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第91話 風呂サポートでむむ? R18
浴室にたどり着いてからはと言うと、真柴は自分で服を脱げると言って聞かないので桜は仕方なくボクサーパンツ1枚になって、シャワーの手伝いをすることにした。
「真柴さーん。服脱げたら入ってきて。シャワーあったかくしといたから」
浴室のドアの外に向かって大きく声をかけると、程なくしてギギイと浴室のドアが開いて真柴が入ってきた。桜は売り専の頃、男の裸をたくさん見てきたので特段抵抗はない。
はずだったのだが、まだ少しふらつきのある真柴を風呂椅子に座らせていると変に心がむずむずとしだして、やけに心拍数も激しくなっていることに気づく。気づけば喉の奥がからからに乾燥している。ごく、と生唾を飲み込み真柴のお風呂のサポートに徹しようと意識を集中させた。
真柴は裸だったが、白いタオルを腰巻きとして巻いていたので変な気持ちになるはずはないのだが。
「じゃ、じゃあお湯かけていくからな。目、閉じてて。髪の毛も体も洗っちゃおう」
「……ああ。頼む。すまないな……こんなことまでお願いしてしまって」
桜の指示に大人しく目を閉じた真柴の顔はやはり元気がなく、もともと色白の肌が青白くさえ見えた。桜は元気づけるように明るく振る舞う。
「いいって。気にすんなよ。これも抱き枕兼ハウスキーパーの仕事だろ」
くす、と真柴が微かに笑ったような気がした。でも、それは数秒のことでまたすぐいつもの無表情へと戻っていた。
「髪の毛、洗い残してるとこない?」
「ああ……大丈夫だ。それにしても、上手いな。美容室でヘッドスパされてるみたいだ」
まさか褒められると思っていなくて、桜はひゅっと息を飲み、数テンポ遅れて言葉を返す。
「そ、それなら良かった。初めて言われた」
「……初めて、か。桜の初めてならいくらでも欲しい」
「え?」
(今の、なんか本音っぽい。普段、こんなこと言う人じゃないから。熱が出てるからいつもよりふわふわしてて、子どもみたいにお喋りになってる)
桜は今の言葉になんて反応したら正解なのかわからず、むぐぐ、と口を噤んでいた。なんとか吐き出せた言葉には動揺の色が隠しきれていない。
「そっ、そうなんだ」
「桜」
ちょうどシャンプーの後にリンスをつけたところで真柴が顔を上げた。静かに目を開いて桜をじっと見上げる。濡れた黒い瞳で。
「ありがとう」
「なゃっ……!」
笑った。真柴がにこって。今まで見てきた中で一番の笑顔だ。桜は口をぱくぱくと開閉して今の出来事を脳裏に焼き付ける。
(真柴さんは今、熱があるからこんなに素直なのかもしれないけど……。今の反則だろ。かわいすぎる……。俺の心臓が持たない)
桜はばくばくと高鳴る心臓の音を抑えるように短く息を吸った。
「こ、こちらこそだよ。いつも俺の料理食べたら『美味しい』って褒めてくれるし、この間だってインテリアショップでソファ買ってくれたし」
桜が目を泳がせて話しているのを見た真柴は、ご機嫌そうに再度、ふふ、と微笑みを浮かべている。
「っ最後、身体洗うぞ」
桜は自分の心臓がおかしくなりそうで、慌ててボディーソープを泡立てて真柴の首や肩に撫でるように塗った。直に肌に触れると真柴の身体はじんわりと熱くて、やっぱりまだ熱があるんだと気づく。上半身に満遍なく泡をつけて優しく洗っていると、ちょうど胸の辺りを泡で撫でた時に真柴がぴく、と眉を寄せたのが見えて動きを止める。
「あ、ごめん。痛かった?」
「……いや、そうではないんだが……」
「?」
小さく呟く真柴を見て、もしかしたらまた体調が悪くなっているのかもと焦った桜は、急いで胸の辺りと脇腹、おへその辺りまで泡をつけて洗う。
「っ」
再び、真柴が息を飲む音が聞こえた。そうして、真柴の手のひらが桜の右手をぎゅっと掴んだ。目元が紅くて、目はうるうるしてて辛そうだ。桜は顔を寄せて真柴の様子を伺う。
「体調、辛い? はやく洗うからな」
「待て……。この後は自分でやる」
「え? でも、身体辛いんじゃ」
「……お前に触られてるほうが辛い」
真柴の耳が紅く染まっているのを見て、その視線を真柴の下腹部に向けると白い腰巻きの中心が少し押し上げられているのが見えた。それを見た瞬間、ばふん、と桜の顔も熱が弾けて今にも湯気が立ち昇りそうになる。急いでお湯で手のひらについた泡を流すと、後ろを向いて口元に手をやる。
(まじか。刺激、強すぎたかな? それにしても、いつもとのギャップがすごくてかわいすぎる。ずっとあんな素直な真柴さんならいいのに……)
「わかった。じゃあ先に上がって寝巻きの用意しとくから。何かあったら声かけて」
「ああ。すまないな」
真柴を浴室に残して桜は自分の服を着る。その間も先程の真柴の焦った表情や恥ずかしがっている顔のことを思い出してしまって身体が熱くなってくる、火照った身体を冷やすために氷をそそいだグラスに水を入れて一気に飲み干す。
体調が悪い人に対して、そういう変な目で見るのはいけないとわかっているのに、真柴と出逢ってから初めて見せた雄らしさに気持ちが揺れたのは確かだ。
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