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十八話 アンモラル

 舌を味わいながら、肌をまさぐる。泉の肌は冷たくサラサラしていた。 「あ――、ん……っ」  短く喘ぎながら、泉が俺を見る。俺しか見ていない、泉の眼が好きだ。  名残惜しさを感じながら唇を離し、壁に手を着かせて泉を背後から抱き締める。既に濡れている。挿入しても問題なさそうだ。 「そろそろ、起きる人も居るだろうから」 「んっ……、大胡……」  不満そうな顔をして、泉が振り返る。 「あんだよ?」 「昨日から……、後ろからばっかり……」 「ああ、お前、前からが好きだもんな」  首筋にキスしながら、ゆっくりと捩じ込む。 「ん…、大胡の顔、見えない……」 「ふ、顔見んの、好きなの」 「大胡に、されんのが、好き」  泉の告白に、ゾクンと心臓が跳ねる。今すぐにメチャクチャにしてやろうか。そんな衝動を堪えながら、細い腰を掴んでゆっくりと動き出す。  ず、と奥へ入り込み、ギリギリまで引き抜く。何度か繰り返してやると、白かった肌が薔薇色に染まっていく。 「ん、ふっ……、ん、ん……」  小さく喘ぐ声は、甘く俺の胃の辺りをグッと握りしめてくる。泉の声に、いつだって心臓を痛め付けられているようだ。  ハァと息を吐きながら、泉の腰を掴んで引き寄せる。望み通りに前を向かせると同時に、腿を抱えて脚を開かせた。 「ん、ぅっ……」  くぐもった声を、唇で封じる。お望み通り、顔を見せてやると、泉は蕩けそうな顔で舌を伸ばす。 「エロい顔」 「っん、大胡……だって」 「俺が?」  そんな顔、してるかな。  泉がクスリと笑う。 「征服者の顔、してるよ……」  それは、してるかもな。 「好きなの?」 「ん…、好き。お前のそういう顔、堪らない」 「そういうとこ泉、―――」 「なに」 「いや」  娼婦みたいだ、と言おうとして、止めた。  泉は聴いてこなかった。解っているのか、興味がないのか、限界なのか。  グチグチと内部を突きながら、唇を吸う。扉の隙間から、明るい日差しが差し込む。朝日が上ったのだろう。 「あ、あっ、あ……」  喘ぐ泉の声を聴きながら、肩に噛みつく。裸の身体に唯一身につけた、錆びたネックレスがチャラと音を立てた。 「っ、ハァ……、ハァ…っ、泉……っ、泉……」 「ん、んんっ、だい、ごっ……」  ああ、来る。快楽の波が一気に押し寄せ、頭に血が巡る感じがする。  泉の骨張った腰を掴んで、最奥を突き上げる。 「ーーーっ!!」  ビクビクと痙攣して、泉の眦から滴がこぼれ落ちた。 (ああ、そうだ、ナカに出したらマズイ……)  寸でのところで中出しを回避して、ずるんと性器を引き抜く。泉の脚に、精液がべったりとこびりついた。 「―――っ、ハァ、ハァ…っ」  肩で息をする泉の額に、軽くキスを落とす。 「―――」  余韻を楽しみたかったが、遠くで犬の鳴き声が聴こえたため、息を大きく吸って気を取り直した。 「泉、拭くから」 「あ、ぅ……ん」  脚を開かせて穴に指を這わせる。泉はボンヤリしたまま、されるがままだ。  指を動かし、中から精液を掻き出す。トイレットペーパーで拭いてやり、下着を穿かせた。 「大丈夫か?」 「……ダメ」 「帰って朝風呂しようぜ」  泉は浴衣を着せられながら、不満そうにする。 「ダメって言ってるのに」 「さすがにもう一戦はムリだろ。帰ったらサービスしてやるから」  ポンポンと胸を叩いて、自分も浴衣を着る。泉は俺の袖を引っ張って、頬にキスしてきた。 「大胡がサービスしたことなんか、ないだろ」 「イかせてやってんのに」  泉はそれ以上、反論しなかったが、「お前がおれでイってるだけだろ?」って顔で笑っていた。

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