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第112話 愛を尽くしてお前のすべてを知りたい (side 真柴)R18
「桜。湯加減はどうだ?」
「ん、丁度いい」
「力加減は?」
「ベストオブベスト」
現在、桜と一緒に風呂に入っている。付き合い始める前から、俺は桜のお気に入りのハイブランドシャンプー、リンス、ボディーソープを取り揃えている。
よく、スマホで美容関連の動画をチェックしている桜がスマホを開いたままソファで寝落ちした日があった。こっそりスマホの画面を見ると、海外で有名なアパレルブランドがシャンプーやリンス、ボディーソープを新発売したらしい。
──これが欲しいのだろうか? プレゼントしたら喜ぶだろうか。
そう思って内緒でそのスマホ画面を自分のスマホカメラで撮影し保存した。すぐさま公式オンラインショップでポチり、購入、発送手続きを済ませる。
翌日、桜宛に届けさせたダンボールを開けた時の桜の綻ぶような笑顔が忘れられない。
「もーっ。睦月さん最高。だいすき」
商品を手に取りご満悦な様子だ。ん、と軽く口端を上げてみれば桜は俺の腕の中にダイブしてきた。まさか抱きつかれるとは思っていなくて、その場で力強く抱きとめる。その時、鼻をくすぐる桜の甘い香水の匂いに癒されて眠くなってしまった。ふやけた欠伸をしたら、桜も欠伸をしてその日はそのまま一緒に昼寝をした。眠気は感染するらしい。優しさが感染するのと同じように。
そんなあたたかな日々が積み重なって、今の俺がある。等身大の無理をしてない自分。そんな自分の知らない一面を引き出してくれたのは他でもない桜だった。
シャンプー中に泡立てた手のひらを使って、頭皮のマッサージをしていると、桜はとろけたようなおもちみたいに頬を緩ませてリラックスしている。そんな俺にしか見せない惚けた顔を見るのが、ここ最近のナイトルーティーンだ。
「こことかこってるな。スマホの見すぎじゃないか?」
「全然。ちゃんと言いつけ通り姿勢よく見てるし」
髪を洗い終えてからは、桜の身体を丁寧に清める。バスネットを使ってもこもこにした泡を手に取り繊細な肌が傷つかないよう、優しく洗う。桜は首をくすぐられるのが極度に弱いらしく、いつもぷるぷる震えるから見ていて面白い。飽きのこないつまみを食べている気分だ。
「ちょっと! くすぐった……ひゃっ」
「我慢しなさい」
「なんだよ。子ども扱いするなっていつも言って、るっ……んっ……だからダメだって……!」
たまに父親面したくなるのは、俺の癖なのだろうか。つい、桜は成人済みだと理解しているのに時々子供っぽい部分を見ると俺が守り、サポートしてやらなくてはという庇護欲に駆り立てられるのだ。
子犬みたいにぷうぷう鳴く桜を洗い終えて、むすっとした不機嫌な顔の桜を湯船に入れる。なんだか、お風呂が苦手な子犬を洗っているみたいで柄にもなくにんまりしてしまった。桜はそれをしっかり観察していたようで、湯船から手で作った拳銃でお湯射撃をして俺の背中にあててくる。
「なんだ。もっと構って欲しいのか?」
自分の髪の毛を洗うため、目を閉じた。少し得意げに言ってみたら、お湯射撃が止まった。
まずいな。本気でいじけてるな。
少し可哀想になって泡をお湯で洗い流そうとしたその時。
「待って。まだ流さないで。今日は俺がお返ししてやる」
「桜……?」
湯船から音もなくあがった桜が俺の背中にまわり、髪の毛を泡で洗ってくれている。
まるで思春期の不良息子が親孝行をしているようなシーンに感動し、胸が震えていた。桜の洗い方は俺より少し乱暴だが、かえってそのくらいしっかり洗ってもらえるのはそれはそれで良いかと思う。
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