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第111話 嫉妬に狂う睦月さん

「じゃあねー! 今日の個展最高だった!」  姫くんとおこめ、オーナーやミケ先輩とも別れ、桜と真柴は今日の個展の終わる21時まで受付で待機していた。その間、会話はほぼゼロ。  真柴は来客者の対応で忙しそうだったし、桜も今回の個展のモデルとあって来客者から質問攻めにされたのだ。 「真柴先生とはどんな関係なんですか?」 「ええと、仲良くしてもらっています」 (うん。嘘はついてない。恋人ですとは言っちゃまずい気がするから伏せておこう) 「どこで出会ったんですか?」 「えーと、モデルとして街中でスカウトされました」  まずまずの信憑性のある嘘をついた。質問してきた相手は疑わずに納得して去っていったので、ひとまずミッションクリアだ。    自宅に戻ってきたのは夜もふけた22時過ぎ。花束を抱えていたので、前に買ってもらった花瓶にさそうとしたその時だった。 「わっ」  ぎゅっ、と後ろから抱きしめられた。真柴が体重を乗せてくるから、桜はぷるぷる震えて押しつぶされないように耐える。けれど、体制を維持するのが難しくてそのまま玄関先でしゃがみこんだ。 「ああ、すまない」  さらっと謝罪の言葉を放ち、真柴はとことこと自分の仕事部屋へ入ってしまう。今のハグの意味がわかりかねないでいると、数分もしないうちにまた真柴がリビングに現れた。桜はちょうど、コートを脱いでいるところだった。 「桜」 「ん? なに?」  個展ではずっと立ちっぱなしが続いていたから足が疲れていて、すぐさまソファにおしりを預けた。もちもちの弾力はおしりに優しい。 「今日、友達のことを愛してるって言ったよな。俺のことは?」 「えっ?」 (げ。睦月さんいじけてる? 独占欲スイッチ入っちゃった……)  ソファの隣に隙間なく密着し、くっついてきて上目遣いでうるうるさせて桜を見つめてくる。その瞳に耐えきれずに桜はぽんぽんと優しく真柴の頭を撫でた。 「もちろん。睦月さんも愛してるよ。けどそれは、友達に対してじゃなくて恋人としてね」 「……そうか。なら、よかった」  にへら、といつもは無表情の無口仏頂面と呼ばれる真柴がデレている。笑った顔がかわいい。そういえば、個展では少しお祝いのワインを飲んでいた気がする。となると、少し酔っているのかもしれない。真柴の酔い方は健全そのもので、悪酔いしたのは見たことがなかった。  その間もぎゅーっと桜の腕を掴んで離れない。お母さんにべったりな幼稚園児みたいだ。こんな例えをしたら笑われそうだから口には出さないけど。 「桜。まだ寝かせたくない」 「……うん。俺もまだ眠たくない」  2人の気持ちが重なった瞬間だった。愛おしく桜の名前を呼ぶと、ベッドまでお姫様抱っこして連れていかれるのがナイトルーティーンだった。  これから愛される時間が桜にはたまらなく幸せで、1日のご褒美みたいに感じられた。

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