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十六話 声を殺して

 女子の部屋に行くと息巻いていた藤木だったが、結局、女子たちの方から「男子禁制」と断られたらしい。たぶん、女子は女子だけでトークでもするんだろう。  結局五人で、畳に敷かれた布団の上に転がって、長いことビールを飲んでいたが、藤木と滝は眠ってしまった。 「そろそろ寝る?」  と進藤が言うので、ダラダラした空気のまま布団に潜り込む。五組敷かれた布団は、端から俺、泉、進藤、滝、藤木と並んでいる。俺が端っこなのは、他人と寝るのが好きじゃないからだ。 (酒臭えな……)  部屋のなかに充満する酒と他人の匂いに、なかなか寝付けない。旅館特有の糊の効いたシーツは、寝返りを打つだけでなんだかうるさかった。  ゴソ、と音を立てて、泉が近づいてくる気配がした。布団の隙間から侵入してきた手を握り返し、視線だけ泉の方を見る。暗闇のなか、泉の瞳がキラリと光っているのが見える。  藤木と滝の寝息が聞こえる。進藤は解らない。ただ、静かに背を向けている。 「眠れない?」  小声で、泉が問い掛ける。俺は返事の変わりに、泉の手を引っ張って、布団の中に引きずり込んだ。 「大胡……」  泉を下に組敷いて、覆い被さる。首筋に唇をよせると、泉の肩が跳ねた。 「っ、大胡……」  戸惑うような眼をしながら、泉は下から出ていこうとはしない。 「浴衣のお前、抱いておかないと」 「っ…馬鹿……」  前をはだけて、手のひらで撫でる。白い肌が淡く染まる。泉はされるがまま、声を押さえて目蓋を閉じた。  布団を被ったまま、肌をまさぐる。衣擦れの音が響く。快楽に耐える泉の甘い吐息が、鼓膜を擽る。 (声、堪えてんの、興奮すんな……)  泉が声を我慢する様子は、酷く扇情的だった。闇に浮かぶ白い肌に食いつきながら、身体を擦り合わせる。  じっくり楽しみたいところだが、さすがにのんびりヤるわけにはいかない。藤木たちがいつ起きるか解らないし、進藤にいたっては寝ているのかすら解らない。  ローションなどないので、指を唾液で濡らして、窄まりに挿入する。滑りは悪いが、殆ど毎日使っているお陰で、穴は十分に柔らかい。  指を出し入れしていると、分泌された腸液と交ざって、滑りが良くなる。そろそろ良さそうだと、寝転がって泉を背中から抱くようにした。 「っ……」  浴衣をまさぐり、双丘に捩じ込むように挿入する。泉が小さく息を漏らす。 (くそ。全部入らねえ……)  体勢のせいか、全部は入らなかった。だが、快感は十分だったし、泉の悦いところには届いている。先端で突き上げると、泉が甘く鳴いた。 「ふっ……、んっ……」  揺するようにして、ゆっくりと快楽を貪る。はだけた肩口に噛みつき、舌を這わせる。  布団を被っているせいで、暑い。取っ払って上から突き上げてやりたかったが、我慢して集中する。  泉のナカは、良い。俺のことをどんなときでも受け入れる、泉そのもののようだ。  泉が肩越しに振り返る。娼婦のような顔で、舌を伸ばす。 「キス……、したい、大胡……」  要求に、泉の身体を引き寄せ、唇を貪る。舌を絡め合いながら、滑らかな肌を撫でていく。  いたずらに乳首の先っぽを引っ掻いてやると、痙攣したようにビクンと跳ねる。声もなく感じている泉は、やけにエロく思えた。 「――ぁ、ん……」  甘い声を堪えながら、泉が腕を伸ばして俺の根本を擽る。 「っ、泉……」  泉がフッと笑った。 (くそ)  泉の戯れに、俺は堪えるように、白い首に噛みついた。

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