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第2話

教室で授業を受け、チャイムが鳴って授業が終わり約1分。 「「ナオ」」 まるで自分の教室に入るように、普通に双子(ナギナミ)が俺の席までやって来た。 こうやって休み時間の(たび)に、こいつらは俺のとこに来てる。 クラスメイトも慣れてきたのかスルーだ。 「なに」 「飴やる。くち開けろ」 「んぁ」 「前の授業でわからないとこあった?」 「んーん・・・でも宿題出た」 こうやって他学年の双子が常に構ってくるから、俺はクラスに未だ馴染めていない。 同じ中学のやつがいるから、友達ゼロではないけど。 「帰ったら一緒に宿題やろうね」 「ん」 「その前に遊び行こうぜ。ナオ、クレープ食いたいって言ってただろ」 「ん」 言いたい事言って、双子は自分たちの教室へ戻って行った。 どうせ昼休みに一緒に食堂行くんだから、いちいち短い休み時間にまで来なくていいのに。 「青木(あおき)」 「なにぃ?」 双子がいなくなって俺に話しかけてきたのは、同じ中学だったクラスメイトの須藤(すどう)(かえで)。 「茜霧(あかぎり)兄弟、相変わらずお前にべったりだな」 「なんなんだろうな。あいつらもいい加減俺離れしてくんないかな」 「ははっ、無理だろ」 須藤は3人兄弟の末っ子で、長男と次男がNormalα、本人はまだバース・ダイナミクス検査を受けてなかったはずだ。 「バース・ダイナミクス検査のハガキって来た?」 「ああ、届いてた。お前も?検査日いつだった?」 「来週の火曜」 「俺は月曜」 須藤が先か。 たぶん、こいつも兄貴たちと同じNormalαなんじゃないかな。 背も高いし・・・。 「ナオさ、茜霧兄弟といつも一緒にいんのに、なんともないの?」 「なにが?」 「DomβとNormalαだろ?どっちかに反応しねぇの?」 「しねぇよ」 だからきっと、俺はNormalβなんだ。 あの双子とどうこうなるはずがない。 「そっかー・・・でもなー・・・」 「なに?」 「いや・・・」 言いかけたところでチャイムが鳴り、須藤は自席に戻った。 なんだよ、気になるから最後まで言ってけよな・・・。 ─────── 午前の授業が終わり、昼休み。 当然のように双子が迎えに来た。 「ナオ」 「行こ」 「へいへい」 双子に挟まれた状態で歩きながら、食堂へ向かう。 中学の時は給食だったから、昼まで一緒なんて事はなかったのにな・・・。 「なに食う?」 「ラーメン」 「また?今日は違うのにしたら?」 「ラーメン」 「ラーメンにしてやれ。俺が野菜炒め定食にしとくから」 「しょうがない子だなぁ」 俺は双子に食事管理もされてる。 ナギは俺に食べさせるために野菜炒め定食を選んだんだろう。 ・・・野菜炒めなんて、寄越しても俺はひと口しか食べないからな。 ナミは財布を出して、3人分の食券を買った。 俺たち3人分の昼飯代が入った財布だ。 俺の生活費は双子と双子の両親が管理してる。 無駄遣いするからって、親が仕送り先を双子の両親にしてるからだ。 普段の食費と光熱費は双子の両親が、学校で使う分はナミが、その他小遣いはナギが持ってる。 何を隠そう、俺は財布自体を持たされていない。 過去、小学生になってすぐの頃に財布を持たせてもらったが、翌日にはどこかに落としてきてしまっていたのが原因と思われる。 まあ、別に困らない。 財布(ナギナミ)が常に側に居るし。 「ナミはなんにしたの?」 「チキンカツ定食」 食券と食事を引き換えて、窓側のカウンター席に並んで座る。 俺は真ん中だ。 「ナオ、ちゃんと冷まして食べるんだよ?」 「ん」 「野菜も食え。ほら、くち開けろ」 「んぁ」 俺の右にナギ、左にナミが座り、食事の世話までしてくる。 やめろって言ってるのに、昔からこのスタイルは変わらない。 ナミなんて、俺の左に座って食べたり勉強したりするからって、左利きになったくらいだ。 そんなに人の世話をするのが楽しいのか? 「あ、小鉢のサラダ、ナオが好きなリンゴ入りだ。あーんして?」 「んぁ」 「こら、チャーシュー沈めて隠すな」 「んん。ナギ食べていいよ」 ラーメンは麺が好きだから食べたいんだ。 具はいらない。 「ナオはめんめんが好きなんだもんねぇ」 「最初に喋った言葉だもんなぁ」 「むうはい(煩い)」 青木家と茜霧家は、俺たちが生まれる前から親しかった。 だから俺が生まれた時から双子は俺の隣にいて、3人まとめて育てられたって感じ。 今はウチの両親が海外赴任してるけど、小学生の頃は双子の両親が海外赴任してた時期があって、その時は双子がウチに住んでたし。 「めんめんの次はなぁなだったよな」 「僕もナギもなぁなって呼ばれてたからね」 「覚えてない」 両親の名前でなく、最初が麺で2番目が双子の名前って・・・親不孝な子供だな。 まあ、アルバムとか見てもわかるけど、赤ちゃんの時からずーっと双子と一緒だったし。 「俺、ナギナミの見分けついてなかったのかな」 「そんな事ないよ」 「ちゃんと見分けてたぞ。俺がナミのフリすると泣いたし」 「子供を泣かせるな」 双子の親ですら、たまに間違える事あるのに。 俺、天才児だったのかな。 「ナオ、もう食べないの?」 「もおいらない」 「最後にこれひと口食え。くち開けろ」 「んぁ」 ナギがデザートのキウイを俺の口に放り込む。 さっぱり・・・でもちょっと酸っぱい。 「ナオは高校生になっても食事量増えないね」 「放課後クレープ食わすから大丈夫だろ」 「甘いものじゃなくて、ちゃんとした食事摂らせたいんだけどな」 「食いたいって言ってるもん食わしてやりたいだろ。俺がサラダクレープにしてちょっとずつナオにも食わすから」 「それならいいけど・・・夕飯食べなくなったら困るから、ナオは僕と半分こしようね」 お前らは俺のパパとママか? 周りは絶対そう思ってるぞ。 いつもそうだけど、外で食べる時は俺が好きなものを頼み、ナギナミはそれを(おぎな)うようなメニューを頼む。 今回だって、俺は麺しか食べないから、ナギが野菜炒め定食を頼んで野菜を食べさせてきて、ナミはチキンカツ定食を頼んでナギの野菜炒めとシェアしてた。 昔から、家族(ぐる)みで食事に行く時もそうだった。 だから俺はそれも当たり前のように思ってたけど、今ではやっぱりおかしいよなって思ってる。 思ってるけど・・・。 「ふぁ・・・ぁふ」 「食べたらすぐ眠くなんの、赤ちゃん時から変わんねぇな」 「ほらナオ、教室行こう。ここで寝ちゃだめだよ」 双子に手を引かれ、教室に戻る。 わかってる、俺がこうやって甘えてるから、いつまで経っても双子が俺の面倒見てなきゃいけないんだって。 双子が俺離れするんじゃなくて、俺が双子離れしなきゃいけないんだ。 だから、来週の検査でNormalβだって結果が出たら、双子にはっきり言うって決めてる。 俺の事はいいから、ちゃんとパートナーと番を見つけろよって、言うんだ。

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