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第11話 変装

 自室に戻った俺は、直ぐにネットであるものを購入した。即日配達と指定した。  大学から帰ると、家政婦から注文した荷物を受け取った。自室に入ると、箱を開けて購入した物を取り出した。白衣とメタルフレームの伊達眼鏡とラテックス手袋とローションと、そして、ディルドだ。  俺は、肛門科のドクター昭彦になることにした。  父が出張から帰るまでに、秀紀の肛門を広げてやると決めた。  夕食を済ませ、自室に戻ると、早速、変装を始めた。ワックスで前髪を後ろに撫で付け、眼鏡をかけて白衣を着る。白衣のポケットに手を突っ込んで、ドア横のスタンドミラーに映す。笑ってはいけない。極めて真面目だ。でないと、ただの変態になってしまう。  二十三時。夜の診察を始める。  秀紀はトイレと風呂以外は離れで過ごすことになっている。母からの強い要望らしい。そして二十二時以降は部屋から出ないようにとも言われている。  俺は、辺りを気にしながら離れへ続く廊下を歩いた。さすがに白衣だけは、離れの前で着ることにした。  ドアをノックした。 「はい」  秀紀の声だ。 「入るぞ」  ドクター昭彦の往診だ。 「………」 「今晩は、秀紀君」  俺は、超がつくほど、クソ真面目な顔で言った。 「こ…今晩…昭彦さん」 「昨日の傷はどうかな?痛みや出血はなかったかね」 「あっ…はぁ…大丈夫です…あの、それより昭彦さん」 「何だね?…私は昭彦さんではなく、肛門科のドクター昭彦だ」 「…はぁ」 「聞くところによると、秀紀君は、肛門が狭かったせいで傷を負ったそうだね…」 「…はぁ…そうです」 「そのままだと、また傷になる可能性がある…広げる治療を受けてみないか」 「広げるんですか?」 「そうだ。広げるんだよ」 「…はい」  秀紀は、どうしたものか、という顔をしながらも、治療に同意した。 「それでは、診察をするから、そこの寝台の上で尻を出しなさい」  秀紀は従順だった。  俺は、ドクターズバッグ代わりの紙袋からラテックス手袋とローションを出した。  四つん這いになった秀紀の肛門にローションを塗って、その周りをゆっくり押してマッサージをした。すると、それだけで緊張し一本の指先すら入れるのは難しいくらい固く閉ざしてしまった。 「秀紀君。少し力を抜いてくれないか。先生の指が入らないよ」 「はい…でも…」 「じゃあ、何か歌いなさい。童謡でもなんでもいいから…ほら、どんぐりコロコロとか鳩ポッポとか」  秀紀は、いきなりやって来たニセ医師に、指で肛門を触られながらも、ポッポッポ―、と歌い始めた。その一瞬の隙をついて俺は指を滑り込ませた。 「うああっ…せっ…先生っ」 「ほら、力を抜いてごらん…そうしたら、痛くはないから」  俺は、ゆっくりと指を動かした。  秀紀は違和感のせいなのか、無意識に括約筋を駆使して弛緩と収縮を繰り返しながら、俺の指を排出しようとしていた。  父親が出張から帰る日までに、秀紀が自分でディルドを使えるよう仕込まなければならない。  とは言え、初日から無理はいけない。俺は指を抜いた。   「今日はこれくらいで終わろう。また明日だ」  俺はパチンと音を立てて、手袋を外すとゴミ箱に捨てた。そして、紙製ドクターズバッグを持って、おやすみ、と言って離れを出た。

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