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第3話

今日はバース・ダイナミクス検査の日だ。 10時に病院だから、アラームを9時にセットしてゆっくり寝てたんだけど・・・。 「ナオ、起きて」 「検査日だぞ」 なぜ双子(ナギナミ)が起こしに来るのか。 お前らは学校だろうが。 「・・・なんでいるの」 「「一緒に行くから」」 声揃えんな。 え、まだ7時半じゃん・・・早・・・。 「二度寝すんな」 「起きないとベロちゅーだけじゃ済まないよ?」 おい、またそれやったのか? やめろって言ってんのに。 ・・・仕方ない、起きるか。 「ナギナミ、遅刻するぞ」 「検査は10時からだろ」 「違う、学校」 「休むって連絡してあるよ」 なんで俺の検査なのに双子まで休むんだよ。 俺は公休だけど、双子はズル休みじゃん。 「おら起きろ。顔洗え」 「へいへい」 ナギに手を引かれて洗面所へ。 ナミは俺の服を持って付いてくる。 顔を洗って歯を磨き、ナギに髪を()かしてもらいながらナミに着替えさせられた。 着せられた服は白地にロゴ入りのロンT、黒いスキニージーンズ、紫苑(しおん)色のパーカー。 ナギナミも同じロンTと黒ジーンズ着てて、ナギはジャケット、ナミはカーディガンだけど、色は俺のパーカーと似てる。 完全に服装揃えてきてんじゃん・・・。 「いつもの事だけど」 「「なに?」」 「なんでもない」 俺の服は、俺の生活費を預かってる双子が買ってる。 基本的にこだわりの無い俺は、服を選ぶとかしないし、双子にされるがままにしてきたけど、これも卒業しなきゃな・・・。 「朝ご飯、ゆっくり食べようね」 「焼き魚だから、ナオ食うの時間かかるしな」 「骨とって」 「「はいはい」」 今日で最後だし、検査結果出るまでは双子に甘えよう。 過去、魚の小骨が喉に刺さって大騒ぎした事もあり、双子も最初から俺が自分で焼き魚を食べるとは思ってなかったみたいだけど。 「あ、味噌汁のおあげばっか食べてる。ほら、ご飯も食べて。あーんして」 「ナオ、もう箸持たなくていいぞ」 「んむぅ」 俺はよく、ばっかり食べをする。 その(たび)、双子に注意され、箸を取り上げられていた。 これからはちゃんと、自力で三角食べするようにしなきゃ・・・いや、しないだろうな。 「ごちそーさま」 「今朝は良く食った方か」 「1時間かけたからね」 どうせ食うの遅いですよ。 小学校の時なんて、ひとりで最後まで教室で給食食べさせられてたし。 双子は毎日、様子を見に教室に来ては、応援してくれたりこっそり食べてくれたりしてたっけ。 「なーちゃんたち、支度できてる?」 「ハルカさん?あれ、仕事は?」 ダイニングに入って来たのは、双子の父親である茜霧(あかぎり)(はるか)さん。 ハルカさんを含め、親たちはみんな俺たち3人をまとめて「なーちゃんたち」と呼ぶ。 ナオとナギとナミだから。 因みに、ウチの鍵はハルカさんと、双子の母親である颯真(そうま)さんも持ってる。 両親がそれぞれ持ってた鍵を2人に渡したからだ。 「なに言ってるの、今日はナオの検査の日でしょ?有休取ったんだ。車で連れてくからね」 「え、じゃあやっぱナギナミ必要ないじゃん」 「「絶対必要」」 また声を揃えて・・・。 「ソウマさんは?」 「ソウマも行くよ。車でセナとハヤテに電話してるとこ」 青木(あおき)晴南(せな)翔風(はやて)は、俺の両親だ。 今こっちが9時半だから、向こうは20時半くらいかな。 ハルカさんに急かされ、俺と双子は玄関を出た。 そして当然のようにハルカさんが鍵を閉める。 なぜこの家の住人だけ、鍵を持っていないのか・・・。 家の前に茜霧家の車が横付けされてて、ハルカさんは運転席へ、俺はナギに手を引かれながら後部座席に乗り込んだ。 いつも通り俺の右にナギ、左にナミが座る。 「・・・あっ、なーちゃんたち来た。ナオに代わるよ」 助手席に座って待ってたソウマさんが、通話中のスマホを俺に渡してきた。 いや、俺のスマホに電話してくりゃいいのに。 「もしもし?」 『ナオ、元気?』 俺の父親、セナさんの声。 低くて落ち着いてて、優しい声だ。 聞くと、なぜか泣きたくなるから、俺からはあんまり電話しない。 「普通」 『そうか。ハルカとソウマの言う事をよく聞くんだよ。ナギナミも付き添ってくれるから心配いらない。どんな結果でも大丈夫だからね』 「うん」 『ナオ?だいじょぶ?検査の結果出たらすぐ電話してね?ナオってば全然電話くれないから僕寂しいよ!』 セナさんが電話を代わって、今度は俺の母親のハヤテさんの声。 うん、ハヤテさんはいつも通り元気そうだ。 「わかった、後で電話するから。ソウマさんに代わるよ」 ソウマさんにスマホを返し、走り出した車の揺れに身を任せる。 朝食食べたから、またちょっと眠くなってきたな。 「ナオ、僕の肩にもたれていいよ」 「ん・・・」 「俺の肩にしとけよ」 「どっちでもいいって・・・」 俺がナミの肩にもたれて目を瞑ると、ナギは俺の右手をとって指を絡めて握った。 おい、恋人繋ぎすんな。 振りほどきたいけど、眠くて・・・だめだ・・・。 ─────── 「ナオ、着いたぞ」 「起きないね。抱っこしてこうか」 「だめだって。なーちゃんたちが抱っこしたら目ぇ覚ました時、ナオ怒るじゃん」 「なら、怒られない僕が抱っこして行くよ」 ナギナミと、ソウマさんとハルカさんの声。 やばい、起きないと・・・ハルカさんに抱き上げられる・・・。 「ナオ、軽いなぁ」 あ、ハルカさんに抱き上げられてる・・・。 「これでも頑張って食わせてんだけど」 ナギの言う通り、俺だって頑張って食べてるんだけど・・・。 「ナオ、学校でめんめんしか食べないから」 ばらすなよナミ・・・。 「牛乳飲むだけじゃ身長伸びないって言ってんのに」 ソウマさん、他に何を飲めば身長伸びんの・・・。 「んー・・・起きた・・・下ろして・・・」 病院の入り口手前でやっと覚醒し、ハルカさんに下ろしてもらった。 さすがに院内で抱きかかえられてたら、具合悪いのかって思われるだろ・・・。 受付にハガキと保険証を出して、茜霧家のみんなと待合室のイスに座る。 少しして呼ばれ、俺はひとりで処置室に入った。 結果はすぐ出るらしく、また待合室で座って待つ。 そう言えば、双子(ナギナミ)の時はどうだったんだろ。 2人とも、中学2年になる少し前に検査したんだったっけ。 その時の事を聞こうとしたら「青木南風(なお)さーん」と呼ばれ、俺は診察室へと向かった。

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