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第6話
「さてと、とりあえずなんか飲むか。ナオ喉渇いたろ」
俺はダイニングのイスに座り、ソウマさんはキッチンでお茶を淹れてくれる。
中学生の時、両親が海外赴任した途端、双子 がウチに住み始め、ハルカさんとソウマさんは交代で世話をしに来てくれてた。
だから、ウチのキッチンも勝手知ったるって感じだ。
「はい、ミルクティー」
「ありがと」
「それじゃ、ハヤテに電話するな」
ソウマさんのスマホでハヤテさんに電話をかけ、スピーカーにして3人で話す。
ハヤテさん、少しテンション低い。
検査結果聞いたから、だよな。
やっぱ我が子がSubΩだなんて、不安なのかな。
『ナオ、体調はどう?』
「今は平気」
『そっか・・・』
病院でもらった資料も見ながら、Ωの先輩とも言えるハヤテさんとソウマさんの話を聞く。
まとめると・・・エッチの主導権はαに委ねるなって事だった。
なんでそんな話をされなきゃいけないんだ・・・。
「いいかナオ、ちょっと可哀想な顔してきても絆 されんな!こっちがシたくない時ははっきり嫌だと断れ!」
『そうだよ!一度でも許すと調子に乗るからね!毅然とした態度で接する事!』
「・・・はぃ」
ついさっき自分がΩだって知らされた人間に、エッチの主導権云々はハードル高 ぇ。
昼飯まだかな・・・。
「しかもナオは双子を相手にするんだから、下手したら初メテでヤり殺されるぞ」
『負担は2倍だからね。前もってエッチの回数も決めておいた方がいいよ』
「・・・え、俺、同時に双子とヤんの?順番で別日にとかじゃなく?てか待って、双子が相手なの決定事項なの?」
『「同時に決まってんじゃん」』
気が遠くなった。
ただでさえ抱かれる側ってのに不安があるのに、あの双子を同時に相手しろって・・・。
「ねえ、ヤんなくていい方向に持っていけない?」
『「いけない」』
声揃えんなって。
・・・あーもう、考えたくない。
この話は一旦忘れる。
今まで通りにして、そーゆー空気は出さないように努 めよう。
「ナオ、わかってると思うけど、そのうち発情期がくるからな」
『発情期がきたら確実に双子とエッチする事になるから、排卵抑制剤 は飲んでおいて』
「緊急避妊薬もちゃんと持っとけよ」
「・・・・・・・・・ぅうゔ」
キャパオーバーで唸り出した俺をソウマさんが宥 め、ハヤテさんも電話で励ましてくれた。
「大丈夫、双子 もちゃんとわかってるから。ハルカからも言ってもらってるし。な?」
『双子はナオ第一だし、無茶な事はされないはずだよ?ナオの言う事ちゃんと聞いてくれるから。ね?』
「・・・だから、なんで相手が双子って決めつけてんの」
「ナオ・・・まさか、双子 以外に相手が・・・?そんな・・・あいつら、落ち込むどころの騒ぎじゃなくなる・・・」
『嘘でしょ!?あの双子がそんな事させる訳ないじゃん!だめだよ、双子以外となんて!』
「・・・・・・ぃや、いないです、そんな相手は」
結局、俺は親公認で双子と・・・という事になってしまった。
混乱はしてるけど、俺自身に双子とそうなる事に対して忌避感がないのがちょっと・・・なんて言ったらいいんだろ・・・。
ミルクティーを飲み干し俺が落ち着いた頃、ナミが迎えに来た。
あんな話をされたけど、絶対意識しないようにしないと・・・。
───────
「ナオ、黒い服に着替えてこいって言ったろ」
「あ、忘れてた・・・って、汚さねぇよ!子供じゃあるまいし」
「念のためね。ほら、パーカー脱いで、上にこれ着て」
茜霧家のダイニングルームに入ると、ナポリタンで服を汚す事を懸念した双子によって着替えさせられた。
ナギにパーカーを脱がされ、ナミがロンTの上から黒いスウェットを着せてくる。
・・・これ、ナミのじゃん。
「これは汚していいのかよ」
「いいよ、部屋着だし。あ、袖まくってあげる」
「ナオは腕も短いからな」
「来年はお前らよりデカくなってる予定だ!」
「「はいはい」」
俺はいつも通り双子に挟まれて座り、向かいにハルカさんとソウマさんが並んで座る。
テーブルには美味 そうなナポリタンと、シーザーサラダ。
・・・俺は麺だけ食べる。
「ナオ、玉ねぎ避 けるな、くちOpen 」
「んぁ」
いつもナギが俺になんか食わせる時に言う、くち開けろって言葉、コマンドだったんだな。
全然気付かなかった。
コマンドって、思ったより怖くない・・・かもしれない。
「ナオ、さっきこっちもセナと電話しながら4人で話したんだけど、ナオが双子の事嫌じゃないなら、チョーカーとカラーを着けてあげてくれない?」
食事を終え、茜霧家のリビングで双子に挟まれてうとうとしてたら、ハルカさんが提案してきた。
チョーカーはΩが頸 を守るのに必要なものだし着けるけど、カラーは・・・俺がナギのSubだって認める事になる。
でも、頸を噛まれて番になるのとは違い、カラーは外してパートナー解消する事ができるし、別に・・・深く考えなくてもいいか・・・。
「わかった」
俺が了承した瞬間、ソファから双子が立ち上がった。
支えがなくなり、一瞬身体がぐらつく。
・・・え、待って、今日検査してSubΩだって知ったのに、既にチョーカーとカラー用意してたの?
バカなの?
「ナオ、僕が用意したチョーカー、着けてくれる?」
ナミが黒い化粧箱を取り出し、蓋を開けて見せる。
中には真朱 色のチョーカーが。
「・・・派手じゃね?」
「ナオに一番似合う色にしたんだ。だめ?」
「だめじゃねぇけど・・・」
受け取って自分で着けようとしたら、ナミがチョーカーを手に取ってしまう。
ナミが着けてくれんのか、と思ってじっとしてると、チョーカーでなくナミの唇が俺の首に触れた。
「なっ!?」
「キスマークの上からチョーカーするね」
「ばかっ!消せっ!」
「じっとして。ほら、チョーカーでちゃんと隠れたよ」
そーゆー問題じゃない。
キスマークってなんだよ・・・両親が見てる前でよくそんな事できるな・・・。
「俺のカラーも、着けてくれるよな」
ナギは白い化粧箱を取り出して、蓋を開けた。
細身の黒い、金属製っぽいカラーが入ってる。
「かっこいい」
「だろ。着けていいか?」
「おう」
シンプルな造りっぽいけど、どうやって着けるんだろうって思ってたら、真ん中で開くようになってた。
チョーカーの上から首に嵌 められて、カチって音がしたから着け終わったのかと思ったら、ナギが小さいドライバーみたいなのでカラーの金具を絞めた。
カチンって、なにかが完全に固定されたような音がしてから、ナギの手が離れる。
「・・・え、これ、まさか」
「専用工具がないと外せない」
「その工具失くすなよ!?」
「俺のカラー固定したら用無し」
「はあ!?」
ナギは俺とお揃いのカラーを腕に着け、同じ専用工具で固定した。
まじで、その工具失くすな、どっかにちゃんとしまって・・・。
「ナミ、次の不燃ゴミの日っていつだ?」
「明後日だよ」
「捨てる気!?だめ、俺が預かってしまっとくから・・・」
────バキン
「・・・え?」
「折った。もう使えねぇよ」
「なにしてんだよ!?」
慌ててんのは俺だけで、ハルカさんとソウマさんは笑って見てるだけだし、ナミは不燃ゴミの袋持ってきて、ナギは無惨に折られた専用工具をその袋に捨てた。
工具折るって、どんな腕力してんだよ・・・。
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