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第70話 ※
揺れる水面。
エルはアザールと向き合って、口付けを交わしながら、中を広げるように丁寧に内壁を撫でる彼の指先に快楽を拾っていた。
「ぁ、あ……んっ、ぅ、」
「はぁ……」
深く息を吐いたアザール。彼の下半身を見ればそこは既に主張していて、エルはつい手を伸ばしそこに触れた。
「! エル、」
「アザール、も、もう、挿れない……?」
「っ、」
これまで繋がったことがあるのは、文様が白く浮き上がり──体が熱くなって、異様に触れて欲しくなってしまう時だけ。
こうして素面で彼を求めるのは、初めてのこと。
ハッと表情を崩したアザールは、少し荒い呼吸を繰り返すと、エルを抱き上げて湯船を出た。
おざなりに体を拭き、服を着ると、急ぎ足で向かうのは、いつも二人で眠るベッドだ。
そこにエルを押し倒したアザールは、グルルと喉を鳴らしながら、何度かエルにキスを繰り返す。
「っん、アザール」
「はぁ……すまない、少し、気持ちが昂ってしまって」
そう言いながらも、アザールの瞳は熱を帯びたままで、エルの顔をじっと見つめていた。エルは恥ずかしさと、胸の奥にじんと灯る嬉しさの間で揺れながら、小さく首を振る。
「ううん。僕も……今日は、自分で、そうしたいって思ったから」
エルの言葉にアザールは目を見開き、やがて、ゆっくりと優しい笑みを浮かべた。
「ありがとう、エル……」
再び口づけを交わす。今度は先ほどよりもずっと深く、互いの気持ちを確かめ合うように。
唇が離れたあと、アザールはエルの髪をそっとかき上げながら、彼の頬に口づけを落とした。そして、やや慎重に問いかける。
「少し、脚を開いて……もらえるか?」
エルはほんのり紅潮しながらも、アザールを信じるようにゆっくりと足を開く。その仕草にアザールの喉がまたひくりと鳴る。
指先が、優しくエルの奥を確かめるように撫でて、再びゆっくりと入口を広げていく。何度も確かめるように、敏感なところに触れて、エルの体が熱を帯び始める。
「は、ぁっ、……アザール、もう……」
限界を悟ったアザールは、丁寧にエルの腰を抱き寄せて、硬くなった自身をあてがう。そして、そっと問いかけるように目を覗き込んだ。
「入れるぞ、エル」
エルは目を細め、頷く。
「……うん」
ぐぷっと大きな質量が中を開いていく。
自然と背中が反れて、圧迫感から逃げようと、足がシーツを蹴った。
「〜ッ、あ……っ!」
「痛く、ないか」
何度かしている行為。痛みは感じない。しかし熱に浮かされていない今は、気持ちいいより苦しいが勝ってしまう。
「うっ、ぁ……はぁ……は、アザールぅ……!」
「息を詰めるな、ゆっくり吸って、吐くんだ」
「っふ、ふぅ……はぁ……」
「そう……上手だ」
そうして奥に進んでくるそれは、深くまで届いたところで止まる。
窄まった奥に先端が当たると腰がビリビリして、エルは口を開けたまま閉じられないでいた。
「馴染むまで、待つ」
「っぁ、アザール、ギュッて、して」
「ああ」
背中をかがめたアザールに抱きしめられる。
そっと頬にキスをすれば、彼は小さく笑った。その振動が中を刺激する。
「んっ」
「は……」
アザールを包む内壁が、焦れったそうに勝手に収縮する。
それを感じたアザールは、エルの頬を優しく撫でると、「動くぞ」と掠れた低く小さな声でそういい、欲しい腰を絶対に逃がさないと掴んだ。
「ぁ、あー……っ!」
ズルズルと抜けていくそれは、再びゆっくりと奥まで挿れられる。
圧迫感は徐々に薄れ、代わりに膨らんでいくのは快感だ。
エルは腰を掴むアザールの手首を握ると、左右に首を振って「待って」と震える声で伝える。
「ゆっくり、ダメ……おかしく、っ、なっちゃうから……っ」
「じゃあ速くするか?」
「〜〜ッ、ぉ……、あ、い、く……イク……っ」
タンタンと動きが速くなり、エルは堪らずビュッと射精した。
しかしアザールは止まることなく、そしてエルの身体も窄んだ奥が快楽に騙されたかのように、柔らかくなっていく。それと同時に入口がより広がるような感覚がしてエルは目を見張った。
「っ、な、にっぁ、ゃ、おっき、なに……っ」
「──ッ!」
「っあ゛!」
ズプンと柔らかくなった奥が開いた気がした。
入口は大きく広がり、アザールの恥骨とエルの臀がピッタリとくっつく。
「あっ、ぁ、やぁ……っふ、かい、あぁっ……また、イっちゃ……ッ!」
「っはぁ……っ」
目の前が真っ白になる。体は大きな快感にがくがくと震えて、自然と涙が溢れていく。
お腹の中にドクドクと熱が広がるのを、はふはふと呼吸をしながら感じて、ムギュっと閉じた目を開き、覆い被さるようにして荒い呼吸を繰り返していたアザールをギュッと抱き寄せた。
「っは、すまない、ノットまで、挿れるつもりは、なくて」
「の、っと……? っん、アザール、お腹、いっぱい……っ、も、とめて……」
「……これが治まるまでは抜けないんだ」
何を言っているのかが分からなかったが、アザールの意思では無理なことなのかと理解したエルは、チュッチュッと何度も降ってくるキスを受け入れて、至近距離で見つめ合う。
「ぁ、こ、こども、できる……?」
「これだけ出せば、きっと……」
もうお腹はいっぱいである。
気持ちよさが止まらなくて、エルの意識はだんだんと霞んでいき、そのままフッと眠りに落ちた。
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