定のリズムで上下している。  眠っているのだろうか。  やっとの思いでベッドに近づくと、俺は桜の顔を覗き込んだ。  かわいい。子猫みたいだ。  すうすうと寝息を立てて桜は眠っている。  リビングから寝室まで移動しただけなのに、体力を使い切ってしまったようだ。  俺のの身体はもう思うように動かない。  潔く諦めてベッドの下で丸くなる。  髪に汗が貼り付いて気持ち悪い。  俺は震える自分の身体を抱きしめて、意識を手放した。

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